---- UIの部分はAUIの実装により、クルマ/カーナビ市場に適したものが出来上がっている。一方で、機能面で今後の強化ポイントはありますか。
平野) まずはデジタルブロードキャスティング系の対応ですね。日本では地上デジタル放送が代表的です。これにどう対応するかというのが、ソースとしては大きいですね。
---- イメージとしては、Windows Automotiveのアプリケーションとして対応する、というものですか?
平野) アプリケーションとして対応するというアプローチもあるでしょうし、ミドルウェアとして(デジタル放送受信機能を)用意して、メーカーさんにお使いいただくというアプローチもあります。方法論は確定していませんが、メーカーがゼロから開発しなくてもデジタル放送に対応できる仕組みはOSとして用意しておく必要があるでしょう。
---- 少し飛躍しますが、ナビゲーションシステムそのもの、「フルナビ」機能を実装する考えはありますか?
平野) カーナビアプリケーションですか? 少なくとも日本チームとしては考えてません。それをやったらカーナビメーカーさんと競合してしまいますから。
---- しかし、一定レベルのクオリティを持つカーナビアプリケーションやミドルウェアがOS側にあれば、カーナビ開発のノウハウを持たないメーカーが市場参入しやすくなる。
平野) 仮にフルナビをOS側で持つとしたら、前段階としてカーナビのソフトウェアがモジュール化する必要があります。つまり、カーナビ機能がしっかりと定義されて、(Windows Automotive上で)各社共通の構造になる必要がある。
---- 今はそうではない。プラットフォームが存在するだけという事ですね。
平野) そうです。カーナビソフトウェアの定義は各メーカーが別個に行っていますから、A社のカーナビソフトウェアを仮に(同じくWindows Automotiveを採用する)B社に移植しても、他の機能ソフトウェアと適合しない。
---- 適合性を無視して臓器移植をするようなものですね。
平野) マイクロソフトが提供するかどうかは別として、Windows Automotive上で共通に使える「フルナビ」というものを作るには、各機能ソフトウェアのインターフェイスやAPIを細かく定義しなければならない。現在のところ、我々はナビゲーションの定義をしていません。
---- AUIとナビゲーションの関係性、ナビゲーションと他の機能ソフトウェアとの関係性はメーカーが一体的に作るものだから、「ナビゲーションだけ入れ替える」ことは不可能である、と。
平野) ナビゲーションのモジュール化が実現すれば、一部のカーナビメーカーが(カーナビソフトを)外販したり、サードパーティのカーナビソフト専業ベンダーが登場するかもしれません。ビジネスとしてメリットがあれば、マイクロソフトがフルナビを提供するかもしれない。しかし、それらはすべて「ナビゲーションのモジュール化」のための定義づけがされる必要がある。
我々としては、将来的には機能ソフトウェアのモジュール化は進むと考えていますが、当然ながらそういった標準化はカーナビメーカー各社のニーズが立ち上がり、歩調が合わなければならない。カーナビメーカーのビジネスとの協調も考えなければならないわけです。
---- マイクロソフトとして旗を振りますか? それともメーカーからニーズが立ち上がるのを待ちますか?
平野) 最初の旗振りは我々がしなければならないと考えています。しかし、これは従来のカーナビメーカーのビジネスモデルからの転換が必要ですから、一朝一夕に実現するものでもないと考えています。マイクロソフトが強引にソフトウェアのモジュール化を推進しても、カーナビメーカーがその仕組みを使ってくれなければ、まったく意味がありませんから。
《インタビュアー:神尾寿(通信・ITSジャーナリスト)》
《写真:石田真一》
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