【池原照雄の単眼複眼】富士重のトヨタ子会社化、意外と早い?

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共同開発まで踏み込む破格の提示

最近知り合った友人の家に遊びに行き、お茶をご馳走になった。両親から気に入られ、「晩御飯も食べて行きなさい。何なら泊まってもいいよ」と歓待を受けた---富士重工業の竹中恭二社長は、こんな心境ではないか。13日発表されたトヨタ自動車と富士重工の提携合意内容は、事前に想定されていた以上に両者の急接近を示すものとなった。

合意のうち富士重工米工場(SIA)への『カムリ』生産委託やハイブリッド車開発の協力は、想定内のプロジェクト。注目されたのはトヨタ車の開発委託、さらに「中長期的な検討」項目としながらも商品の共同開発にまで踏み込んだことだ。

資本提携してわずか5カ月。しかも出資比率は8.7%と、まだ希薄な関係の相手にしては破格の提示と言える。ビジネスとしても富士重工が得るものは大きい。SIAでのカムリ生産には270億円の新規投資と1000人分の人件費が発生するものの、売上高ベースでは年2500億円から3000億円の増収効果を生み出す。

◆トヨタにも成果を急ぎたい事情

兵たん線が伸びきったトヨタにも提携の成果を急がねばならない事情はある。当コラムの1回目「トヨタ、米現地生産急落とその先」(1月25日)で指摘したように、トヨタの米国販売に占める北米生産車の比率は今年50%台半ばまで低下する。

「需要地での生産を基本」(渡辺捷昭社長)としながら、販売が好調なため供給力整備が後手に回っている。短期間での立ち上げが可能なSIAの活用は極めて効果的なのだ。トヨタ車の開発委託についても「開発部門の慢性的な工数不足」(トヨタ幹部)に即効的な補填が期待できる。

◆「身震いする思い」で「考査」に臨む

生産と一部モデルの開発委託によって富士重工は、トヨタ車体などのグループのボディメーカーと同列の扱いとなる。さらに商品の共同開発が加わるとダイハツ工業や日野自動車並みの「処遇」ということになる。「水平対向エンジンや4WD技術は学ばなければならない」(豊田章一郎名誉会長)というのは、単なる外交辞令にとどまるものではなさそうだ。

ダイハツの場合、資本提携(1967年)から過半出資による連結子会社化(98年)まで30年余りを要したが、そんな悠長な時代でもない。もちろん、トヨタの増資はこれから進められる委託生産や開発という「考査」を富士重工がパスすることが条件となる。

13日の会見で竹中社長は「SIAでのトヨタ車生産には身震いするような思い」と、まさに考査に臨むような心境を語った。会見後に「これで名実ともにトヨタグループ入りという実感ですか」と水を向けると、「受託生産などを通じて徐々に一体感は高まるでしょう」とうまくかわされた。ただし、ぶしつけな問いかけにも不快感は微塵も見せなかった。

《池原照雄》

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