---- パ・ケ・ナビメールは既に存在する機能を組み合わせて、新しいサービスを作るという点で、これまでの技術先導型の携帯電話サービスやビジネスとは違いますね。
中村 だから、あまり話題にならないという面もありますが(笑)
---- しかしネット業界のトレンドを見れば、AJAXにしても、ポッドキャスティングやブログなど話題のサービスも、実は古くからあるXMLなどの技術や仕様を組み合わせて使っているにすぎません。
中村 もともとドコモは、ユーザーオリエンテッドで、(独自の技術ではなく)標準的な技術を積極的に使うという考え方なのです。それはHTML拡張を使ったiモードや、Java技術を取り入れたiアプリが好例です。
---- 確かに技術的にはそうですが、iモードはサービスモデルやビジネスモデルにおいては自己完結型でした。そして、それはかつてカーナビとiモードが連携したiナビリンクもそうでした。
中村 iナビリンクの頃との違いは、VMCでは「(ドコモの)外との連携」がさらに重視されたことですね。
---- そこがWeb 2.0的に感じる部分ですね。ドコモの中でVMCはどのような位置づけなのですか。
中村 広義にはユビキタス戦略のひとつです。(ドコモの中では)人だけでなく、クルマやその他のデジタル機器、さらには自販機などまで、多くの機器に通信機能を持たせるという取り組みがあります。その中でクルマも、さらに力を入れていきたいと考えています。
---- パ・ケ・ナビメールを見ますと、自動車メーカーのテレマティクスと違い、コンテンツやサービスすべてを1社で提供するというものではありませんね。
中村 我々の今後のビジネスにおいて、鍵になっているのはやはり「連携」なんです。自動車メーカーやカーナビメーカーとの連携は重視しています。今後、登場するVMCのサービスや機能も、連携がキーワードとなって展開していくでしょう。
---- Web2.0的な考え方だと、連携する相手は特定の1社とではない、と。
中村 (特定企業だけとの提携は)ありえないです。VMCにおける我々の母集団は携帯電話のユーザーです。ドコモユーザーの皆さんは、国産車から輸入車まで、幅広くクルマを選ばれるわけですよね。ですから、特定の自動車メーカーとだけ提携する、サービスを提供するという考え方は成り立たないのです。ですから、日本車メーカーさんはもちろん、海外メーカーさんとも話し合いをしています。
---- VMCとしての提案的な共通仕様を固める、という可能性はあるのですか。
中村 今のところVMCはコンセプトであり、「モットー」に近いですね。この(VMCコンセプトの)中に、パ・ケ・ナビメールをはじめとする様々な新サービスが入ります。またBluetooth携帯電話や通信モジュールも、VMCの中に含まれます。
---- 直近で考えた場合、VMCの柱になる分野はどのようなものになるのでしょう。
中村 ひとつは「安全・安心」、もうひとつが「エンターテインメント」です。例えば後者では音楽がクルマの中では重要なので、VMCでも音楽への取り組みが考えられます。
---- 音楽といえば、最近は「音楽ケータイ」でデジタル音楽機能の取り組みが活性化しています。ドコモのP902i/iSではBluetoothで、音楽をワイヤレス送信する機能も搭載されました。今後は携帯電話側の音楽コンテンツが、Bluetooth経由でクルマでも聴ける。それもVMCである、と。
中村 そのとおりです。他にも、ドコモではモバイル放送対応の携帯電話を発売しているのですが、これと連携して、モバHo!の衛星ラジオをカーステレオで快適に聴けるようにするクレードルも開発しています。
---- 携帯電話は今後、音楽はもちろん、様々な分野でコンテンツのリッチ化が起きる。それらは従来の携帯電話コンテンツよりも、クルマでの試聴に十分なクオリティになります。一方で、携帯電話は有料コンテンツの取り扱いがしやすいですから、そこから生まれるシナジー効果は期待ができそうですね。
中村 今年の秋には、(3.5Gの)HSDPA端末がハイスピードモデルとして投入されコンテンツのリッチ化は加速されるでしょう。
---- 今秋の903iシリーズ発売が、クルマ連携を考える上でもターニングポイントになりそうです。
《インタビュアー:神尾寿(通信・ITSジャーナリスト)》
《写真:石田真一》
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