空飛ぶクルマ実用化に向けて、開発のカギとなる「材料と接合技術」

第13回 高機能素材Weekにおいて開催された「新世代エアモビリティ向け材料・接合技術と普及に向けて」シンポジウム
  • 第13回 高機能素材Weekにおいて開催された「新世代エアモビリティ向け材料・接合技術と普及に向けて」シンポジウム
  • 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 付属研究所の中野 冠 顧問(「新世代エアモビリティ向け材料・接合技術と普及に向けて」)
  • 帝人 複合成形材料事業本部の北野一朗 副本部長(「新世代エアモビリティ向け材料・接合技術と普及に向けて」)
  • スバル 航空宇宙カンパニー 技術開発センター長 兼 研究部/回転翼機設計部の東稔(とね)俊史 部長(「新世代エアモビリティ向け材料・接合技術と普及に向けて」)
  • モデレータとして参加した東京工業大学 科学技術創成研究院未来産業技術研究所の佐藤千明教授(「新世代エアモビリティ向け材料・接合技術と普及に向けて」)
  • 2022年12月に幕張メッセで開催された「第13回 高機能新素材Week」

カーボンニュートラルへの取り組みや自動運転、空飛ぶクルマなど次世代モビリティの開発・実用化を支えようとしているのが材料技術だ。そのシンポジウム「新世代エアモビリティ向け材料・接合技術と普及に向けて」が第13回 高機能素材Weekにおいて開催された。

壇上でシンポジウムに参加したパネリストは、東京工業大学 科学技術創成研究院未来産業技術研究所の佐藤千明教授をモデレータとして、帝人から複合成形材料事業本部の北野一朗 副本部長、スバルからは航空宇宙カンパニー 技術開発センター長 兼 研究部/回転翼機設計部の東稔(とね)俊史 部長、さらに空飛ぶクルマ普及研究に携わる慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 付属研究所の中野 冠 顧問の4名。

会場にはおよそ200名ほどの聴衆が集まり、ほぼ満席の状態。空飛ぶクルマへの関心度の高さがうかがわれた。

◆空飛ぶクルマの普及率は2050年代に6000万台以上

シンポジウムではまず、中野氏より空飛ぶクルマが持つ課題について説明があった。それによると、「eVTOL(電動垂直離着陸機)は新しいカテゴリーということで、まだ社会に定着していない。そこで安全性とバッテリーの性能向上&軽量化に対する課題がある」とし、次に「ヘリコプターと共通の課題として、気象条件に左右されない飛行、騒音の低減、サイバーセキュリティ&テロ対策、空飛ぶクルマの普及に向けた航空法の改正がある」と述べ、特に「空飛ぶクルマがヘリと同じ航空法では事業を展開する上で支障が出るため、目下、国土交通省が改正案の作成に取り組んでいる」ところだという。

機体の軽量化も大きな課題とし、「中でも電動化で飛行するeVTOLにとって、モーターの出力密度はここ10年で倍になっているためそれほど心配していない。しかし、バッテリーについてはエネルギー密度を高める必要がある」とした。また、運行コストについては「2040年頃には自動運転が可能となり、バッテリーの持ちも良くなっていると予想。現在は5人乗りで2億5000万円ぐらいするが、この頃には2500万円へと約10分の1になることが期待されている」という。この結果、普及率は2050年代には6000万台以上になると予測されているそうだ(資料:ルフトハンザ航空)。

◆プレス成型が可能な“CFRTP”で複合成型素材の量産化を実現

材料提供の立場からは、帝人の北野氏が空飛ぶクルマに使われる炭素系の複合成型素材について説明した。「この素材の特徴としてあるのが、熱可塑複合材料として高い生産性や高い機械特性、科学的安定性があることに加え、リサイクルについてもきわめて有効であるということ。これが評価され、エアバス社のA350XWBのクリップやブラケット部品に採用されている」という。 ただ「自動車へも採用されているが、そのコストや生産性で問題があるために、現状では台数が少ないところで使われている段階」とも述べた。


《会田肇》

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