【池原照雄の単眼複眼】安全技術はプリクラからノンクラへ

自動車 テクノロジー 安全
60km/hから停止可能な衝突回避支援コンセプト
  • 60km/hから停止可能な衝突回避支援コンセプト
  • 60km/hから停止可能な衝突回避支援コンセプト
  • 60km/hから停止可能な衝突回避支援コンセプト
  • 60km/hから停止可能な衝突回避支援コンセプト
  • アイサイトver.2の機能を制御するステレオカメラ
  • アイサイトver2の新機能、30km/hから衝突回避または軽減可能なプリクラッシュブレーキ
  • アイサイトver2の新機能、30km/hから衝突回避または軽減可能なプリクラッシュブレーキ
  • アイサイトver.2を搭載するレガシィアウトバック

ノンクラッシュの領域をより大きく

前方車両との衝突を回避する技術が実用化されるとともに、さらに進化している。日産自動車は7月28日に、60km/hでの走行時でも追突を回避する支援技術のコンセプトを発表した。予防安全と衝突安全の両方の要素を織り込んだ「プリクラッシュ・セーフティ」技術は、予防安全、つまりノンクラッシュの領域をより大きくする技術へと磨かれているのだ。

クルマが強制的にブレーキをかけて追突を防止する技術は、スウェーデンのボルボが2008年末にクロスオーバーの『XC60』で実用化し、日本では09年夏に市場投入した。次いで今年5月には富士重工業(スバル)が運転支援システム「アイサイトver.2」として『レガシィ』に搭載した。

ドライバーが全くブレーキ操作をしない状態で、前方車両との追突を回避できる相対速度は、ボルボが15km/h未満、富士重工が30km/h以下となっている。仮に前方車両が停止している状態だと、これらの速度内での走行時に衝突を防ぐことができる。

◆日産は60km/hからでも回避する

日産は「より実用的な速度からの回避技術を目指す」(開発担当の山下光彦副社長)と、相対速度60km/hでも回避できるようにする。日産の技術は前方車両が停止している場合、車間距離が60mになったところでアクセルペダルに反力をかけ、警報音も鳴らしてドライバーに注意喚起する。

この際、ハザードランプが作動し、後方車両にも注意を促す。ドライバーがなお制動操作をせずに前方車両との距離が5mとなると、ブレーキを強くかけるとともに、シートベルトの巻上げと警報音を作動させながら急停止する。停止した際の前方車両との距離は、最近、国土交通省が定めた基準である1m以内としている。

日産は前車追従型クルーズコントロールなどで、アクセルペダルに反力を与える技術を実用化しており、「これを使えば60km/h程度からの衝突回避もできるということで、今回の技術開発に着手した」(電子技術開発本部の福島正夫エキスパートリーダー)という。

◆注目されるトヨタ、ホンダの技術

前方車両の検知は、富士重工が2台のステレオカメラで行うのに対し、日産は100m程度の範囲まで検知できるミリ波レーダーを使った。国内での追突事故は、走行速度が100km/h以下の場合が全体の99%とされ、60km/hからの追突を回避できれば事故発生を大幅に抑制できるはずだ。今後は衝突回避可能な相対速度をさらに高める技術も開発されることになろう。

日産の開発関係者によると、この技術は高級セダンの『フーガ』に搭載され、来年度には実用化の見通しという。プリクラッシュ・セーフティ技術はトヨタ自動車とホンダが2003年に世界に先駆けて実用化した。まだ、技術発表していないものの、この2社も早晩商品化するのが確実であり、両社の動向が注目される。当面は高級車向けの技術だが、よりぶつかりにくいクルマの登場が待たれる。

《池原照雄》

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