ヴァレオが示す、ADASにおけるSDVとソフトウェアへの取り組み…LiDARでの豊富な実績活かす

常に業界の先鞭を付けてきたADASの歴史

SDVに向け体制を強化

今後は“Software Defined Company ”へ

電子部品に対する豊富な経験、半導体メーカーとも強いつながり

LiDARでの実績が独自の価値を生み出す

ヴァレオのSDVに対する取り組みについて説明するヴァレオジャパン コンフォート&ドライビングアシスタンスシステムR&Dダイレクターの伊藤善仁氏
  • ヴァレオのSDVに対する取り組みについて説明するヴァレオジャパン コンフォート&ドライビングアシスタンスシステムR&Dダイレクターの伊藤善仁氏
  • 「ADASの加速  /SDVとソフトウェアへの取り組み」と題して開催されたヴァレオのメディアブリーフィング
  • ヴァレオのADASにおける進化の歩み
  • ヴァレオのセンサーは車両の周囲を360度にわたってカバー
  • 10年後のADAS市場を展望した図
  • すべてのテクノロジーにソフトウェアが組み込まれる時代へとなり、クルマを取り巻く環境は大きく変化している
  • 自動運転レベル3がスタートし、その分野でヴァレオは大きな役割を果たしている
  • アーキテクチャーは従来の分散型から集中型へと変化しつつある

ヴァレオジャパンは10月5日、「ADASの加速 /SDVとソフトウェアへの取り組み」と題してメディアブリーフィングを開催した。登壇者はヴァレオジャパン コンフォート&ドライビングアシスタンスシステムR&Dダイレクターの伊藤善仁氏。

◆常に業界の先鞭を付けてきたADASの歴史

まず、伊藤氏はヴァレオがADASに関わり始めた歴史を振り返った。

それによると、それは1991年の「ウルトラソニック・パーキングエイド」と呼ばれる駐車支援のための超音波センサーが最初となる。その後、ヴァレオはカメラやレーダーなどを開発し、そして2017年に投入した3D-LiDAR(SCALA)はアウディ車にも採用されるなどして、多くの分野で業界の先鞭をつけてきた。

中でも超音波センサーは今もなおグローバルで40%以上のシェアを獲得したヒット製品だ。特に欧米での需要は高く、今ではほとんどの車種に標準装備されるまでになっている。しかも、最近はその単純なセンシングを行う超音波センサーを、ECUでの処理にAIを活用してパフォーマンスを一段と高めるまでに進化しているそうだ。

ヴァレオのADASにおける進化の歩み

そして、伊藤氏は10年後の乗用車におけるADAS市場にも言及した。

それによると100%装着が予想されるのが、超音波センサー&カメラを使用した「駐車支援システム」と、フロントカメラが中心となる「アクティブセーフティ」。次にドライバーが責任を持ち、システムがそれをサポートする自動運転「レベル2/レベル2+」は各国の「NCAP」で設定される可能性が高く、そのあと押しを受けて60%ほどの普及率には到達できるのではないかとみる。一方で自動運転の「レベル3/レベル4」については5~10%程度にとどまると予測した。

10年後のADAS市場を展望した図

◆SDVに向け体制を強化

こうした状況を踏まえ、伊藤氏が自動車業界の大きな流れとして次に挙げたのが「電動化」「自動運転」「ソフトウェア」の3つのテーマだ。

中でもこれから先、重要度を高めてくるのがソフトウェアで、「クルマがどんなアプリケーションをユーザーが使うか、そこに価値を見出す時代になってくる。それが『SDV(Software Defined Vehicle=ソフトウェア定義型自動車)』である」(伊藤氏)と説明した。

たとえば、クルマで使われるエレクトロニクス系のアーキテクチャーの変化によってソフトウェアの重要性は増しており、センシングにしてもその結果をどう使うか、もしくはECUの能力で以下に正しいセンシングをするかもソフトウェアによって決まってくる。また、クルマとクラウドが通信することで、そこで得たビッグデータの価値がどんどん高まっていく点も見逃せない。

そして、「コンピューティング・ビジョン」では画像認識をどううまく使っていくか、その処理のためにもソフトウェアの重要度は増してきている。

ここで注目すべきは、自動車メーカーが相次いで世にデビューさせた自動運転「レベル3」の実現に、ヴァレオが大きく関わっていたことだ。たとえば世界初のレベル3走行を型式認定されたホンダ『レジェンド』では第1世代のヴァレオ製LiDARが使われたし、第2世代LiDARもメルセデスやヒョンデで使われ、開発中の第3世代LiDARは2024年に登場するステランティスの車両に搭載されることが公表されている。

クルマの中のE/Eアーキテクチャも大きな変革期を迎えている。これまでは一つのECUといくつかのセンサー、アクチュエーターがそれぞれがつながっていた。それが今後はパワートレインやADAS、シャシー、インフォテイメント等々が、それぞれ大きな機能ごとに集約したECUを中央のゲートウェイでつなげる「ドメイン化」が図られていく状況にあるという。

そして、伊藤氏は「2030年を超える頃には“セントラル&ゾーン化”が進み、機能をすべて集約した一つの大型コンピューターによってすべてを考えるというものになる」と今後を展望した。

アーキテクチャーは従来の分散型から集中型へと変化しつつある

◆今後は“Software Defined Company ”へ

では、クルマの中では今、どんな変化が起きているのか。それはソフトウェアのアップデートによって新たな体験が可能になり、そこに価値が見出されるようになるということだ。これがまさにSDVならではのスタイルとなる。

ユーザーは基本的に最新の機能を常に求めたがる。たとえばクルマが10年使われるとしたら、その10年の間に最新の機能にアップデートするとか、最新のデジタルエクスペリエンスに対応するとか、あるいは共通化するところをオープン化してアップデートできるようにすることが求めるだろう。また、テスラがすでに行っているように、SDVではお金を支払うことで新たな機能が体験できるようになっていくことも想定される。

こうした状況を踏まえて伊藤氏は、「従来はカーメーカーに対して、ソフトウェアを含めたハードウェアで販売してきたが、これからはソフトウェアだけを販売するスタイル変わっていく。今やクルマの価値の30%はソフトウェアで決まる時代となった。ヴァレオとしても“Software Defined Company”へと転換していくことを目指す」と説明した。


《会田肇》

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