top interview by Teruo Ikehara
お客さまが困っていることには何でも相談
――原材料費の高騰を受けて7月から3%程度の値上げを実施しましたが、浸透具合はいかがでしょう。

白井 お客さまにご理解いただくよう、不退転の決意で取り組んでいます。この3年で大型車だと70万円くらい資材費が値上がりしました。必死で原価低減を進めていますが、値上がり分の半分を(顧客に)お願いできないでしょうかということです。

原低だけでなく、燃費が少しでも向上するよう商品の改善も進めています。また省燃費の無料講習会など、販売会社もお客さまが困っていることには何でも相談させていただく活動も進めています。新車の販売実績で見ると、値上げ後も台数はそんなには落ちていません。

――いすゞ自動車はトヨタとディーゼル開発で提携し、一部資本も受け入れています。いすゞとの関係強化はどう進めますか。

白井 新しいものでは、排ガスの後処理技術を一緒にやろうということで進めています。トラックのユニット(基幹部品)開発は、ひとつで150億円から200億円とか非常に高いものになります。

開発を分担してユニットを共通化すれば、効果は大きい。現状では、そうした分野でも合意できるものがあればという考え方をもっています。

――トヨタの渡辺捷昭社長は「走れば走るほど空気がきれいになるクルマ」など、「夢のクルマ」を描いていますが、白井社長にとって夢のクルマとは?

白井 夢というより現実の世界かも知れませんが、トラックのレボリューション(革命)に取り組むことですね。軽くてコンパクトなのに積載効率は良く、燃費もいい。しかもさまざまなマーケットに提案できて、物流を変えていくことができる……。

もちろん脱化石燃料への多面的な取り組みも重要です。トラックは生活を支えるには無くてはならない存在ですから、そのレボリューションは社会的な意義も非常に大きいと考えています。
白井芳夫
白井芳夫(しらい・よしお)
1973年北海道大大学院工学研究科修士課程機械工学専攻修了、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。1997年第2ボデー設計部部長、2001年取締役第2開発センター長、03年常務役員を経て05年専務。07年に日野自動車副社長兼執行役員に就任し、08年6月から現職。トヨタ出身者の社長就任は3代続けてだが、開発部門出身は白井氏が初めて。環境技術など商品力の強化でグループのトラック事業はもっと伸ばせるというトヨタの狙いが込められている。スポーツ万能で20代は野球、30代はテニス、40代からはゴルフに打ち込み、50代にはスキーにもカムバックした。大学の先輩でもあるプロスキーヤーの三浦雄一郎氏とも年に1度は一緒に滑る。北海道出身、60歳。
池原照雄
池原照雄(いけはら・てるお)
1977年北九州市立大卒。日刊自動車新聞、産經新聞などで自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリー。著書に『トヨタVS.ホンダ』(日刊工業新聞社)。山口県出身。

インタビュアー:池原照雄(経済ジャーナリスト)
写真:竹内征二
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