【『Microsoft Auto』インタビュー】「アップデイトできる車載端末が必要だ」マイクロソフト社スペイン氏

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ここフランクフルトでモーターショーデビューを行った『フィアット500』のインテリアには、『Blue&Me』というフィアットが一昨年から展開する車載端末の最新バージョンが搭載されていた。『Blue&Me』はフィアットがマイクロソフトと共同開発する車載情報端末の『Microsoft Auto』プラットフォームを利用している、と同時にマイクロソフトは北米ではフォードに対してこの秋から『Sync』という名称でおなじ『Microsoft Auto』を利用したサービスを提供する。マイクロソフト社で自動車用プラットフォームを統括するマーク・スペイン氏がフランクフルトショーに現れたのを機に、その戦略についてインタビューを試みた。

---フィアット『Blue&Me』やフォード『Sync』で使われているプラットフォーム『Microsoft Auto』の基本構成は?

スペイン) ソフトウェアとハードウェアの二つで構成される『Microsoft Auto』プラットフォームをライセンス契約で提供する。フィアットは『Blue&Me』、フォードは『Sync』と異なるブランド名で展開しているが、基本プラットフォームは同じ。CPUに関してフィアットがサムソン製、フォードがフリースケール製と異なるものを採用しているが、APIはどちらも同じで、マイクロソフトがスタンダードを決め、価格や供給方法などに応じてスペックを満たすという形で製品化されている。

PCに置き換えると判りやすいと思うが、『Windows』というOSを、HPやDell、東芝などのメーカーに供給しているのと同じことだ。マイクロソフトで設定されたスペックに対応できるCPUやメモリーなどのコンポーネントのスタンダードを決定することで低価格化を実現したのもまた、PCと同じ展開だ。フォードとフィアットでも僅かな部品が異なるだけで、ハード面は90%同じだ。

---『Microsoft Auto』プラットフォームによる車内情報システムのメリットは?

スペイン) ブルートゥースを用いることでハンズフリー通話が可能になり、アドレスブックの検索やテキストメッセージの読み上げなども視点を動かさずに行う。ナビゲーションも音声コントロールが基本にあるので、ドライバーは運転に集中できる。POIや、イエローブックなど最新情報が随時ダウンロードされるという付加価値も大きい。ポータブルユニットを用いて情報を車外でも共有できるのも魅力のある機能だと思う。

エンターテイメント面では多彩な入力ディバイスに対応することが大きな特徴で、USBフラッシュメモリーに入ったMPEGなどの音楽ファイルの再生もできるし、手持ちのデジタル携帯プレイヤーも接続できる。そして携帯/スマートフォンなどによる音楽提供サイトからのストリーミングも可能。USBソケットは最低1個用意しており、ブルートゥースは同時に複数の認識が可能で、5台の携帯電話を同時に認識することも出来る。将来的には、旅先で『Blue&Me』や『Sync』を装着したレンタカーに個人の携帯やiPodをつなぐことや、個人データを車内で使うことも可能になる。

---『Windows Auto』の社内での位置づけと、自動車用プラットフォームをつくるにあたって基本としたものは?

スペイン) 「ABU(Automotive Business Unit)」はマイクロソフト社の一部門で、同じグループ内では特にWindows CEをベースとする「Embedded Platforms」の部署と綿密にコミュニケーションを取り合っている。PND(パーソナル・ナビゲーション・ディバイス)のボイスコマンドやナビゲーションなどの面で使いやすい製品を作ることが目的だ。

今や、多くの人が日常のなかでマイクロソフト社の製品を使っている。一人のユーザーが家ではPCやXbox、Windows Mobileを、仕事先でもPCでOfficeのソフトウェアを操作するなど、あらゆる場面で我々の製品に触れている。ある調査で「人々は起きている時間の約10%を移動時間に費やしている」という結果がでたのだが、この10%の時間を過ごす車内でもマイクロソフトの製品を使えるようにならないか?ということが、始まりだ。自動車用のデバイスでも家や仕事先と同じように情報共有ができ、アップデイト(バージョンアップ)できることは重要だ。また携帯電話や音楽端末は大体1年程度なのに対し、自動車の寿命は7−10年。日進月歩で高性能化するのに対応できる拡張性も大事にした。

---フィアットとフォード、この2社以外に提携を増やす予定は?

スペイン) マイクロソフト社のプラットフォームは世界中の自動車生活に通用するものとして開発した。最初にパートナーシップを結んだのはフィアットで、2年前に『Blue&Me』を発表し、昨年『Blue&Me Nav』を、そして今年『Blue&Me Map』というステップで、基本プラットフォームの上にニーズに応じたアプリケーションを追加して発展させてきている。北米では同様の形でフォードと『Sync』の共同開発を行ったが、さらにできるだけ多くのメーカーとの間でグローバルな展開を広げ、将来的には欧州、北米、アジアと3つのメジャーな地域での普及を図る展望と計画を持っている。最近ではシーメンスDVOとライセンス契約している。

---ここ欧州で付加価値の高い高級車をつくるメーカーでなく大衆車を作るフィアットをパートナーに選んだ理由は?

スペイン) 当社が自動車用プラットフォーム事業に参入するまでの情報システムは、一部のプレミアムやラグジュアリーな高級ブランド車だけに装備される特殊で高価なものだった。マイクロソフトはPC市場で行っているのと同じく、このシステムを低価格で大量供給することで、すべてのドライバーとパッセンジャーに提供したいと考えていた。今回発表されたフィアット500は、まさに我々の目指すものにピッタリのクルマで、このような大衆車にこそ搭載して欲しかった。またフィアットのように幅広いモデル展開をしているメーカーと組むことで、若いユーザーに低価格で提供できるだけでなく、同時にハイエンドのモデルにも装着することが可能だ。結果として普及率は格段に高いものとなる。北米でフォードとパートナーを結んだのも同じ理由だ。

---世界標準を目指している?

スペイン) まさにそのとおり。PCと同じように世界中の人々にこのテクノロジーを普及させることが我々の目指すゴールだ。

---Windowsのロゴとともに?

スペイン) Windowsのロゴをつけるか否かはメーカーの判断に任せている。現在『Sync』にも『Blue&Me』にもWindowsアイコンが付いているのは、コンシューマーがマイクロソフト社の製品を信頼し、求めていると両メーカーが考えているからだと思う。

---世界展開をするにあたって各メーカー、地域によって求められるものが異なるのでは?

スペイン) メーカーがそれぞれの市場に則し、異なった視点でシステムを見ているのは事実で、フィアットはコミュニケーションにウェイトを置いている。これは西ヨーロッパでは携帯電話の車内使用に対する要望が強く、ボイスコマンドやテキストメッセージリーダーなどが求められているからで、次いでポータブルナビゲーションのニーズという現地事情に対応したもの。一方フォードがエンターテイメントにより力を入れているのも、iPodの普及率の高いアメリカのユーザーのニーズに対応しているからに他ならない。しかし、世界標準を目指すと云う意味でも、基本は同じポテンシャルと性能を持ち、機能的にも大きな差はない。アポールポイントの違いで差別化できる。

---ハード、サービスの価格設定は?

スペイン) パッケージングやサービスの価格は自動車会社が決めることで、この点について当社は関知してない。

---サービスの継続、拡大の鍵となるのは? 顧客を満足させるために必要なことは?

スペイン) 重要なのはユーザーの求める価値あるサービスを供給すること。たとえば、GMが以前から行っている『OnStar』というサービスがあるが、ユーザーがインロック解除を使うのはどれくらいの頻度なのだろう? ほとんどないはずだ。自分ならばその稀な状況の為にお金を出すか? 答えはNoだ。逆に目的地までのルート検索は? 渋滞情報は? 運転する度にほとんど毎回だ。という風に考えてゆくと成功のキーは極めてシンプル。必要とするサービスを提供し続けること、ということになる。

具体的に云えば、車内でのデジタルライフスタイルで多くのユーザーが使用するディバイスは携帯電話とデジタルプレイヤーなどのパーソナルエンターテイメント。そして、それに加えたい価値のあるサービスはナビゲーションだろう。さらに付加価値として交通情報や(ダウンロードなどハイエンドな)エンターテイメントがあれば、と。まず的確にニーズ拾い、それに的確に応えるサービスを提供するという軸をぶれさせないことだ。

---将来的な展望は?

スペイン) 最近マイクロソフトは『MSNダイレクト』を発表したが、将来的にはPNDを通して全てのユーザーに交通情報、天気、燃料価格などの有益な情報を提供できるようにしてゆきたいと考えている。

《ケニー中嶋》

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