ドライバーの権利と責任を考える…SIP-adus 自動運転を考える市民ダイアログ 第3回

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SIP-adus 市民ダイアログ 第3回
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内閣府は21日、戦略的イノベーション創造プログラム自動走行システム(略してSIP-adus)の市民ダイアログを東京都内で開催した。

第3回となる今回は、モデレーターに自動車ジャーナリストの清水和夫氏、岩貞るみこ氏らを迎え、ドライバーの権利と責任というテーマで開催された。市民の代表として、法律を学ぶ大学生や法律専門家・バス・輸送会社等の事業者が参加した。

ダイアログは、法政大学大学院 法務研究科教授の今井猛嘉氏による基調講演で始まった。自動運転における刑事責任について今井氏は、レベル2以下は人の責任、レベル3については、自動運転中は自動車側の責任だが、自動車側が自動運転不能の場合など、人が運転している場合は人の責任。レベル4以上は自動車側の責任になると説明した。またトロッコ問題については、どう考えるか市民を巻き込んだ議論が望ましいとした。

続いて市民との対話がスタートした。

■レベル3の自動運転について

自動運転の次のステップはレベル3になる。レベル3についての説明があったあと、これについてどう考えるか、それぞれの立場から語られた。

物流業者:物流業界では人手不足が大きな課題。その点で自動運転には期待しているが、レベル3はドライバーが必要なので意味がない。早くレベル4を実現してほしい。

免許を取ったばかりの若者:自動運転をあまり信用していない。クルマに運転を任せる気にはまだなれない

法律専門家:レベル3については責任が自動車側、ドライバーの間で不安定な状態が生じる。そのような状況において、自動車メーカーやその株主にとっては投資が難しいのでは。個人的には、民事の賠償責任はともかくとして、刑事責任についてはある程度の免責制度があってもいいと考える。

大学生:一般市民にとっては買いたくない車。いざというときに人間側に運転を任されて、事故になったら責任だけ負わされる

■オンラインアップデートの義務

自動車が電脳化することによって、オンラインアップデートで安全性能が向上することもありえる。アップデートの義務についてどう考えるべきか。

法律専門家:アップデートがある以上、新バージョン、旧バージョンが混在して走ることは自明。アップデートには一定の期限を設定して、期限を超えたときはエンジンをかからなくすればいい

■事故の刑事責任について

事故の加害者は、被害者に対して謝罪し、賠償責任を果たせばそれで終わり、ではなく刑事責任がある。なぜ刑事責任があるのかについて、法律を学ぶ大学生のあいだで議論が交わされた。

・たとえ加害者と被害者との間で和解が成立しても、社会的な制裁を受けるべき点はある。
・過失犯は罪に問わない、とすると社会が成立しない。注意義務は必要なので。
・いっぽうで、たとえばAI開発者に刑事責任を負わせ、投獄する、ということは政策的判断として正しいのだろうか。
・自動運転で安全な世の中になっていくことは間違いない。自動運転については刑事責任を一切問わないとすべき。刑事罰を科すと保身のため真実を隠すこともあり得る。そうなると真の原因を突き止められず、技術の進化の妨げにもなる。
・たとえ法的な責任を免除したとしても、このようなリスクがあるということを社会が受容しなければ、結局自動運転社会は達成されない。(一定のリスクが内在する)航空機や医療がどう受け入れられているのか、事例を研究すべき。

今年度の市民ダイアログは今回の第3回をもって終了となる。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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