航続500kmの電気トラック『eアクトロス ロングホール』は、長距離輸送の可能性に火をつけるか?…IAAトランスポーテーション2022

メルセデスベンツトラックの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』(IAAトランスポーテーション2022)
  • メルセデスベンツトラックの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』(IAAトランスポーテーション2022)
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ダイムラートラックは、ドイツ・ハノーバーで19日に開幕する商用車の見本市「IAAトランスポーテーション2022」に先駆け18日、長距離輸送向けの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』を世界初公開した。大容量のバッテリーを搭載し、1回の充電で約500kmの航続が可能。長距離輸送は苦手とされてきたBEV(バッテリー式電気自動車)の新たな可能性を提案する。

長距離トラックの次の可能性に火をつけるか

メルセデストラックの『eアクトロス300』(IAAトランスポーテーション2022)メルセデストラックの『eアクトロス300』(IAAトランスポーテーション2022)

積載量、距離、ルートの点から、大型トラックによる長距離輸送は、道路貨物輸送の中で最も要求の厳しいセグメントとされてきた。実際、ダイムラートラックは長距離での重量物輸送は水素を燃料とするFCV(燃料電池車)をメインとして掲げているが、「ここにはCO2排出量削減のための大きな可能性がある」ことからバッテリー駆動による長距離輸送トラックの「次の可能性に火をつける」として前向きな姿勢を見せている。

『eアクトロス(eActros)』シリーズとしてはこれまで『eアクトロス300』と『eアクトロス400』を市場投入。112kWhの容量を持つバッテリーパックを3つまたは4つ搭載し、その名の通りそれぞれ300km、400kmの航続距離を実現している。今回初公開となった「eアクトロス ロングホール(eActros LongHaul)」は、3つのバッテリーパックで合計600kWh以上の容量を実現。2つの電気モーターは連続出力400kW、ピーク出力600kW超を発生しながら、およそ500kmの航続距離を実現するという。

メルセデスベンツトラックの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』(IAAトランスポーテーション2022)メルセデスベンツトラックの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』(IAAトランスポーテーション2022)

eアクトロス ロングホールに搭載されるバッテリーはリン酸鉄リチウム電池(LFP)。長寿命で、より多くのエネルギーを使用できることが最大の特徴だという。約1メガワットの出力を持つ充電ステーションで、30分以内に20%から80%まで充電することが可能だ。

また、従来の大型長距離輸送トラック『アクトロス』と同等の耐久性要件を満たすように設計されており、10年間で120万kmを走行できるものになるという。

最初の試作車両(プロトタイプ)はすでに試験がおこなわれており、2022年内に公道での試験をおこなう予定。2023年には実際に顧客のもとで、量産型に近いプロトタイプでの実用供試をおこなうとしている。量産車の市場投入は2024年と見られており、今回公開されたプロトタイプのデザインは、「量産車のデザイン言語を予見させるもの」だと説明する。

メルセデスベンツトラックの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』(IAAトランスポーテーション2022)メルセデスベンツトラックの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』(IAAトランスポーテーション2022)

「eトレーラー」を組み合わせることで航続800kmも

電気トラック業界では、牽引するトレーラーの電動化も進められている。トレーラーを電動化することで、電気トラックの航続距離をさらに伸ばすことが可能だという。ダイムラートラックが例として挙げたのは、技術系企業のトレーラー・ダイナミクス社がトレーラーメーカーのクローネ社と共同で開発した「eトレーラー(eTrailer)」だ。トレーラー側にもバッテリーとeアクセルを組み込むことで、牽引する電気トラックの駆動をアシストする。

eトレーラーのバッテリー容量にもよるが、eアクトロス ロングホールの量産型と組み合わせることで、1回の充電で800km以上の航続距離を実現することが可能だという。

「長距離トラック輸送における高性能充電」プロジェクト

メルセデスベンツトラックの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』(IAAトランスポーテーション2022)メルセデスベンツトラックの電気大型トラック『eアクトロス ロングホール』(IAAトランスポーテーション2022)

長距離輸送の電気トラックにおけるコンセプトの中核は、車両の技術だけでなく、「コンサルティング、充電インフラ、サービスからなる総合的なソリューションの提供であり、eアクトロス ロングホールは収益性、持続可能性、信頼性の面でユーザーにとっての正しい選択になるよう計画されている」とダイムラートラックは説明する。

長距離輸送においては、公共の充電インフラの普及が民生用以上に不可欠となる。これについては、この7月にダイムラートラック、トラトングループ、ボルボグループの3社が7月に合弁会社を設立。欧州において、バッテリー駆動の大型トラックや客車向けに高性能の充電ポイントを設置・運営する計画を打ち出している。この充電ネットワークは、ブランドに関係なく、欧州のすべての大型商用車に開放される。

メルセデスベンツトラック 欧州・北米責任者のカリン・ラドストローム氏メルセデスベンツトラック 欧州・北米責任者のカリン・ラドストローム氏

さらに、ダイムラートラックは、「長距離トラック輸送における高性能充電」(HoLa)プロジェクトに参加している。このプロジェクトの目的は、VDAの支援のもと、バッテリーによる長距離トラック輸送のための厳選された高性能充電インフラの計画、建設、運用にある。高性能のメガワット充電システム(MCS)充電ポイント2基がドイツの4か所に設置され、実際の使用でテストされる予定だという。このプロジェクトには、他にも産業界や研究機関のさまざまなコンソーシアム・パートナーが参加している。

メルセデスベンツトラックのカリン・ラドストローム代表は、「私たちは、バッテリー式トラックのポートフォリオを継続的に拡大しています。私たちの焦点は、お客様に明確な利点を提供することです。したがって、私たちの電気トラックは、e-モビリティのために特別に設計されており、より優れたドライバビリティ、エネルギー効率、耐久性を備えています」と話した。

《宮崎壮人》

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