本田技術研究所の子会社で先端分野の研究を手がけるホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン(HRI)は国際電気通信基礎研究所(ATR)と共同で、新しいブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)技術の開発に成功したと発表した。
BMIとは、脳(ブレイン)と機械(マシン)の間を取り持つインターフェイスのこと。クルマをはじめ、モノを操作するタイプの商品では、マン・マシン・インターフェイスという言葉がよく使われる。ごく簡単に言えば、人間がクルマを任意の方向に旋回させる場合、ステアリングを操作して前輪の角度を変えるなど、人間の動作を機械の動作に反映させる入力装置のことである。
BMIはそのマン・マシン・インターフェイスの発展型で、人間の考えを脳から直接読み取り、機械操作のためのコマンドにするというもの。超未来技術という印象だが、ATRの川人光男所長は「脳というと基礎研究という色合いが強いのですが、ここ5年ほど、生活への応用研究がかなり活発になっています。多くの方々に、ヒューマンインターフェースを根本から変えるBMIへの関心を持っていただければと思っています」と、BMIの研究が、実用化を視野に入れた段階に入っていることを示した。
HRIの川鍋智彦社長は、「二足歩行ロボット『ASIMO』(アシモ)は走ることもできるなど、身体能力は高いレベルになった。が、役に立つロボットというレベルのものにするには、人と共存できるだけの脳機能を持たせる必要がある。将来的には私の分身でASIMOが動いてくれるといったことを実現させたい」と語り、BMI技術のさらなる進展に意欲を見せた。
技術発表は3月18日から5月31日まで、東京・お台場の日本科学未来館で開催された特別企画展「脳! 内なる不思議の世界へ」に合わせる形で行われた。日本の脳科学研究への支援体制は、最先端を走るアメリカをはじめ、他の先進国に比べるとかなりの遅れようで、人材も決して豊富とは言えない状況だ。ATR、HRIのように、研究成果を世間にわかりやすい形で発表していくのは、脳科学研究分野の活性化の面でもきわめて意義深い。