【イクリプス AVN-SZX04i インタビュー】ナビの価値の核心、いつでも最新の地図と検索で“つながる”メリットを

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富士通テン 製品企画室の酒井友博氏
  • 富士通テン 製品企画室の酒井友博氏
  • 富士通テン SS技術本部つながるサービス開発部 岡本洋平氏
  • この夏にオープンしたばかりの虎ノ門ヒルズもすでにスポット情報が登録されていた
  • 通信を利用したフリーワード検索
  • スマートフォン連携アプリ「CalafuL」
  • イクリプス AVN-SZX04i
  • イクリプス AVN-SZX04i
  • 富士通テン 製品企画室の酒井友博氏

富士通テンが近い将来に向けて示した「VISION2022」に基づき、新たなモビリティライフを提供するサービスが「Future Link」だ。その具体的な商品の第一弾としてイクリプスの新型AVN“つながるナビ”こと『SZシリーズ』(「AVN-SZX04i」「AVN-SZ04iW」「AVN-SZ04i」)が登場した。その開発の過程で核心となる「つながる」部分について話を伺った。

◆ユーザーのナビ体験価値向上のための通信ユニット搭載

Future Linkがテーマとするのは、ドライバーである「人」、車載機器や各種センサーの「クルマ」、インフラやインターネットの「社会」から得られるデータをつなぎ合わせ、ユーザーごとにカスタマイズされたサービスを提供すること。新登場したSZシリーズにはそれを実現する手段として、イクリプスのAV一体型ナビ(AVN)としては初めて通信ユニットを搭載しているのを特徴としている。

これについて富士通テン 製品企画室の酒井友博氏は、「常に通信可能になることで、ナビゲーションとエンタテイメントの両面で、多くのユーザーに簡単にそのメリットを感じていただける。これを実現するために(SZシリーズを)商品化しました」と語る。これまでカーナビが外部からデータを取得するにはスマートフォンなどを介して行うのが一般的だ。SZシリーズでは通信ユニットを備えることで、“つながる”ことのメリットを受けられる。しかも、購入時に面倒な手続きは一切なし。取り付けたらそのまま2017年10月末まで無料で使えるのだ。酒井氏が続ける。「誰もが使えると言うことを優先すると通信ユニットを採用すべきと考えました。いつでも最新の地図を使えるメリットを多くのユーザーに体感して頂きたかったのです」。

◆通信していることを感じさせずに最新地図の利便性を与える

SZシリーズでは月に1度、地図データの自動更新が行われる。しかもこれに費用は一切かからない(17年10月末まで)。これまでも地図データの無料更新を採用するカーナビは数多かったが、そのほとんどがSDカードを介してデータをパソコンでダウンロードし、カーナビで展開するという流れを経る必要があった。それに対してSZシリーズはこの手間を一切不要とした。それだけではない。地図更新に際してこれまでのカーナビには採用されなかった画期的な技術が取り入れられているのだ。地図データは通信ユニットによってAVN利用時にダウンロードされ、更新作業が始まるのはエンジンをOFFにしてから行うというものだ。これによってAVN利用時はデータ更新による負荷がかからず、OFF後は更新作業に専念できるため、短時間で更新が終了できるようになったのだ。「通信していることを感じさせずに、メリットだけを感じさせる」ことで、通信ナビにまつわる「小難しさ」や「面倒」といったイメージを取り去る工夫をしている。このあたりが他メーカーとは異なる富士通テンのアプローチとも言える。

短時間とはいえ、この一連の作業はどのぐらいで終えられるのか。富士通テン SS技術本部つながるサービス開発部 岡本洋平氏によれば「通信環境やデータサイズにもよりますが、通常15分程度でダウンロードでき、更新処理はAVNを使用しない間に実施するため、5分程度で終えることができます」とのこと。はっきり言ってこれはスゴイ。「万が一ダウンロード中に通信が切れてしまったときも途中から再開できるようなレジューム機能を備えながら、ここまでの高速更新を実現するには相当の工夫と努力が必要でした」と岡本氏は語る。

今までカーナビを利用しながら更新する例を見てきたが、ヘタすると更新に数時間もかかることだってある。それがこんなにも短時間で終えてしまえるとは驚き以外の何物でもない。これならドライブ途中の休憩中に更新が終えられる。

◆高速地図更新の秘密

では、地図データのダウンロードはどのようにして行われるのか。「従来のフォーマットでは差分更新ができなかったため(そのままでは全更新となってしまう)、まずは全国をメッシュで区切った状態で、更新データがあるメッシュの差分だけをダウンロードするという、根本から手を入れることになりました。カーナビによっては更新を国道以上という制限を設けている例もありますが、SZシリーズでは、市販ナビでは初めて、全国の細街路までも対象にしています。差分更新でも全国全道路をそのまま更新すればデータサイズは大きくなってしまい、時間がかかります。しかし、ユーザーが運転している間にできるだけ短時間でダウンロードできるよう、データサイズを最小化する必要がありました。これが初期段階で最も苦労したところですね」。
岡本氏が話を続ける。「意外に思われるかもしれませんが、高速道路は距離は長くても接続する道路が少ないので、データサイズはあまり大きくありません。むしろ細街路が数多く接続する一般道の方が大きいのです。でも、地図フォーマットの最適化を何度も繰り返し行った結果、ようやく思い描いたデータサイズにまで最小化することができました。」(岡本氏)。なるほど、全国規模の更新であっても15分程度で終了する秘密はここにあったわけだ。

この地図データの更新で対象となるのは市街地図以外のスケールが対象。更新後はルートガイドにも反映される。ここで気になるのは更新されない市街地図でルートガイドはどうなるのかという点。インタビュー中、実機を使ってそれを試してみると、市街地図では展開されていない道路に相当する部分にルートを描き、そのままガイドを行っていた。交差点拡大図も表示される。ちなみに、市街地図は全更新時の際に書き換えられる。このあたりも実用性に十分配慮した富士通テン開発陣の苦労がうかがえるところだ。

スマートフォンテザリングではなく通信ユニット付属とした理由

ここで気になることがある。通信ユニットを標準搭載したとはいえ、普及が進んでいるスマートフォンを使うことは考えなかったのだろうか。「確かにスマートフォンを使うプランはありました。しかし、それだとBluetoothやWi-Fi接続といった手順を踏む必要が出てきます。これだとせっかく用意した地図更新のメリットを体感頂けない可能性もあります。SZシリーズではぜひともそれは避けたかったのです」(酒井氏)。

でも、SZシリーズでは、エージェント(会話型音声検索)機能として『CarafL(カラフル)』を用意しており、ここでスマートフォンはWi-Fi経由でAVNと組み合わせて使う。「スマートフォンの普及率はやっと半数になったところ。従って全てのユーザーにCarafLを使っていただくわけにはいきません。その意味で、多少嗜好性の高い機能ではスマートフォンを活用してもらい、AVNのベーシックな機能、つまり地図更新や目的地検索では通信ユニットによって使えるようにすべきと考えるに至りました。そのためにSZシリーズでは通信ユニットは必須だと考えたのです」(酒井氏)。

ところで、SZシリーズに付属する通信ユニットは4G・LTE対応ではなくでは3Gとなっている。通信速度が速いLTEが主流である中で、通信ユニットが今どき3Gを採用したのはどうしてなのか?「キャリアはLTEで人口カバー率100%を達成したとはいうものの、全国の道路を対象にすると実はそこまでカバー率は高くないのです。実は、地方では3Gの方が対象エリアが広い。通信速度についても実際に走行して十分であると確認しています。動作レスポンスも数値目標を立てて設計を行った結果、3Gでもほぼ問題がないとわかりました」(岡本氏)。

◆ネット検索感覚で使える「フリーワード検索」

目的地検索で使う「フリーワード検索」も通信ユニットの搭載によって実現した新機能だ。メニューにはこれと類似した「50音検索」もある。この違いはどこにあるのか。「50音検索はAVN内に収録したPOI(Point of interest)の名称から検索する機能ですが、対象データはあくまで地図データに収録済みのもので、最新のものではありません。それに対し、フリーワード検索では施設名称に加えて地名やジャンル、ブランド名称などからでもセンターにある最新データから探せます。さらにAND検索も使えます」(岡本氏)。なるほど、インターネットブラウザのように、複数のキーワードを入力しても対応してくれ、操作してみればその使いやすさはすぐに実感できる。

使いやすい「フリーワード検索」だが、音声入力には対応していない。「一つには音声でのキーワード入力はCarafLが受け持つという役割分担があります。機能として搭載していないわけではありません。(酒井氏)」また、付属した通信ユニットは日本全国をカバーしているとのことだが、仮に圏外だった場合、「フリーワード検索」はどう対処するのだろうか。「検索に入ろうとするときに画面上に“圏外”であることを知らせるCautionが出ます」(岡本氏)。

検索と言えば、昨年登場したそのCarafLだが、SZシリーズが登場した前後からレスポンスや精度がかなり向上したように感じる。これはどうしたことか。「入力されたキーワードに対して回答を出すまでに、元々はアプリとセンター、その先のコンテンツプロバイダーがつながっている中で、一つが終わってから次の処理という順番でしたが、今回は同時処理を可能にすることでより効率化を図り、スムーズなやり取りにつながりました」(岡本氏)。新機能だけでなく、こうした従来の機能も着実な進化を遂げているのだ。

◆未来へとつながる最新AVN

SZシリーズでは通信ユニットを搭載したことで、データ更新や目的地検索などでリアルタイム性を飛躍的に高めることができた。しかし、それは効率の良いデータ転送や更新方法が確立しなければ成り立たないことでもある。

富士通テンには幸いにも親会社である富士通の技術を活かせる環境が備わっており、これら一連の実現に至ったのもここでの技術が背景にあったからこそ。それを軸とすることで富士通テンが掲げる「Future Link」コンセプトの実現へと一歩進んだのは間違いない。SZシリーズはそんな未来へとつながる最新AVNなのだ。

《会田肇》

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