【伊東大厚のトラフィック計量学】政策的位置づけと緊急通報…救急と事故 その2

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一刻を争う重篤患者の救急は、交通事故発生から現場到着までの時間短縮が重要だ。今回は、救命救急の政策上の位置づけを紹介するとともに、カーナビなどを活用した緊急通報システムが救急隊の到着時間の短縮にとって有効なことを示したい。

◆交通安全対策と救命救急

救命救急は、交通安全対策の中でどのような位置づけにあるのだろうか。政府の交通安全対策の枠組みは、「第8次交通安全基本計画」(計画期間:2006−10年度)に示されている。その中で、『救助・救急活動の充実』は8つある対策の柱のひとつになっている(表1)。

表1に示すとおり、救命救急施策は、現場での応急手当・処置を重視した内容となっている。AED(Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器)というコトバを聞いたことのある方もいらっしゃると思う。

◆IT戦略と緊急通報

情報技術の活用という観点ではどうか。政府のIT戦略指針「IT新改革戦略」をブレークダウンした「重点計画--2007」では、『交通事故発生時の位置情報共有システムの整備』が主要施策に掲げられている。

携帯電話は固定電話と異なり位置特定が困難だ。『位置情報の共有』とは、携帯から緊急通報する際の位置特定に要するタイムロスを防ぐための対策だ。携帯からの110番通報は既に6割を超えている。07年4月以降、新規に販売される携帯電話は原則GPS付きとされ、携帯からの緊急通報の際、警察・消防に位置情報を通知する仕組みも整備されはじめた。

東京消防庁の03年実績では、通報後、救急隊が現場に到着するまで平均6.4分かかっており、過去10年で1分以上遅延している。救急隊が常時繁忙状態にあることが主な要因だが、携帯からの通報増加によるタイムロスも一因であることは間違いない(図1)。

◆民間が先行する緊急通報サービス

緊急通報は、既に民間によるサービスが導入されている。日本緊急通報サービス(HELPNET)の場合、カーナビやテレマティクス、GPS携帯を活用し、簡単なボタン操作によって現場位置やあらかじめ登録された車両情報が瞬時に通報される。オペレータが会話をリードしつつ通報者から情報を収集し、状況に応じて警察や救急への出動要請を行なう(図2)。

システム導入後、通報までのタイムラグは8.6分から2分に短縮されており、現場到着までの時間短縮効果は極めて大きい。なお図では考慮していないが、出動要請時には既に位置特定がなされており、現場到着までの時間短縮も期待できる。警察や救急の側にも余裕が生まれるはずだ(図3)。

また、緊急通報は自分自身のためだけではない。ほとんどの方が事故現場に居合わせた経験があるだろう。市民による応急手当が重要なことは言うまでもないが、緊急通報は、よりハードルの低い“市民による救急活動”といえる。早期の普及を望みたい。

《伊東大厚》

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