富士通テン「イクリプス」がこの秋に投入した新型カーナビ「AVN-G01」は、WVGA+DVD+フルセグというミドルクラスの機能を備えつつ、高い価格競争力を備える中核モデル。今後のアフターマーケットの中心となるカテゴリーで他社モデルとどのような差別化を図ったのか。その特徴について富士通テン アフターマーケット推進部の永元覚氏に聞く。
◆WVGAの採用でフルセグ画質が実現できる
----:2011年の夏にトップレンジモデルとして地図差分更新の「マップオンデマンド」や高画質エンジンを搭載した『AVN-V01』『AVN-Z01』と、iPhone連携を実現した『AVN-F01i』が登場し、この秋にはその中間モデルとなる『AVN-G01』が登場しました。まず、この新モデルの特徴についてご説明ください。
永元:AVN-G01を開発するにあたっては、WVGAに4アンテナ・4チューナーのフルセグとDVDというベースの機能をしっかり備えつつ、高い価格競争力を持たせようと考えました。
----: DVD・フルセグ・WVGAと、もっとも優先度の高い機能はどれだったのでしょうか。
永元:やはりWVGAですね。映像表現とくにフルセグの視聴を考えると、やはりWVGAクラスの解像度は必要です。ユーザーインターフェースは『AVN Lite』シリーズのものをベースに進化させていますが、WVGAの採用により品質感はぐっと向上しています。また、筐体も黒基調で引き締まったクオリティを求めました。
----:アフターマーケットの中心は、メモリー+WVGA+フルセグになる、と。
永元:AVN Liteの次にやりたかったのはこのセグメントでした。Liteシリーズの『AVN110M』とそれに引き続いてこの秋投入した『AVN111M』でベースの機能をしっかり作り込んで市場も確保できたということもありましたので、AVN-G01のリリースはこのタイミングになりました。
----:この2011年に入って、フルセグ・DVD・WVGA搭載のメモリーナビが他社を含めて数多く登場していますが、ライバルと差別化するAVN-G01の特徴はどのような部分でしょうか。
永元:いちばんこだわったのは、“地図の見栄え”と“レスポンスの良さ”ですね。第一印象の見た目のきれいさと、触った瞬間の軽快な動作というのは、お客様にとって非常に大事なポイントです。
上位モデルに採用した「Vivid View Processor 3」はAVN-G01には非搭載ですが、その際に開発した画像処理をG01にもスライドさせて採用しています。発色や彩度など見やすさと美しさに配慮したものになっています。
◆幅広いユーザーをカバーするAVN-G01
----:AVN-Z01/AVN-V01でこれまでのハイエンドモデルのストレージだったHDDからSDカードに置き換えました。さらに今回の新ラインナップでAVN Lite以降のイクリプスの新世代ラインナップが一通りそろったという印象です。
永元:HDD搭載モデルは従来機をベースにしたものを一部に残してはいますが、それ以外の主要なセグメントには新世代モデルを揃えられたとは思います。今後、現在のラインナップから派生モデルは製品の個性をより引き出したモデルになるでしょう。
----:UIの考え方なのですが、ベーシックなモデルからAVN-G01まではAVN Liteを踏襲していますが、トップレンジのAVN-Z01/AVN-V01ではこれまでのカーナビのものを引き継いでいます。
永元:AVN-Z01/AVN-V01に採用しているUIは、多機能を使いこなすカーナビゲーションに慣れ親しんだ方にとって使いやすいUIです。上位モデルは従来UI、ミドルクラス・ベーシッククラスはAVN LiteベースのUIというように、今後も商品企画とUIをうまく当てはめていきます。
◆ナビゲーションの品質は上位モデルに匹敵
----:地図や検索のデータ量は8GBということですが、検索DBの物件数も上位モデルと遜色ありませんね。
永元:詳細地図などデータサイズとコストをにらみながら割愛した部分もありますが、ナビゲーションが第1の機能である以上、案内と探索系のデータベースPOIの情報は削る訳にはいきません。
案内でこだわったのは、交差点の名称案内ですね。それぞれの交差点で音声データを収録する必要がありますので、データは増えますが、やはり不慣れな道をドライブする際に、「○○交差点を左です」と言うか言わないかでは使い勝手の差は非常に大きいのです。
◆案内のさせ方・画面の見せ方は車載器メーカーにノウハウあり
----:スマートフォンのナビゲーションも様々なベンダーから登場していますが、AVNのアドバンテージはどういった部分にあるとお考えですか。
永元:スマートフォンの機能進化は著しく、はじめてナビを利用する方、古いナビを利用している方の中には「これで十分」と思われる人がいることも納得はできます。ただし、日本の道路事情はかなり特殊で、案内のさせ方・画面の見せ方には車載メーカーのノウハウと技術があります。スペック表では分からない部分ですが、ビルトインナビを一度使ってしまうと、スマートフォンやPNDに逆戻りするユーザーが非常に少ないのは“案内の正確性”にあるのではないでしょうか。
----:確かに、案内と運転の一体感はビルトインナビでなければ得られないフィーリングかもしれません。IT技術の進化と競争により、機能面、デザイン面、操作面でクルマと一体化したAVNが驚くような価格で手に入るようになりました。
永元:PNDやスマートフォンの登場でユーザーの裾野は確実に広がっていますが、ではひたすら安い製品を作れば支持を得られるかというと、決してそうではありません。価格を抑えながらいいものをどうやって作るのか、どう割り切るのか、という考え方を変えることはなかなか大変です。
----:スマートフォンのナビアプリを車載モニターに表示し、操作できる「ディスプレイオーディオ」などの技術が登場していますが、スマートフォン連携の一歩進んだ形として、イクリプスではどのように考えていますか。
永元:ディスプレイオーディオの考え方自体は十分”あり”だと思います。スマートフォンは進化のスピードが車載機器よりも圧倒的に速いのですが、スマホで求められることと、カーナビに求められていることとは違う。汎用端末であるがゆえの制約もあります。スマートフォンが車載器と連携することで、ナビ以外の価値も実現できるかもしれません。車載器の可能性を広げてくれる存在として、スマートフォンでユーザーにどのような価値を提供できるかを、検討しているところです。
《聞き手 三浦和也》