住友ゴム工業は1月9日、独ライプニッツ高分子研究所との共同研究により、ゴム破壊の元となる「ボイド」と呼ばれる空隙の発生からき裂発生までのメカニズムを解明し、その研究成果を発表した。
タイヤの摩耗現象の一因であるゴムの破壊は、ゴム内部の分子切断やボイド形成によるき裂の成長によるものと考えられていたが、明確には解明できていなかった。
今回の共同研究では、円板状の金属プレートと接着させた同形状の合成ゴム試験体を、金属プレート接触面の垂直方向に引っ張ることで、ゴム試験体を変形させた際の力と体積変化の関係を観察。また、ゴム試験体のCTにより、ゴム内部のボイドの成長を観察した。CTでゴム内部を観察した結果、ボイドの発生を確認した。さらに、合成ゴムの中でも充填剤ありの場合はシリカやカーボンブラックの凝集物間からゴムの破壊が発生し、充填剤なしの場合はゴム分子の滑りによるボイド形成からゴムの破壊が発生するといった、ボイド発生の経緯が異なることも明らかになった。
さらに、切り込みの入った平面な合成ゴム試験体を平面方向に引っ張った場合の切り込み部分について、X線小角散乱を用いてゴム内部のボイドの成長を観察。その結果、切り込み先端部分は、ボイドが多く発生し、他の部分よりゴム密度が低いことがわかった。これにより、平面なゴム試験体を平面方向に引っ張った場合、切り込み先端部分にボイドが存在すること、およびゴムの破断にはボイドが関与することが解明された。
今回の研究成果から、今までより破壊されにくいゴム、高い耐摩耗性能を持ったゴムの開発が期待される。住友ゴムでは、材料開発のスピードを高めて「性能が持続する」ゴム技術を確立し、高性能タイヤの開発につなげていく。