3月1日16時過ぎの小田急新宿駅地上2番ホーム。カメラやスマホを手にしたファミリーや鉄道好きが電車の入線を待っていた。出発表示は「16時30分発 はこね41号 箱根湯本行」。彼らが待ち構えていたのは、初めて営業運転に入る 30000形 EXEα だ(写真20枚)。
1996年から1999年にかけて7本(4+6両)が登場した30000形 EXE(Excellent Express、素敵で優秀な特急列車)は、小田急ロマンスカーのラインナップ中で、座席定員が最多の通勤通学・ビジネス移動に振ったモデル。これまで「ホームウェイ」(新宿~唐木田・片瀬江ノ島・箱根湯本)や「えのしま」(新宿~片瀬江ノ島)などをメインに走っていた。
「ロマンスカーらしくない」といわれていた30000形 EXEの第1編成(30251編成)を、登場から20年経った2016年にリニューアル。製造元の日本車輌製造で大規模更新工事を施し、外観、客室空間を一新。制御機器も最近のものに近づけた。同社公式動画チャンネルでは、30251編成の解体から換装、甲種輸送、試運転までを収録した2分半の映像を公開している。
100人を超える観客で混み合うホームで、小田急担当者は、この更新モデル30251編成についてこう伝えていた。
「もともとEXE(30000形)を指名買いするユーザーも多かった。そのほとんどが通勤・通学、ビジネス利用。観光客でにぎわうVSE(50000形)やMSE(60000形)より、どこか落ち着いた雰囲気のEXEで移動したいという気持ちがあるみたい。実際にシートは最も深くまで沈むタイプで、『景色よりも居心地』という人が好んで選ぶようだ。いっぽうで観光客などは最新のロマンスカーに乗りたいという気持ちがあるみたい」
6歳の男の子といっしょに駆けつけた世田谷区のママは、「いちばん乗る機会が多いロマンスカーだからか、子どもも愛着があるみたい。大好きなEXEがまたかっこよくなったっていうんで、二人で見にきた」と話していた。
「ロマンスカーらしくない10両」の座席が、この日はすべて埋まった。100人を超える見送り客、花束をもらう新宿管区長・30代運転士・20代女性車掌、「満席」の文字。2番ホームは大盛り上がり。従来イメージと決別した 30000形 EXEα が「はこね」の看板を背負って走り出した。