多くの声が届けば日本導入も!? ボディ交換のトヨタ『IMV 0』…ジャパンモビリティショー2023

トヨタ IMV0
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トヨタ自動車ジャパンモビリティショー2023に、ハードウェアの拡張性で“自分らしさ”を叶えていくひとつの提案として『ハイラックス』をベースにした『IMV 0』(アイエムブイゼロ)コンセプトを出展。量産仕様は間もなくアジア地域での発売が予定されているという。

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◆みんなでつくるモビリティの未来

ユーザーのニーズ次第で、自由自在にカタチを変えていくというIMV 0。例えば、「畑で収穫した野菜や果物をたくさん運んで街に到着したら、直売所に早変わり。街の広場では、コーヒーショップや、フードトラックになったり、夜にはバーになったり、DJブースにもなる。間もなく発売するアジアでは、既に様々なカスタマイズのアイディアが提案されている」と紹介するのは、トヨタ取締役社長の佐藤恒治氏だ。

そうすることで、「ユニークで多様なクルマが社会に溶け込んでいく。クルマがプラットフォームとなり、お客様自身が価値を拡張していく。バリューチェーンの新しいビジネスの可能性も、新しい仲間も増えていく。IMV 0で目指しているのは、まさに、“みんなでつくる”モビリティの未来」だという。

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◆生活の糧として、休日にはレジャーにも使えるクルマ

ここからはIMV 0のデザインを担当した、トヨタデザイン部の長谷川和也さんにそのこだわりを聞いてみたい。

トヨタデザイン部の長谷川和也さんトヨタデザイン部の長谷川和也さん

----:この車はまだ市販化されていないですよね。

長谷川:まだされていません。去年12月にタイで豊田章男会長がタイトヨタ設立60周年記念のイベントでコンセプトモデルを発表してからもうすぐ1年で、この時はデザインモデルだったんですが、今回は本当に走るクルマで、生産化直前の状態です。

----:では、このクルマのコンセプトから教えてください。

長谷川:もともと新興国の方々に提供してきた『キジャン』や『ハイラックス』など、皆さんの生活の糧にしていただくクルマがありますが、改めて全ての人に提供できるクルマとして、価格を安くして、サイズもなるべく小さくして、かつそれぞれの方の生活に合った架装をしやすくすることで、少しでも商売で儲けていただきやすいクルマを目指しています。

実は、そういうお仕事の方々の多くは、価格が高くてハイラックスも買えないんですね、それで仕方なく中古車などを使っているんですけど、どうしても故障しがちで、そうなるとその間商売できなくなり、収入が減るという悪循環になってしまうんです。

そこでハイラックスベースのQDR(Quality, Durability and Reliability 品質、耐久性、信頼性)の高い壊れないクルマを使って、さらに傷つきやすい外装パーツは簡単に外から変えられるように締結を外に出しました。例えばバンパーは3ピースにすることで、交換を容易にしたうえで、機能的におしゃれに見せています。そうすると交換時間が短くなりますので、その分商売する時間が増えます。そのようなところを散りばめてこのクルマを作っています。

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----:まさに機能性重視ですね。

長谷川:もちろんそうではありますが、クルマとしての愛嬌も大事なんですね。そういう方たちは、仕事だけではなくて、休日は遊びも使うんですね。ですからキャンピングシーンやいろんな遊びにも使える、両方使えるクルマが狙いです。

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なのでモビリティの拡張性のポテンシャルがすごくあるクルマだと思っていますので、日本で拡張性を考えたらどうなるのかというのが今回の展示の目玉になっています。

◆鉛筆の六角形をモチーフに

----:凄くシンプルにデザインしたのが伝わって来ます。

長谷川:それもまさに狙いの通りです。ただ、いろんな架装ができるので、どんな架装をしても似合うスタイリングにしたかったということもあります。ですので、バンパーやフェンダーなどはブロックの塊というか、モチーフとしては六角形なんですが、そういうツールライクなイメージのものの組み合わせでできているように作ってあります。

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----:先ほど商売だけではなくて様々なシーンでも使われるので、両立するデザインとお話されました。その辺りもう少しご説明いただけますか。

長谷川:今回出展しているのはハロゲンヘッドランプの一番安い仕様です。ワークホースとしては一番ポピュラーな仕様ですが、遊びにも使うよとなるとLEDヘッドランプでアイコン性の高いスタイリングを組み合わせられたり、(ライトの下あたりに)外板色のバーを通したりすることも出来ます。

また、ヘッドランプ周りをひとつに括ることによって、そこに機能的な意味と目つきの個性みたいなところを表現しています。また、フェンダーからつながる鉛筆の断面みたいなモチーフが水平的に回っていくようなイメージにより、機能的な格好良さ、ファンクショナルな格好良さを、プロツール感として表現しているところもポイントになっています。

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さらに全てのパーツに何らかの機能を表現した“ツール感”を出したかったので、バンパーからフェンダーの黒い部分はプロテクション機能があるように見せ、ヘッドランプも高い位置に置いて、周りを樹脂で囲うことによって傷つきにくくしました。ターンランプも外にボルトが入っていて、そのボルト1本で取り替えられる交換性を高くもしています。ではキャビンはどうかというと、キャビンは人を守ることが基本ですよね。そこでこれも六角形の造形をモチーフにしながら、フレームで囲った格好良さと乗員保護の剛性感みたいなものを表現しています。つまりロールケージですね。

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----:ドア部分をあえてちょっとえぐったのは剛性を出すためですか。

長谷川:実はいろいろなところにアイテムが仕込まれています。例えば、このドアがへこんでいるところには何かインストールができますよね。出っ張っているところがあればフックとか付けられます。ボンネットのちょっとへこんでるところもそういう意図なんです。

あとはウインドウ下端の造形も、肩口はプロテクトした方が良いのに対し、その前は視界の関係でなるべく下げた方が良いなど全ての造形を何らかの機能に結びつけて考えています。

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◆オーバーヘッドコンソールとAピラー

----:インテリアについても教えてください。

長谷川:内装も外形と同じようになるべく水平基調にしています。ですので、インパネも横基調をパーンと通して、それが“水平棚”になっています。その上にいろんなものを載せられる状態になっていますし、実際のカスタマイズもできるように、簡単にガーニッシュが取れるようになっています。これを外すことで別のカスタマイズした製品に簡単に取り替えられることも考えているのです。

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また、Aピラーも通常ですと視界とかの要件で決めるのですが、今回のこだわりは、そこにプラスして室内にオーバーヘッドコンソールを付けるスペースが欲しかったんです。商売されている方はどこの国で見ても、ダッシュボードに伝票とか並んでいて散らかってるでしょう。あれをなんとかしてあげたいという思いで、オーバーヘッドコンソールを付けたらそこに全部入れられるだろうと考えました。そうするとそのスペースを作らなければいけませんので、Aピラーを立てることで確保したというロジックなんです。

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その代わり割り切ってAピラーガーニッシュはありませんし、インストールしやすいようにボルト穴も付けたまんまです。あとは好きに利用してくださいという箇所があちこちにあります。

----:まさにすごく拡張性が高いのですね。

長谷川:そうですね。ルーフラックも簡単にインストールできますし、背面にもいろんなものが付けられるように(ボルト穴が)用意してあります。

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もう一つこだわりをお話しましょう。ポール型のアンテナを採用しました。通常のアンテナはAピラーに添わせるような形が多く見られます。これは手が届くから楽ということなんですが、この車の場合、ルーフにもいろんなものを積んだりするでしょうから、そうすると邪魔になるんです。そこで設計にフェンダーに垂直で立ててください、Aピラーには沿わせないでくださいとお願いして、このようにしたのです。

◆日本への導入は未定だが

----:ボディサイズが現行のハイラックス(全長5340mm、全幅1855mm、全高1800mm Zグレード)よりも小さいというのも魅力ですね。今回のコンセプトモデルで発表されたサイズは全長5300mm、全幅1785mm、全高1740mmです。

長谷川:はい、プラットフォームはハイラックスなんですけど、いろんなところをなるべく切り詰めて、なるべく小さくしたかったんです。バンパーコーナーも切り詰めて最小回転半径を少しでも小さくとこだわりました。キャビンもヒールポイントとヒップポイントを少しアップライト気味にすることで、その分だけ人が前に出すことができます。そうすると、後ろの荷台のスペースを大きくすることができますので例えばキャンピングカーを作る方がいたら、ベッドを広くすることができるわけです。全幅もなんとか頑張って1800mmを切るところまでいけそうです。

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----:最後に気になったのですが、メーターにハイラックスと書いてありますが。

長谷川:基本はハイラックスです。名字がハイラックスで名前がそれぞれの現地で変わってくるイメージです。いままで各地で愛着を持っていただいた名前、インドネシアでは『ランガ』など、それぞれの国にふさわしいセカンドネームをメインにして、ハイラックスの兄弟だとわかってもらえるようにしていく予定です。

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----:日本への導入予定はないのでしょうか。

長谷川:多くの方に応援していただければ、日本でも売ろうという話になると信じていますので、ぜひ応援をよろしくお願いします。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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