【池原照雄の単眼複眼】スズキ減産で軽市場に一大転機

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秋口から「実需」ベースの巡航速度へ

快走してきた軽自動車販売が転機を迎えそうだ。最大手のスズキが今年度および2007年度の軽自動車生産を削減する方針を打ち出し、業界に大きな波紋を投じている。

これより先、2位ダイハツ工業の7月軽販売は、前年同月比2ケタの落ち込みとなった。利益の細る消耗戦から距離を置く作戦に出たように見える。空前のペースで年200万台に届く勢いの軽市場だが、秋口から「実需」ベースの巡航速度となりそうだ。

軽の新車販売は、不振の登録車を尻目に7月まで7カ月連続でプラス。1月から同月までの累計では前年実績を4.5%上回っており、ここまでは3年連続の最高更新が確実な展開となっている。

◆トップは「天下の回りもの」

ただ、トップ争いによる加熱感は否めない。販売店の名義で新規の届け出を行う「作られた市場」と指摘する声も、営業の最前線からは聞こえてくる。スズキの鈴木修会長も、軽の減産を明らかにした会見で「ダイハツさんとの競争で市場が荒れている」と、シェア争いの弊害を率直に認めている。

同社は小型登録車の受注が内外で好調に推移、このままだと商機を逸するという事情もあって、06年度の国内軽生産を前年度に比べ3万台減産することを決めた。さらに07年度も今年度より3万台少ないレベルに落とし、2年で合計9万台の小型車増産に振り向ける。

鈴木会長は、トップの座は「天下の回りもの」とも発言している。そのまま鵜呑みにはできそうもないが、長年こだわってきた「一番」に鷹揚な姿勢を示す。これ以上に市場が拡大すると、登録車との格差が大きい税制への影響に警戒も必要だ。

◆ダイハツはすでに消耗戦から身を引いた?

販売増とは裏腹に商売の中身が深刻なのはダイハツも同じ。箕浦輝幸社長は6月に『ソニカ』を発表した際、筆者に今後の軽販売は「収益重視で臨む」と明言していた。海外展開で遅れを取っているだけに、その設備資金のためにも「国内で収益をきちんと確保しなければならない」(箕浦社長)事情がある。

箕浦社長も鈴木会長同様、国内限定のマーケットである「軽」に固執するのでなく視点はグローバルに向いている。ダイハツの7月の軽販売は、新車投入後にも拘わらず前年実績を10%下回った。スズキの減産表明より前に、消耗戦から一歩身を引いた形だ。

原材料費の高騰も、もともと原価を徹底して切り詰めている軽の収益悪化に作用している。かといって競争激化から「値上げ」できる環境にはない。ツマ先立ちの軽市場も限界が見えていた。今月の新車統計には、実需見合いの数字が表れることになろう。

《池原照雄》

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