【スバル BRZ 事前試乗】圧倒的低重心が生み出すスーパーカーフィール

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スバル初の小型FRスポーツカー「BRZ」は、低重心を活かした高いコーナリング性能が特徴だ。
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  • 森口将之氏
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スバル『BRZ』に発売前にもかかわらず袖ケ浦フォレストレースウェイで試乗する機会を得た。はやる気持ちを抑えてボクサーエンジンをスタートさせ、ギアをローに入れ、ピットロードを出て第1コーナーに飛び込んだ。その瞬間、異次元という言葉が浮かんだ。

ステアリングはそれほどクイックではなく、サスペンションもハードではない。その点では量産スポーツカーそのものなのに、ロールしている実感がまったくなく、水平移動するようにするっと旋回していく。圧倒的な低重心設計が、スーパーカー的なコーナリングを味わわせてくれるのだ。

この点について、BRZのプロジェクトゼネラルマネージャーを務めた富士重工業スバル商品企画本部副本部長の増田年男氏は、次のように解説した。

「BRZは、ボクサーエンジンのメリットを出すべく、何よりも低重心であることを追求しました。エンジンの搭載位置もできるだけ下げ、吸気系の取り回しも一新しました。ブロックの後傾角が水平に近づくことで、潤滑にも不安が出てくるので、ゼロからやり直しています。ただ同時に、クルマがドライバーのパートナーであるという点も忘れていません。いたずらにクイックな反応には仕立てず、走りを楽しむだけでなく、買い物や旅行にも使えるクルマを目指したのです」

その後は高速コーナーをクリアしながら、裏のヘアピンへ向けて加速していく。ここではまずエンジンのリニアな性格に感心した。自然吸気2リットルで200psというスペックだけ見ると、ピーキーな特性を予想する人も多いだろう。しかし実際は、下からきちんとトルクが出て、回すにつれて力が湧き出てくるという絶妙なキャラクターだった。
 
「BRZに積まれるFA型は、インプレッサに積まれているFB型がベースです。ただし高回転高出力というコンセプトを達成するためには、FB型で採用したロングストロークは向きません。そこで3リットル・フラット6や2リットルディーゼルに使われた86×86mmのスクエアとしました。つまり経験に基づいたボア・ストロークなのです。さらに低中回転域がスカスカにならないよう、トヨタのD-4S技術をお借りし、直噴化・高圧縮比化することで問題を解決しました。(増田氏)」

MTのシフトフィールの良さも特筆すべきだろう。ストロークが短く、ゲートは確実で、手首の動きだけでコクコクと決まる。こちらはATを含めてアイシン製がベース。スポーツカーらしいフィーリングと人とクルマの一体感を両立を目指し、アイシンと共同で詰めていったとのことだ。
 
エンジン音は、3000rpm以下ではボクサーらしい鼓動が伝わってくるが、そこから上はスムーズなサウンドが主体になっていく。アクセルペダルを大きく踏み込むと、吸気音を思わせる咆哮がボリュームアップして届けられるという仕掛けまで備わっている。

「音をきちっと聞かせたいという思いは持っていました。以前3リットル・フラット6のサウンドを研究したことがあるのですが、それに比べると2リットルの4気筒は、気持ちよい音にはなってくれません。トヨタさんからもそういった声が出ていましたので、吸気音の一部をキャビンに伝える共鳴システムを装備することにしたのです(増田氏)」

ヘアピンではVSCのモードを切り替えてみた。BRZのVSCはオン/オフの他にスポーツモードもあり、ある程度のスライドを楽しみながら安全にコーナーを抜けられる。基本はステアリングを切ったとおりに曲がってくれる一方で、慣れればスロットルとステアリングの入力次第で、ステア特性を自由自在に選ぶことができる。

これこそFRの醍醐味なのだが、スバルとしては1954年発表の試作車『P-1』に続く2台目、つまり事実上初のFRがここまで期待に応えてくれるとは思わなかった。しかし増田氏によれば、この結果は別に不思議なことではないという。

「たしかにスバルにとってFRは事実上初めてです。でもエンジニアたちは研究開発などの段階でFR車を経験しています。それに私たちはAWDの研究開発を長年にわたり行ってきましたが、その中では前後駆動力配分が0:100というパターンも経験してきているのです。その経験を量産レベルに仕立て上げたのがBRZなのです。逆に言えば、今回BRZを作った経験は、今後のAWD開発に生かされるのではないかと考えています」

スバルには『レガシィ』と『インプレッサ』という2本柱がある。この2台を作り続けていけば安泰という雰囲気もある。しかしスバルはそれで良しとせず、社内の意識改革に着手した。BRZはその結果生まれた1台なのだという。ということは、これからもBRZのような楽しめるクルマが登場してくる可能性が高い。今後のスバルが楽しみになってきた。

《森口将之》

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