東京五輪100万人の観光客向けナビゲーション、準天頂衛星を活用

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国土交通省は、2020年に開催される東京オリンピックまでに、100万人とも想定される外国人観光客のナビゲーション需要に向け、準天頂衛星や地上のセンサーによる位置情報、多言語対応技術を統合した測位精度30センチメートルのデバイスの準備を進める。

2014年7月7日、一般財団法人 衛星測位利用推進センターが開催した第12回衛星測位と地理空間情報フォーラムにて、国土交通省国土政策局 藤井健大臣官房審議官は「高精度測位社会に向けた取り組み状況」と題する講演を行った。

2020年、東京オリンピック観戦に訪れる外国人観光客は100万人とも見込まれる。オリンピックスタジアムや東京湾岸の施設に分散した各会場を、公共交通機関を使って外国人を含めた観光客が円滑に移動できる、多言語対応歩行者移動支援サービスの準備が必要となる。

2008年の北京オリンピックから、2014年のソチオリンピックまでオリンピック会場内のモバイルトラフィック量は28倍に増加しており、2020年にかけては同じ6年間でさらに2014年の30倍以上に増えると予測されているという。トラフィック量増大の対策は、携帯キャリア各社を始め対策が急がれているが、ナビゲーションデバイスの主役はスマートフォンなどモバイルデバイスとなることは確かだ。

日本語に不案内な観光客であっても、スマートフォンを持ち、複雑な東京の公共交通機関を乗りこなしてオリンピック会場間を移動できるよう案内する。この課題の「ハードル」の一例として、藤村審議官は渋谷駅を挙げた。JR東日本、東京メトロ、東急電鉄、京王電鉄、鉄道4社が乗り入れ地上・地下合わせて8層構造の複雑な渋谷駅を円滑に案内できる技術が求められる。万が一、オリンピック開催期間中に災害が発生し、観光客を含め安全に避難、誘導ができないような事態が発生すれば「二度と日本でオリンピックは開催できなくなる」と藤村審議官は課題の重大性を強調した。

ナビゲーションデバイスの準備のためには、精度30センチメートルの位置情報が求められるという。30センチは、人の肩幅と同じ程度の精度となり、ユーザーのいる場所から「隣の自動販売機に移動してください」といった案内が可能になる。地下鉄構内で正しい券売機に案内したり、隣り合う二つの出口のうち、目的地にとって適切な方を案内する、障害者にとって段差の少ないルートを案内するといったことが可能になる。2018年に2機目以降が打ち上げられ、4機の体制が整う準天頂衛星の技術では、精度1メートル以下の測位補強技術に対応しており、求められる高精度測位技術の中核となる。衛星からの電波が届かない屋内では、Wi-FiやBluetoothなど既存技術を活用した屋内測位技術も統合し、シームレスな案内ができるようにする。

世界のさまざまな国、地域から訪問する人のためには、多言語対応も欠かせない。現在の公共交通機関に掲示された案内板、ディスプレイ等には、表示スペースの面からも多言語には対応しきれない。案内板にスマートフォンをかざすとARでユーザーに合わせた言語のナビゲーションが表示される、といった形も含め、多言語対応を図っていく。多言語技術は情報通信研究機構(NICT)が開発し、10カ国語程度を目指すという。含まれる言語の例として、藤村審議官はアラビア語とインドネシア語を挙げた。

技術の整備だけでなく、普及促進にも時間はない。「成田や羽田空港に着いてからアプリを案内し、ダウンロードしてもらうのでは間に合わない」といい、オリンピック開催前の段階からデバイスやアプリの存在を認知、使いこなしてもらえるように、ソーシャルネットワークサービスと組み合わせて認知向上、普及促進を図るといった施策が必要になる。「2020年に向けて悠長なことをいっている暇がない」と藤村審議官はいう。

今後は、高層ビルが多く測位衛星にとっては条件が悪い東京駅周辺での高精度測位実証など実践的な取り組みを行い、空間情報インフラを整備していくという。
《秋山 文野》

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