【Honda 0 シリーズ】「薄くて軽いBEVを」ホンダのクルマづくりを再定義したゼロの意味

ホンダ 0 サルーン
  • ホンダ 0 サルーン
  • ホンダ0シリーズ開発責任者の中野弘二さん
  • ホンダ 0 サルーン
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  • ホンダ 0 サルーン
  • ホンダ 0 スペースハブ
  • ホンダ0シリーズのチーフエンジニアデザイナー清水陽祐さん(左)と開発責任者の中野弘二さん(右)

ホンダは2026年より北米を皮切りに新たなEV、『Honda 0シリーズ』(ホンダ・ゼロシリーズ)を世界展開する。この0シリーズは新たなEVシリーズと位置付けられるというが、具体的に他のBEVと何が違うのか。また、『サルーン』と『スペースハブ』というコンセプトモデルをはじめに公開した理由は何か。開発責任者に話を聞いた。

◆薄くて軽いBEVをつくる

ホンダ0シリーズ開発責任者の中野弘二さんホンダ0シリーズ開発責任者の中野弘二さん

そもそもこの「0シリーズ」とは何なのか。本田技研工業 電動事業開発本部 BEV開発センター BEV完成車統括部 BEV商品企画部部長の中野弘二さんは、「まずホンダのBEVを一からきちんと作り直そうという思想です」という。これまでもホンダにはBEVはあったが、「いままでの延長線上ではないものです。分厚くて重たいという(BEVの)世界観からなかなか抜け出せなかったので、まずはBEVで薄くて軽いものをどう作るのか、というところがスタート。薄くて軽いと動力性能だけでなく、電費性能なども含めて、クルマの基本的なものが全てプラス方向に行くわけです。それをいかにBEVで実現していくかを再度定義したのが0シリーズです」と説明。

それに加えて、「ホンダが得意とするADASの領域、それからソフトウェアでのアップデータブルなクルマをその上に価値観として乗せて作っていますので、『ホンダe』や『クラリティ』の系譜ではなく、まさにゼロから作り直したクルマです」と述べた。

2026年から0というブランドがスタートするわけだが、間もなく『N-VAN』をベースにした商用EVバン『N-VAN e:』がデビューする。これは0シリーズに含まれないのか。中野さんは、「0シリーズはBEV専用プラットフォームを使用して2026年から展開していきます。いずれこちらにすべて統合していく形になっています」と話しN-VAN e:はBEV専用プラットフォームでないことから、0シリーズには含まれないと明言した。

◆ICEから乗り換えても満足できる走り

ホンダ 0 サルーンホンダ 0 サルーン

では0というブランドのターゲットはどういった人たちなのか。中野さんは、「全てのお客様に向けて」という。「BEVはICEに比べると重くて分厚い、そしてバッテリーをたくさん積むので、背が高くなるという状況から逸脱させていきたいというのが0シリーズの目指すもの。そうすることでいまのモビリティが好きなお客様、それはホンダのお客様だけではなくて、全てのお客様に対して提供価値の高いモビリティを我々は提供できると考えています」とコメント。その提供価値とは、共鳴を呼ぶ芸術的なデザイン、安全・安心のAS/ADAS、IoT・コネクテッドによる新たな空間価値、人車一体の操る喜び、高い電費性能だ。

一方、デザイン領域においては少し異なっている。本田技術研究所 デザインセンター e-モビリティデザイン開発室 プロダクトデザインスタジオ チーフエンジニアデザイナーの清水陽祐さんは、「Thin, Light, and, Wiseの思想やMM思想に共感してもらえたり、BEVの楽しさを感じたり、あるいは他とちょっと違うものが欲しいという方は多分一定数いらっしゃると思うんです。そこにしっかりと合理性のある機能があって、スタイリングが特徴的で独創的でという商品を選んでいただけるようなお客様に向けてデザインしています」とし、「普通のクルマを他社と同じように作っていると、当然他社も非常に素晴らしいクルマがたくさん出てきていますので、違いはかなり意識してデザインしていますし、技術だけでなく個々のプロダクトも含めてシリーズ全体でホンダの新しい0シリーズとしてブランディングしていきたいと考えています」と語る。

ホンダ 0 スペースハブホンダ 0 スペースハブ

ではICEとの差別化はどうか。それほど意識はしていないと中野さんはいう。「BEVはデジタルサービスとのマッチングが非常に高いですし、どんどんソフトウェアもアップデートする。長く乗っていただけるクルマになるでしょう。それが環境性能としてもしっかり保てるBEVになることで価値が出てくると思っています。もちろん土台となる走りの領域はICEからの進化になると思いますが、それ以外の環境性能とさらなるソフトウェアでのマッチング性能がBEVとしての新しい価値につながると思っています」と述べた。

土台となる走りの領域はどう進化するのか。「ICEから来ていただけるホンダのお客様に対しても、落胆させないどころかこっちの方がすごいね、といわれるような思想をもとにダイナミック性能を作っています」とのことだった。

◆広がっていく0シリーズ

ホンダ 0 スペースハブホンダ 0 スペースハブ

次世代のセダンである「サルーン」と、次世代のミニバンである「スペースハブ」が今回、0シリーズとして初めて公開された。なぜこの2つのボディタイプを選んだのか。中野さんは、「コンセプトなので薄く軽く、賢いという開発の方向性と、全く新しいデザインというホンダが持つBEVのコンセプトを目いっぱい体現する2台として出しています」と説明。

「薄くて軽い、低全高なクルマながら、薄いプラットフォームをベースにこれだけの新しい空間価値を提供できるスペース性というコンセプトが最も表現出来ているのがこの2台で、0シリーズというものをしっかりお伝えできるという観点で選んでいます。なので、0シリーズイコールこの2台というわけではありません。あくまでもコンセプトモデルですから、ここから市場を見ながら、お客様に対してベストな車型なりラインナップを組んでいきます」と話す。つまり、今後はSUVやハッチバック、軽まで広がるかもしれないということだ。

ホンダは2030年にグローバルでEVの年間生産台数を200万台にすると掲げており、それはこの2台だけで達成できるほど簡単なものではない。0の可能性はまだまだ未知数だ。

ホンダ0シリーズのチーフエンジニアデザイナー清水陽祐さん(左)と開発責任者の中野弘二さん(右)ホンダ0シリーズのチーフエンジニアデザイナー清水陽祐さん(左)と開発責任者の中野弘二さん(右)
《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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