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スペイン高速列車事故から1カ月…安全対策の不備が焦点に

鉄道 テクノロジー

スペイン高速列車事故の現場。保安システムの不備が焦点となっている
  • スペイン高速列車事故の現場。保安システムの不備が焦点となっている
  • スペイン高速列車事故で大破した機関車
  • スペイン高速列車事故の現場カーブ
世界に衝撃を与えたスペインの高速列車脱線事故から1カ月。運転士によるスピードオーバーが大きな要因とみられているが、なぜ自動減速できるシステムが現場になかったのか、過去に起きた事故の教訓は生かされなかったのか…。安全対策の不備と今後の対応が焦点となっている。

事故が発生したのは、現地時間の7月24日午後8時40分ごろ。スペイン北西部・ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステラ近郊にあるカーブ区間で、マドリッド発の高速列車「アルビア(Alvia)」151列車が脱線転覆、79人が死亡、130人以上が負傷する大惨事となった。

脱線の原因は大幅な速度超過とみられている。列車に搭載されたブラックボックスなどの調査の結果、現場の制限速度80km/hを2倍以上上回る179km/hで走行していたことが判明。また、現場には列車が制限速度を上回った際、自動でブレーキがかかるシステムが設置されていなかったことも明らかになった。

スペイン国鉄(renfe)の高速鉄道は、列車の速度を常時監視し、制限速度を上回った場合は自動で減速する欧州高速鉄道の標準的な保安システム「ETCS(ETCS/ERTMS)」を採用している。だが、現場付近は在来線をなぞる形で建設された区間で、鉄道業界誌インターナショナル・レールウェイ・ジャーナル(オンライン版)によると、ETCSの設置区間は現場の約4km手前で終わり、その先は在来線で使用されるシステム「ASFA」のみが設置されていた。

同システムは信号無視を防ぐことが主目的。スペインの鉄道情報誌「Via Libre」の解説によると、ASFAシステムでは信号に接近すると警告音が鳴り、注意・停止信号の警告を受けても運転士が確認ボタンを押さなかった場合、または確認操作を行っても減速しなかった場合にはブレーキが作動する。だが、カーブなどの速度超過を防ぐ安全装置としては使用されていなかった。

事故の起きた路線は2011年末に開業した。スペイン国鉄の高速鉄道は、日本の新幹線や他の欧州諸国と同じ国際標準軌間(線路幅)の1435mmで建設されているが、スペインの鉄道インフラ管理機構(Adif)の資料によると、同線はマドリード方面から接続する高速鉄道が完成していない「離れ小島」のため、暫定的に在来線規格の1668mm軌間で開業した。

事故を起こした車両は線路幅の違う区間を直通できるフリーゲージ車両のため、1435mm軌間でも在来線との直通運転は可能だが、車輪の幅を切り替える設備の設置にはコストがかかる。投資を抑えつつ新路線を有効活用するために在来線規格で開業させたものの、線路幅だけでなく保安システムも一部に在来線規格が残ってしまった。

スペインでは以前にも速度超過が原因の大事故が起きている。2006年7月、同国東部の都市バレンシアの地下鉄1号線で、制限速度40km/hのカーブに電車が80km/hで突入し脱線転覆、43人が死亡、47人が負傷する惨事となった。スペイン紙「エル・パイス」(オンライン版)によると、同線に設置されていた信号保安システムは「FAP」と呼ばれる旧型で、当時はカーブなどの制限速度オーバーには対応していなかった。

原因は死亡した運転士のミスとされ、安全装置の設置などに関する責任追及は行われなかった。遺族らは「カーブに装置が設置されていれば事故は防げたはずだ」と責任追及を求める抗議活動を粘り強く繰り返し、バレンシア検察が業務上過失致死傷罪を問う司法捜査再開を命じたのは今年7月。バレンシアの地下鉄事故と同様、制限速度をオーバーした列車がカーブに突っ込むという今回の惨事は、その直後に起きた。

今回の事故を受け、スペインのパストール公共事業相は8月9日、鉄道の安全対策見直しを発表。全国の高速鉄道網で同様の事故が起きる可能性がある場所を調査し、ASFA使用区間でも、カーブなどで制限速度が急激に下がる区間では列車を減速させる機能が働くよう整備する方針を示した。

だが、なぜ現場の保安システムにETCSでなくASFAが採用されたのかははっきりしない。現地報道によると、国鉄社長は「設置する安全装置を決定するのは国鉄やAdifの社長ではなく、直接の業務に関わる専門の技術者だ」と発言。Adif社長も「それは我々の役割ではない」と述べ、安全面での責任は技術者らにあると主張した。

1992年に初の高速鉄道が開業して以降、僅か20年でヨーロッパ最長、世界でも中国に次ぎ2番目の高速鉄道ネットワークを築いたスペイン。車両や設備の輸出大国でもある「鉄道先進国」の信頼を取り戻せるか、再発防止に向けた徹底的な事故調査と安全対策の実行が問われる。
《小佐野カゲトシ@RailPlanet》

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