『アウトランダーPHEV』は正確には純粋な電気自動車ではなく、エンジンも搭載しているのでハイブリッド車だ。しかし、電源から充電することも可能なので、ハイブリッドのなかでも、プラグインハイブリッドというジャンルに属している。
プラグインハイブリッドなら略してPHVなのだが、三菱はPHVではなくPHEVとした。これはこのクルマはあくまでもEV(電気自動車)だという主張で、プラグインハイブリッドEVという意味をもたせてある。
システムはフロントに2リットルのエンジンとモーター。リヤにモーターを搭載する4WD方式。駆動用バッテリーはリチウムイオンで床下(フロントシート下あたり)に搭載。リヤモーターや各種システム搭載のため、サードシートは省略されている。
システムを起動して、セレクトレバーをDに入れてアクセルペダルを踏むと力強く発進する。このクルマ、じつはミッションをもたない。なのでATセレクターではなく、単なるセレクトレバーだ。発進はモーターのみで必要に応じて、エンジンが介入してくる。
しかし、なかなかエンジンは介入しない。もちろん、アクセルペダルをグイッと踏んで強力な加速をすればエンジンは介入するが、普通に走っているとなかなかしない。クルマが「私、電気自動車でございます」と主張しているかのようだ。
できる限りバッテリー走行を行うようにして電力を消費し、エンジンが回っている状態を目指した。エネルギーモニターはエンジンが始動していること示しているが、かなりシームレスにつながるので、高速走行では体感的にエンジン始動を感じるのは難しいほど。
標準車の『アウトランダー』に比べて、ガラスの厚みなども変更し、静粛性を向上しているだけあって、とにかく静かなのだ。ちゃんとスピードメーターを見ていないと、スピード違反を犯しかねない。
発進加速はもちろん、中間加速を含めて加速感は非常に力強く、1.8トンのボディが軽々と加速する。もちろん電気自動車らしい、ストレスのない、力感にあふれる加速だ。
おもしろいのは、アクセルペダルをゆるめた際の回生ブレーキの度合いを調整できること。回生なしから強回生まで5段階があり、ステアリングコラムのパドルスイッチを使い調整が可能。左パドルを引くと、1段強くなるので、シフトダウンによる減速に似た効果が得られる。
床下にバッテリーを配置し重心が下がったことなどにより、ハンドリングは安定感のあるものとなっている。さらに前後の駆動力配分と4輪独立ブレーキ制御などが加わり、車高の高さを感じさせないハンドリングも実現している。
アウトランダーPHEVは、電気だけで約60kmの距離を走行できる。これだけの距離を走れると自動車通勤をしている多くの人が、電気だけで通勤できてしまうという。
しかも万が一、充電切れとなってもハイブリッドとして走れるという安心感もあるというわけだ。
いざというときにエンジンがあるというのはかなり優位。日本のEVはプラグインにシフトしていくのではないかと、真剣に思わされる試乗だった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。