トヨタ自動車が1月末に発売したプラグインハイブリッドカー『プリウスPHV』。EV走行機能を持たせることで環境性能や経済性を高める一方、クルマと人、家、道路などを情報通信技術で結ぶカーテレマティクスについても、新しい試みを盛り込んでいる。「eConnect(イーコネクト)」がそのひとつ。バッテリー残量、平均燃費、走行距離など、車両情報のログを表示したり、充電スポット情報を表示できる。
「eConnectの技術的な面白みのひとつは、携帯電話会社の通信モジュールではなく、Bluetoothでスマートフォンとペアリングさせることで通信を行うこと。スマホ側がパケット上限プランであれば、とくに追加費用が発生しない。使う側にとってはうれしい仕様です」
プリウスPHVを購入した本サイト編集長、三浦和也は言う。
プリウスPHVには今回、DCMと呼ばれる通信モジュールは標準搭載ではなく、高価な純正ナビとのセットオプションになってしまった。代わりにDCMが搭載されないプリウスPHVには「CAN-BT」という通信装置が標準装備されている。CANとは「コントローラーエリアネットワーク」の略で、クルマの制御を行うコンピュータとエンジン、変速機、ブレーキなどクルマの各部をオンラインで結ぶシステムの名称。世界の多くのクルマに採用されている技術だ。
●ECU情報を可視化
プリウスPHVのCAN-BTは、そのCANの通信情報を元に、バッテリー残量、燃料消費量といったECUの情報をBluetooth経由で携帯端末に送信する。ごく一部とはいえ、秘匿性の高いECU情報を可視化するのはきわめて異例の試みである。プリウスPHVはCAN-BTを搭載するトヨタ車第1号だ。その情報を表示するスマホアプリがeConnectというわけだ。
「通信モジュール方式と違って常時接続ではありませんので、遠隔操作で充電量を確認したり、盗難車の検索には使えません。スマホを持ってクルマに乗り込まないと機能しないのですが、エンジンを切った後、過去20回分のドライブ情報をトヨタスマートセンターに飛ばす仕様になっているとのこと。よってスマホアプリを立ち上げ忘れたりで何回か繋がらなくとも、情報が欠落することはありません。1ドライブごとに燃費が表示されるほか、エコ運転スコアもグラフィック表示されます。」(三浦)
●オンライン化したモビリティの未来像を垣間みる
このeConnectの機能で重宝しているのは、充電スポット表示機能だという。
「PHVドライブサポートに加入している場合、充電設備のあるトヨタ系ディーラーで1時間、無料で充電してもらえます。先日、横浜中華街に家族で食事に行ったのですが、中華街近くのディーラー併設の充電ステーションを検索して、そこで充電してもらいました。食事が終わる頃にはバッテリー量が大幅に回復していましたが、そればかりでなく、中華街界隈の高い有料駐車場を利用せずにすみました」(三浦)
三浦の場合、eConnectは住宅とEVの連携ソフト「H2Vマネージャー」と並び、ほぼ毎日使うアプリだ。が、注文もあるという。
「PHVユーザーの燃費ランキングが出るのですが、EV航続距離内でプリウスPHVを使うユーザーは燃費が“999.9km/リットル”になってしまい、比べる意味がなくなってしまっている。走行距離や電力消費率もカウントするなど、もう少し意味のあるランキングになればいいと思います」(三浦)
「スマホやタブレットPCとクルマを連携させることで、カーテレマティクスを低価格化し、ベーシックカーも含めてカーテレマティクスを標準装備にしていきたい」(友山茂樹常務)というプランを打ち出しているトヨタ。その第一歩となるプリウスPHVのイーコネクトの完成度は決して100%というわけではないが、オンライン化されたクルマというモビリティの未来像に触れられるという点では、オーナーにとっては楽しみの一つと言えよう。