vol.8 下總良則さんクリエイター
vol.8 下總良則さんクリエイター
8月の東京・二子玉川。
この日は朝から、あいにくの雨だった。猛暑が過ぎた途端、一気に過ごしやすくなったのは嬉しいが、どことなく曇った空が夏の終わりを感じさせるようで、寂しさを感じる。
二子玉川は近年の都市開発でモダンなビルがそびえ建つ一方で、人々が集う広場やオープンカフェは賑わい、しっとり濡れた緑がそこここで輝きを添えていた。
働く人、住まう人、学ぶ人、愉しむ人・・・
ほんのひと時を過ごしただけで、ここはすべての人に心地よく、魅力を発信するように“デザインされた街”なのだということが伝わってくる。
駅のロータリーに滑り込んできたMINI CROSSOVER PHEVは、この街でひときわ活き活きとしているように見えた。 そして今回、そのステアリングを握っていただくのは、二子玉川を拠点に活躍するデザインクリエイターの下總良則さん。 MBAの資格を持ち、経営学の視点からもデザインを提案することを得意とする「usadesign」を主宰し、一般社団法人デザイン経営研究所の代表理事も務める。一歩先を見据えるデザインを生み出すことのできる貴重な人材として、大学のデザイン学科から講師としてのオファーも多い。
そんなデザインのプロである下總さんに、MINI CROSSOVER PHEVはどう映るのだろうかと少し心配になっていると、
「今日はとても楽しみにしてきました」
といきなり頬がほころんでいる。
実は下總さんは以前、MINI CONVERTIBLEを愛車としていた時期があり、とても気に入っていたのだという。まだ美術大学に通ってプロダクトデザインを学んでいた頃に、「なんてオシャレなクルマなんだろう。卒業して社会人になったら絶対に欲しい」と憧れていたのが、ちょうどBMWからデビューした新しいMINIだったそう。
運転席に座ってすぐに、「この感じ、懐かしいです」と言いながらも、キーを回すのではなくスタートボタンを押す操作や、2シーターだったMINI CONVERTIBLEとは違って広々としたスペース、アップライトな視界など、新鮮さを感じる部分もたくさんあるようだ。
アクセルペダルを踏み込むと、モーターのアシストが効いてググッと力強く走りだすMINI CROSSOVER PHEV。
下總さんは
「あっ、なるほどなるほど」
と頷いて何かに感心しつつ、ちょっとテンションが上がっているのが伝わってくる。くねくねと先の見えない細い道や、川沿いで対向車とのすれ違いにも気を使う道、すぐに出てくる信号と、二子玉川の街中は決してドライブに向いている環境とは言えない。それでも下總さんはスイスイ、キビキビとMINI CROSSOVER PHEVを操り、時にはUターンも難なくこなしてみせる。
そして15分ほど走っただろうか。
「もう身体に馴染んだみたいです」
とリラックスした表情を見せた下總さん。現在は愛車を手放しているため、運転するのは数ヶ月ぶりだと聞いていたのだが、まったくそんな風には思えなかった。しかも初めて乗るクルマで、ぎこちない操作になって当然だというのに、これはやはり、身体のどこかに眠っていたMINIを操る感覚が早くも呼び覚まされたにちがいない。
「すごいですね、MINI CROSSOVER PHEVは僕が乗っていたMINIよりも若干大きい印象ですけど(笑)、乗ってみるとちゃんとMINIなんですね。とくにこのゴーカートフィーリング! 乗っていて楽しいかどうか、というところを大切にしている価値観がまったく変わっていないので、嬉しくなってしまいました」
先ほどの下總さんの「なるほど」は、それを確認した頷きだったようだ。家に帰って来たような懐かしさがあったというが、下總さんはPHEVのような次世代環境車には抵抗がなかったのだろうか。
「実は僕がMINIに乗っている頃から、コンセプトカーでPHEVが出ていて、いったいどんなクルマになるのだろうと楽しみに待っていたところもあったんです。経営やデザインの視点で見ても、これからのプロダクトは便利なだけではダメで、その企業が成し遂げようとしているミッション、ビジョンに共感して選ばれると言われているんですね。ですのでMINI CROSSOVER PHEVはMINIらしい楽しさがありながらも地球に優しいという点で、とても魅力的だと思います」
高速道路を走った時には、その余裕の加速フィールと静かさにも感心していた下總さん。120km/hくらいまではモーターのみで走ることもでき、その気持ち良さはこれからの時代を見据えた進化が感じられる部分である。
MINIは今年で60周年を迎えた。
デザインや機能で時代に合わせてきた部分と、あえて合わせなかった部分があるが、経営者としてデザイナーとして、下總さんはどんな捉え方をしているのだろうか。
「デザイナー視点で見ると、“ブランディング”という言葉は現在進行形ですよね。それは日々進化していくものだからなんですね。変えてはいけない部分と、変えなければいけない部分があるということです。その点でMINIはしっかりそれができていると思います。
一方で経営者としてのファイナンスの視点から見ると、今のお金の価値と未来のお金の価値は同じとは限らなくて、付加価値性と言われているのですが、リスクをとってでもブランディングで今の価値を守っていかなければならないんですね。そこの「判断」というか、「覚悟」がちゃんとできているのがMINIだと思います」
両方選んでしまうと、どっちつかずの中途半端なものになって、結局はどちらからも魅力のないものになってしまうということ。まさに「二兎追う者は一兎も得ず」だ。
MINIは、確実に日々進化しているけれども、何年経っても身体が覚えているような強烈なMINIらしさを持ち続けている貴重なブランドなのだと、下總さんは太鼓判を押してくれた。
じゃぁ、次に愛車を買うときはMINI CROSSOVER PHEVで決まりですね? そう問いかける私に、
「はい、もちろん決まりです」
と、今日いちばんの笑顔が輝いたのだった。
INTERVIEWER:AKIKO MARUMO
PHOTO:JUNJI IWAMOTO
LOCATION:café SoulTree
今回のナビゲーター
映画声優、自動車雑誌『ティーポ(Tipo)』編集者を経て、カーライフ・ジャーナリストとして独立。 現在は雑誌・ウェブサイト・ラジオ・トークショーなどに出演・寄稿する他、セーフティ&エコドライブのインストラクターも務める。04年・05年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本カー・オブ・ザ・イヤー(2005-2012等)選考委員、AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。