【オートモーティブワールド2017】スポーツカーの将来は乗馬にヒント、モータースポーツが五輪種目に!?

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スポーツカーの将来は乗馬にヒントが?(イメージ)
  • スポーツカーの将来は乗馬にヒントが?(イメージ)
  • トヨタ スポーツ車両統括部ZRチーフエンジニア 多田哲哉部長(オートモーティブワールド2017)
  • マツダ ロードスター(参考画像)
  • 日産、バイワイヤシステムのモデル(参考画像)

自動運転の実現へ向けて世界中が取り組む時代、スポーツカーはどこへ行くか---。トヨタのスポーツ車両統括部ZRチーフエンジニアの多田哲哉部長は、バイワイヤ化や五輪競技種目などを例に出し、スポーツカーやモータースポーツの近未来について特別講演の中で語った。

◆スポーツカーか否か、車重で別れるライン

日産は、ハンドルとタイヤを電気信号でつなぐステアバイワイヤ(ダイレクトアダプティブステアリング、DAS)を『スカイライン』に導入。トヨタの多田部長は「バイワイヤ化は、味付けと使い方次第。より安全により楽しくなるはず。自動運転の流れは、ドライビングプレジャーと必ずしも反対方向ではない」と伝えていた。

「自動運転は、スポーツカーの真逆の進化ともいえる。いつもいろいろなテストカーに乗るけど、メルセデスの『Eクラス』や、テスラの最終モデルなどは興味深い」

「バイワイヤ化については、エンジンのスロットルやブレーキなどは、コストに比べてメリットが少ないといわれている。ところが自動運転の領域では、ブレーキと同じように、ステアリングにもバイワイヤ化が画期的。ちょっとステアリングを戻してあげたり、切ってあげたりと」

スポーツカーというと、スーパーカーと呼ばれる高額車両から、ホンダ『S660』のような軽自動車までを含むとイメージする人もいるだろう。多田部長は、それらの挙動について、車重を例にあげてこう伝えていた。

「たとえば日産『GT-R』のように、重くてもハイテク制御で速く走るというスポーツカーがあれば、マツダ『ロードスター』のように軽くて扱いやすいライトウェイトスポーツもある。スポーツカーという視点では、車重1200kgにひとつのボーダーがある。これを超えると動きは鈍重に感じる。86は、ちょうどそのラインかちょっと上にある」

「安くて小さくて軽いスポーツカーを」という声がある一方で、実現には大きな壁がある。

「クルマのレギュレーションが時代を経るごとに変わってきている。もう少し小さいクルマをつくることも可能だけど、そのころはまた新しい法規制が出てきて、つくるのが難しくなる。昭和のころの規制でクルマがつくれるならば、車重500kgぐらいのスポーツカーもつくれるけど…」

こうした事情は、トヨタだけでなく、国内のすべてメーカーが直面していると多田部長は付け加える。

「いまの法規制に適合するようなスポーツカーづくりは難しい。どのメーカーも、儲かる儲からないという話以前につくること自体が難しい。1千万円以上もするクルマならば、なんとかなる。安くて軽いスポーツカーをつくるのが、難しい時代。そんな法規制があるというのが実情」

◆乗馬のような存在に、パラリンピック種目にも

多田部長は、クルマを操る楽しさの近未来について、馬で移動していた時代をヒントにトークを展開。また、モータースポーツがパラリンピック競技種目のひとつになる可能性についても言及した。

「かつて、人類は馬で移動していた。いま、馬でどこかへ行くというシーンはないけど、「乗馬」はあるでしょ。クルマもある意味、乗馬や馬術みたいに、「運転術」とか、サーキット走行といったシーンで残っていくかもしれない。運転のスタイルは変わるかもしれない。ステアバイワイヤなどが進めば、丸いハンドルも要らなくなってくるし」

「実はクルマを使うレースは、身体の差が出にくいスポーツでもある。だから、ハンディキャップを抱えている人などが、モータースポーツの世界に参加するチャンスが増えると思う。いずれは、パラリンピックの競技種目のひとつになる可能性さえある。これは自動車業界にとっても画期的なことだと思っている」

さらに芽生えつつある新たな潮流についても多田部長は言及した。

「eスポーツとモータースポーツの関係性は大きなカギ。FIAは今年から、eスポーツのチャンピオンをF1チャンピオンと同等の評価をするという。そうしたバーチャルとリアルの世界戦が、FIA公認で始まる。そんな時代が目の前まで来ている」

《レスポンス編集部》

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