【オートモーティブワールド2017】「人が親和するのはただの論理ではない」ホンダのAI戦略とは…本田技術研究所 脇谷勉氏

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HondaイノベーションラボTokyo 準備プロジェクトを手がける脇谷勉上席研究員
  • HondaイノベーションラボTokyo 準備プロジェクトを手がける脇谷勉上席研究員
  • ホンダが欧州で販売するロボット芝刈り機『Miimo』(左)
  • ホンダが欧州で販売するロボット芝刈り機『Miimo』
  • 脇谷勉氏
  • CES2017で公開したばかりのAI搭載EV『Honda NeuV(ニューヴィー)』
  • ホンダや東芝などが埼玉に建設した実証実験ハウス。自動運転による駐車が可能(参考画像)
  • 脇谷勉氏

ホンダは研究開発部門である本田技術研究所を通じてAI(人工知能)の研究開発を行う新拠点Honda イノベーションラボ Tokyoを東京・赤坂に開設する。準備プロジェクトを手がける脇谷勉上席研究員は「AIの社会実装をやる研究所」と語る。

◆技術で世に貢献するホンダ

AIに関する研究でホンダは2003年に本田技術研究所とは別の組織としてホンダ・リサーチ・インスティチュート(HRI)を設立し、国内外に3拠点を展開しているが、脇谷氏は「AIというジャンルでは同じだが、HRIとイノベーションラボではステージが違う」と話す。

具体的には「NASAが使っている『TRL』という技術レベルがあり、ゼロはノーベル賞を獲るような技術で、数字が上がっていくに従って世の中に入っている度合いが強まる。例えば(ソフトバンクのロボット)『Pepper』はすでに世の中に出ているのでTRLでいうと8~9。HRIの研究内容はアカデミックなので数字が少ない。一方のイノベーションラボはそれよりも数字が上がる。イノベーションラボでは、より世に実装していくためのAIの開発。そういった意味で棲み分けできている」というわけだ。

ホンダのAI研究となると自動運転やロボットへの活用を連想するが、脇谷氏は「クルマやバイクは我々の得意のドメインなので、そこにAIを加えて、もっと強くしようというのはもちろんある。だがそこに自分たちを縛り付けるつもりはない」と言い切る。

というのも「技術で世に貢献していくというのが、ホンダのフィロソフィーの最上段のゴール。そういった意味で新しいドメインにチャレンジしていっても良いと考えており、あらゆる可能性があると思っている」からだ。

このためイノベーションラボのメンバーは「本田技術研究所の2輪、4輪、汎用、基礎技術の各スタッフによる混合編成に加えて、オープンイノベーションも強く打ち出していきたい」と脇谷氏は話す。

◆AI プラスアルファでホンダの強みを

実際、脇谷氏自身も汎用R&Dセンター出身で、これまで「コージェネレーションシステムは入社してすぐに携わった。あれはまさにまったく何もお手本がないし、世の中に姿すらなかったので大変だったが面白くやらせてもらえた。その後にやったのがハイブリッド除雪機で、新しいドメインのチャレンジングな開発ばかりやってきた」という。

なかでもホンダがヨーロッパで販売しているロボット芝刈り機『Miimo』の開発が「180度発想が変わった経験だった」と脇谷氏は明かす。

従来型のエンジン式芝刈り機はエンジンでブレードを回して芝をいったん立ててから刈る構造で、「要はパワーで無理やり芝を立てて切って、刈った芝はスクロールで集めている。僕らも最初は、その構造のまま自動運転という機能をアドオンしようと考えていた」という。

しかし実際に製品化したものは、まさにロボット掃除機の芝刈り機版で、サイズも2回りくらいの大きさになっている。「従来型の芝刈りはせいぜい1週間に1度しか使われないが、その間に伸びた芝を刈ろうとすると実はパワーが必要で、5~10馬力いる。ところが電動式のロボット芝刈り機は、毎日自動で芝を刈るのでパワーはそれほどいらない。しかも刈った芝は1mmくらいで、そのまま芝と芝の間に落せば、やがて肥料に戻っていくから集める必要もない」からだ。

「まったく発想が違う。自動化した瞬間に形そのものが全然違うものになって、刈るというファンクショナルな部分も全く異なる構造になった。ものすごい気付きがあった」と振り返えった上で、「おそらく自動運転を本当に突き詰めて考えていくと、多分クルマも今と違う形になると思う」と脇谷氏はみる。

さらに脇谷氏はロボット芝刈り機が庭をランダムに走行しながら作業することにも意義があると指摘する。「規則正しく動かすこともできるが、あえて乱数を入れてランダムにしているのは、その方があっちに行くんだという驚きがあって、ずっと見ていたくなるから。本当に人が良いなと思う、親和したくなるようなものは多分、ただの論理ではないと思う。ロジックすぎると親和性を感じない。AIもまさにその通りで、イノベーションラボではそうした発想で取り組んでいきたい」という。

脇谷氏は1月18日から東京ビッグサイトで開幕する「オートモーティブワールド2017」の中で19日、AIカンファレンス「AIとの融合で革新するクルマ」に登壇、ホンダのAI戦略をテーマに講演する。

「イノベーションラボはAIをコアなテクロノジーとして据えているが、AIそのものだけをやりたいわけではなくて、AIに何かしらのものをセットすることでホンダの強みを出したいというのが、そもそもの我々の発想の起点だ」と脇谷氏は語る。

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《小松哲也》

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