北陸新幹線の並行在来線4社、上限運賃を申請…トキ鉄以外は値上げ

鉄道 企業動向
北陸新幹線の並行在来線を引き継ぐ第三セクター4社は上限運賃の認可を申請。えちごトキめき鉄道が運営する区間を除き、現行JR運賃より値上げになる。
  • 北陸新幹線の並行在来線を引き継ぐ第三セクター4社は上限運賃の認可を申請。えちごトキめき鉄道が運営する区間を除き、現行JR運賃より値上げになる。
  • えちごトキめき鉄道は現行JR運賃と同額の上限運賃を申請した。写真はえちごトキめき鉄道の妙高はねうまライン(現在の信越本線)で運用される予定のE127系。JR東日本から譲り受ける。

北陸新幹線長野~金沢間の延伸開業(2015年3月14日)にあわせて並行在来線の経営を引き継ぐ第三セクター4社は10月27日、国土交通大臣に旅客運賃の上限認可を申請した。

各社が発表した申請の概要によると、えちごトキめき鉄道は現行JR運賃とほぼ同額。それ以外の3社は値上げする。各社は認可後、実際に適用する運賃(実施運賃)や乗継割引の設定などを届け出る予定だ。

■しなの鉄道(北しなの線)
長野県のしなの鉄道は1997年、北陸新幹線高崎~長野間(長野新幹線)開業時に信越本線軽井沢~篠ノ井間(現在のしなの鉄道線)の経営を引き継いでおり、来年3月の北陸新幹線延伸開業時には信越本線長野~妙高高原間37.3kmも引き継ぐ。同区間の線名は「北しなの線」に変更される。

今回の上限運賃申請では「しなの鉄道線と同水準」にするとしており、現行JR運賃と比較して普通運賃の上限が約1.23倍、通勤定期運賃の上限が約1.49倍、通学定期運賃の上限が約1.47倍になる。実施運賃は上限運賃と同額にする。

普通運賃(大人)は初乗り(1~3km)が現行JR運賃より50円高い190円、長野~豊野間が10円高い250円、長野~妙高高原間が160円高い830円になる。しなの鉄道線各駅から北しなの線各駅までの区間は途中にJRの信越本線篠ノ井~長野間を挟むため、しなの鉄道線と北しなの線の通算距離によって運賃額を算出し、これにJR線の運賃額を足す。妙高高原~上田間の普通運賃は、現行より160円高い1570円になる。

■えちごトキめき鉄道
新潟県内の信越本線妙高高原~直江津間37.7kmと北陸本線市振~直江津間59.3kmは、えちごトキめき鉄道が経営を引き継ぐ。線名は妙高高原~直江津間が「妙高はねうまライン」、直江津~市振間が「日本海ひすいライン」になる。

トキめき鉄道は当初、現行JR運賃の1.3倍に引き上げる計画を立てていたが、後に開業から5年間、現行JR運賃と同額に据え置く方針に転換した。今回申請した上限運賃もJR幹線運賃とほぼ同額となっており、普通運賃の上限は初乗り(1~3km)が140円、妙高高原~直江津間が670円、直江津~市振間が970円、妙高高原~市振間が1660円。ただし子供運賃と通学定期運賃は端数処理がJRと異なるため、10円程度の違いが生じる区間がある。

■あいの風とやま鉄道
富山県内の北陸本線市振~富山~倶利伽羅間100.1kmは、あいの風とやま鉄道が引き継ぐ。普通運賃の上限は、1~3km区間が190円、4~6km区間が250円。その他の主な区間の上限額は、倶利伽羅~石動間が270円、石動~高岡・高岡~富山・富山~滑川各間が420円、滑川~魚津・魚津~黒部各間が270円、黒部~市振間が660円、倶利伽羅~富山間が1020円、富山~市振間が1320円、倶利伽羅~市振間が2300円になる。

とやま鉄道は、上限運賃より安い実施運賃を認可後に届け出て、現行JR運賃との差を縮める方針。これにより普通運賃は1~3km区間が現行JR運賃より20円高い160円、4~6km区間も20円高い210円になる。その他の主な区間の実施運賃(現行JR運賃との差額)は、倶利伽羅~石動間が230円(30円)、石動~高岡・高岡~富山・富山~滑川各間が360円(40円)、滑川~魚津・魚津~黒部各間が230円(30円)、黒部~市振間が560円(60円)、倶利伽羅~富山間が860円(100円)、富山~市振間が1110円(140円)、倶利伽羅~市振間が2060円(120円)になる予定だ。

■IRいしかわ鉄道
石川県内の北陸本線金沢~倶利伽羅間17.8kmを引き継ぐIRいしかわ鉄道は、普通運賃と通勤定期運賃の上限を現行JR運賃の1.19倍、通学定期運賃の上限を1.05倍にする。主な区間の普通運賃の上限は、金沢~東金沢間が170円、金沢~津幡間が290円、津幡~倶利伽羅間が240円、金沢~倶利伽羅間が380円になる。

とやま鉄道と同様、認可後に実施運賃を届け出て値上げ幅を縮小する方針。実施運賃ベースでは普通運賃と通勤定期運賃が現行JR運賃の1.14倍で、通学定期は現行JR運賃と同額にする。これにより主な区間の普通運賃は、金沢~東金沢間が現行JR運賃より20円高い160円、金沢~津幡間が30円高い270円、津幡~倶利伽羅間が30円高い230円、金沢~倶利伽羅間が40円高い360円になる予定だ。

■乗継割引の適用で安くなる区間も
これまでJR東日本・JR西日本の2社が共通のJR幹線運賃を適用してきた長野~金沢間の在来線は第三セクター4社に分割され、4社がそれぞれ定めた運賃が適用される。2社以上をまたぐ区間の運賃額は、原則として各社ごとに定められた運賃額の合算になる。

この原則をそのまま適用すると、とくに短距離の区間では大幅な値上げとなる。このため、並行在来線4社と並行在来線に接続している鉄道路線を運営する関係各社は、短距離区間を中心に乗継割引を設定し、値上げ幅を縮小する方針だ。

新潟県内の高田~(えちごトキめき鉄道に移管)~直江津~(JR東日本が引き続き運営)~犀潟間の場合、現行JR運賃は240円だが、トキめき運賃とJR運賃をそのまま合算すると、160円高い400円になる。現在検討されている案によると、乗継割引の適用により全体で340円とし、値上げ幅を100円に抑える。

一方、北陸本線西金沢~(JR西日本が引き続き運営)~金沢~(IRいしかわ鉄道に移管)東金沢間は現在200円。合算運賃は150円高い350円になるが、乗継割引適用後の運賃は190円とし、現在より10円安くなる予定だ。

《草町義和》

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