今秋の発売が予定されているトヨタのオールニュー“マイクロコンパクトカー”『iQ』(アイ・キュー)は、全長3m未満という軽自動車より短い極小ボディながら、4名乗車可能な室内空間を確保したという、きわめて独創性の高いモデルだ。
「計画の初期段階においては、Aセグメント(欧州における最小の乗用車クラス)のモデルを作るということだけが具体的な指針で、このクルマをどんな寸法、仕様で作るかということについて明確な方針を持っていたわけではありませんでした」
03年、今までにない革新的なコンセプトのコンパクトカーを作るというプランが立ち上がった当初からプロジェクトに携わってきたチーフエンジニアの中島裕樹氏は、企画がスタートした当時をこう振り返る。
「全長を極限まで切り詰めながら4人が乗れるクルマにしようと思ったきっかけは、プロジェクトが始まってから、出張で独・フランクフルト空港に降り立ったときにマイクロカー専用のスマート駐車場を見かけたこと」
「『スマート』(現在はスマート『フォーツー』)は2人乗りのコンパクトカーで、当時全長3m未満のクルマ用のスマート駐車場を使える唯一の乗用車でした。それを見て、4人乗りのまま、あの駐車場に入れられるコンパクトカーをぜひ作ってみたいと思ったんです」
iQの最大の特徴である“全長3m未満で4人乗り”というキャラクターは、このようにして決まった。
「もちろん作るからには、単に短いクルマというだけでなく、コンパクトであることの強みを具体的に主張できる記号性が必要だと考えました。全長3m未満というサイズのほか、最小回転半径4m未満、EU混合モードにおける1kmあたりのCO2排出量100g未満という、“3つの未満”を実現させるクルマにしようということになったのです」
この99g/kmというCO2排出量は、4人以上が乗れる乗用車としては革命的な数値である。
トヨタ車の中でEU混合モード燃費がもっとも優れているのは、23km/リットルを超えるハイブリッドカー『プリウス』で、グローバルで見ても一部のディーゼル車を除けばトップランナーだが、そのプリウスでもCO2排出量は104g/km。
ガソリン車の量産車でプリウスのCO2排出量の記録を破るのは、同じトヨタのこのiQになることがほぼ確実となった。