【CES 2017】自立するバイク、ホンダ ライディングアシスト の本当の開発目的とは?

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1月5日(現地時刻)にCES2017のホンダブースで公開された「Honda Riding Assist」
  • 1月5日(現地時刻)にCES2017のホンダブースで公開された「Honda Riding Assist」
  • “自立する”“倒れない”オートバイの実現に来場者の誰もが驚きを隠せない様子だった
  • 自立するだけでなく3~4km程度の速度で人に付いてくることもできる
  • 人が乗って停止しても倒れない。停車までの不安定さを取り除く技術として大きな注目を浴びた
  • 停車時は寝ているフロントフォーク(下)は、走行時には起き上がってジオメトリーを確保している
  • パーソナルモビリティ「UNI-CUB β」。隔操作を可能にし、無人で荷物を運んだり、プログラムされたルートで人を案内もできる
  • 「Honda Riding Assist」に使われたバランス技術は、「ASIMO」や、この「UNI-CUB β」で培われたものだ
  • プレスカンファレンスでスピーチする本田技術研究所 代表取締役社長 社長執行役員 松本 宜之氏

ホンダがCES2017で公開した“自立できるオートバイ”「Honda Riding Assist」は、ライダーが乗っていても乗ってなくても倒れないことに最大の注目が集まった。しかし、現地で開発担当者にインタビューすると意外にも「自立することだけが目的ではない」との回答だった。

そもそも、停止中でもどうして倒れないのか。一見するとジャイロによって行っているかと思ったが、実はそうではないらしい。実は技術のベースとなっているのは『ASIMO』や『UNI-CUB』で培ったバランス技術だったのだ。

「ステアリングの部分にモーターがあり、ステアリングを切りながらバランスを取るようにしている。これは人間が自転車に乗ったときと同じような動きで、このセンシングに小型ジャイロは使っているものの、ジャイロでこれを実現しようとすると巨大なシステムになってしまう(担当者)」という。

この自立はどのぐらいまでの圧力に耐えられるのかも聞いてみた。「横からドンと押せば倒れる。それは通常のオートバイに乗っているときでも同じ。人がオートバイに乗ってスピードを落としていった時でも、不安なく自立したまま維持できるというイメージを持ってもらえればいい(担当者)」という。

対応できる速度域は3~4km/h程度以下で、歩行する速度に付いてくるのもこの対応によって実現した。「停車中はより安定した体勢を整えるためにフロントフォークは寝かせた状態で、ここから動き出すと起き上がって走行時のジオメトリーが確保できるようにしている(担当者)」という。なお発表されたプロトタイプは、グローバルで販売している『NC750』がベースだ。

では、この“自立”させる目的は何だったのか。オートバイでの自動走行を目指したのか。すると、担当者は「将来はあるかもしれないが、この開発はそれを目的にはしていない」という。「自立したままずっと立たせておくことが目的ではなく、停車する際の不安定さや、転倒リスクを軽減するのが最大の目的」と話す。

「実は、オートバイはスピードが出ているときはすごく楽しいが、渋滞などでゆっくり走ると、特にエントリーユーザーや年配者、女性などが低速でオートバイのバランスを取るのは難しくなる。これがオートバイのネガティブなイメージとなっており、需要の低迷にもつながっている。これを取り除くことがオートバイの裾野を広げるのに必要だと思い開発した」という。

当初より“自立する”ことばかりに注目が集まったが、この開発のベースにはより扱いやすいオートバイを世の中に提供し、少しでもオートバイの楽しさを知ってもらいたいという開発者の強い想いがあったようだ。

なお、「ホンダ ライディングアシスト」は、CES2017の公式アワードパートナーであるEngadgetによるBest of CES2017の「Best Innovation」および「Best Automotive Technology」を受賞。また、米国Popular Mechanics誌が主催するBest of CESの「Editors' Choice Awards」も受賞し、Honda Riding AssistはCES2017で合計3つを受賞している。

《会田肇》

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