VWは上期に世界3位に浮上
自国内工場のリストラなど、ここ数年低迷していた独VW(フォルクスワーゲン)が復活している。今年上半期(1 - 6月)の世界販売は、米フォードモーターを抜いてトヨタ自動車、米GM(ゼネラルモーターズ)に次ぐ初の3位に浮上した。
7月下旬には欧州委員会が独ポルシェによるVWへの出資増を承認。年内にはポルシェがVW株の過半数を取得し、「ポルシェ・VW連合」が発足する。スポーツカーから大型トラックまでのフルライン連合は、世界1に躍進したトヨタ自動車の強力なライバルとしても浮上してきた。
VWは2007年の世界販売を初めて600万台に乗せていたが、今年上半期も前年同期比5.8%増の326万6000台と好調を持続している。トップシェアの中国で23%増、ロシアでは63%増と新興諸国の伸びに支えられた。
逆に市場が大きく悪化している米国では元々販売数量が少ないために影響は少なく、トヨタや米メーカーなどに比べて好調な販売実績につながっている。
◆ポルシェ持株会社が半数超を出資
収益も過去最高で推移しており、4 - 6月期の純利益は35%の増益だった。2008年12月期の純利益は円に換算すると1兆円を突破するペースとなっている。
ポルシェによるVWの「子会社」化は、ポルシェの持ち株会社「ポルシェオートモービルホールディング」が、現在31%となっている出資比率を年内に50%超に引き上げるという計画だ。
年産10万台規模のスポーツカーメーカーが600万台を超える量産型メーカーを傘下に収めるという自動車業界では異例の統治形態となる。両社の関係は、1930年代にVWの初代『ビートル』をポルシェ創業者のフェルディナンド・ポルシェ博士が設計したのが始まり。
◆欧州の覇者から世界の覇者目指す
以来、開発・生産面で密接な関係を築いてきた。2002年にポルシェが投入して大ヒットしたSUVの『カイエン』は、VWの『トゥアレグ』とプラットフォーム(車台)を共通化し、コスト競争力を高めた。
現在ではハイブリッド車の共同開発にも取り組んでいる。両社は経営体制も一体化を進め、VWの最高意思決定機関である監査役会の会長は、ポルシェ創業家出身のフェルディナンド・ピエヒ氏だ。
「ポルシェ・VW連合」の成立は、買収への防衛につなげるとともに、環境など技術開発での連携強化が狙い。同時にポルシェのヴェンデリン・ヴィーデキングCEOは「トヨタへの挑戦」を掲げている。規模の面でも欧州の覇者から世界の覇者を目指していく構えだ。