歩行者にクルマの接近を気づかせる人工音発生装置を、電気自動車(EV)や電気モーターだけで走行可能なストロングハイブリッド車に義務付ける方針を日欧米の当局が打ち出している。日産自動車が今月公開した新世代EV『リーフ』のプロトタイプには、「車両接近通報音」が装着されていた。
日産がどのようなサウンドを採用するのか、いやが上にも関心が高まるポイントであったが、試乗会場でいざクルマが接近してきてもそのような電子音らしき音が実装されている気配がない。
キツネにつままれたような気分であったが、その理由は日産スタッフの説明ですぐに氷解。何とリーフの車両接近通報音は“EVサウンド”だったのだ。
EVやハイブリッドカーは出力制御のためのインバーターや電気モーターなどから「ピー」「シュー」といった高周波ノイズが出る。身近なところでは、ハイブリッドカーのベストセラー、トヨタ『プリウス』に乗れば、その音は正常な聴力を持っていれば誰にでも聞き取れる。日産はその音を増幅したような人工音を、車両接近通報にチョイスしたのだ。クルマが近づいてくると、ノイズですぐに危険を察知できるのだが、そのノイズはほとんどEVの音そのもの。人工音の発生装置が実装されていると気づかなかったのはそのためだ。
車速25km/hまではEVサウンドをフルに鳴らし、30km/hまでにフェードアウト。それ以上になるとタイヤノイズや風切り音だけで十分にクルマの走行音が伝わるため、サウンドはなし。減速するときは反対に30km/hでサウンドがフェードインし、25km/h以下でフルボリュームになる。停止時は音が不要であるため、OFFになる。
EVの人工音に関しては「音楽ではダメ」「クルマ固有の音でなければ」など、さまざまな意見が飛び交っている。中には「エンジン音でなければダメ」などという意見も出たそうだが、エンジン音から解放されるEVに擬似エンジン音の発生を義務付けるなど、ナンセンスもいいところである。
リーフはまだ型式指定を受ける前で、仕様はあくまで暫定的なものであるとのことだが、現時点でその装置を公開しているということは、行政当局との間でEVサウンドを接近音として使用可能という決着がついていると考えられる。EVでわざわざエンジン音を鳴らすという事態はどうやら避けられることになりそうだ。ちなみに車両接近通報音からのEVサウンド、車内ではまず聞き取れないため、EVならではの快適性にはまったく影響がなかった。