【日産 セレナ & トヨタ ヴォクシー 比較試乗】使い勝手のよさ vs フルハイブリッド、総合力で選ぶなら…?

試乗記 国産車
日産セレナ新型(上)とトヨタヴォクシー(下)を比較試乗
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ファミリーミニバンの激戦区、Mクラスボックス型でこのところ最も売れているのがトヨタ『ノア』&『ヴォクシー』軍団だ(2013年は日産『セレナ』)。

先代モデルを含めてセレナがマイルドハイブリッド(実態はストロングアイドリングストップ)であるのに対して、ノア/ヴォクシーは『プリウスα』譲りのフルハイブリッドモデルを用意していること、さらに低床自慢のホンダ『ステップワゴン』も真っ青な新低床プラットフォームを採用していることがアドバンテージとなっている。

新型セレナはプラットフォームを先代から流用しているため、フロアは高め。つまり重心も高いことになる。日産があえてプラットフォームを先代からキャリーオーバーしたのは、「プロパイロット」や「ハンズフリーオートスライドドア」などの実用機能にコストを集中させたいからだが、同時にミニバンらしい高めの見晴らし視界を譲れなかった…という意味合いもありそうだ。

◆ハイブリッドの仕組みで差が出る走り

さて、“HYBRID”のエンブレムをつけた両車の走りだが、エンジンは2リットルで変わりなく(新型セレナ:150ps/20.4kgm、ヴォクシー:152ps/19.7kgm)、しかしモーター出力はヴォクシーが圧倒。セレナの2.6ps、4.9kgmに対してヴォクシーは82ps、21.1kgmと大きな差がある。

しかもヴォクシーHVは重いニッケル水素電池などのHVシステムを積んでいるにもかかわらず、車重はセレナよりずっと軽いのだから、いかに車体が軽量に造られているかが分かるというものだ。

新型セレナの走りで先代より進化した部分は、ステアリングの応答性とカーブなどでの安定感、そして静粛性だ。特に専用サスペンション、高性能ダンパーを奢るハイウェイスターは軽快にして抜群の安定感の持ち主。カーブ、高速レーンチェンジはもちろん、山道を積極的に走っても気持ち良く、実に安定している。

ただし、出足の加速感は立ち上がり加速に効くモーター出力で勝るヴォクシーHVの圧勝である。なにしろ新型セレナの出足、中間加速は先代より穏やか。燃費重視のアクセルコントロールによるものだが、急ぐ際はちょっと物足りなさを感じるかもしれない。

もっと言えば、ヴォクシーは、本来セレナと比較すべきガソリン車のほうがHVよりずっと速い。高速走行ではその差は歴然。速さだけで評価すれば、ヴォクシーのガソリン車→ヴォクシーHV→セレナの順になり、ヴォクシーHVとセレナの差が大きめ、ということになる。

◆「ハイウェイスター」に「ZS」という選択肢

乗り心地の特徴はかなり違う。セレナは全列全席ともに快適そのもの。足がよく動き、路面を問わないフラットかつ軽やかでマイルドな乗り味に、乗員全員が満足できるはず。一方、ヴォクシーはガソリン、HVを問わず、ボディが軽いにもかかわらずずっとドシリとした重厚でしっかり感ある乗り味を示す。段差などでは硬めの足回りによって多少のショック、突き上げ感があるものの、それでも1・2列目席ならば納得の乗り心地である。

ちなみに3列目席に乗車していてより快適で静かなのは、セレナのほうだ。ホイールハウスに吸音ライナーを張るなど、静粛性におおきなこだわりがあるからだ。

操縦安定性に関しては両車ともにMクラスボックス型ミニバンとしてハイレベル。この点でより優れるのはセレナの「ハイウェイスター」と、ヴォクシーHVであればエアロ仕様「ZS」の16インチタイヤ装着車だ。

活発な走りとの適合性は、セレナは標準車の15インチタイヤだとタイヤサイズ、サスペンション違いでハイウェイスターよりほんの少し落ちる印象。ヴォクシーHV標準タイプのV、Xグレードは専用の超軽量ホイールを履くため、剛性面で16インチアルミホイールに差をつけられ、ステアリングの応答性や操縦安定性にわずかながら影響がある。

家族を乗せているときはゆったり穏やかに運転するのは当然として、たまに1人で乗るときは活発な走りも楽しみたい…というなら、セレナはハイウェイスター、燃費性能で圧倒する、EV走行も可能なヴォクシーHVはZSを選択するといいだろう。スタイリング的にもより精悍になる。

◆商品力で勝負するなら

ファミリーミニバンは価格も重要な選択基準。セレナハイウェイスターの歩行者対応自動ブレーキ、アダプティブクルーズコントロールを含む半自動運転支援機能を備えるプロパイロット仕様は17.2km/リットルの燃費性能で291万6000円。

対して歩行者検知機能、アダプティブクルーズコントロールのないトヨタセーフティセンスCが標準装備されるヴォクシーHV ZSは23.8km/リットルの燃費性能で322万9200円(いずれも2WD)。ヴォクシーHVはフルHVであるぶん高く、先進安全装備でやや遅れをとり、なおかつセレナの全グレード8人乗りに対して7人乗りのみの設定となる。

セレナ ハイウェイスターの比較対象がヴォクシーのガソリン車ZS(16.0km/リットル)だとすれば、価格は273万9273円(2WD トヨタセーフティセンスC標準装備)となり、セレナ ハイウェイスターのプロパイロットぶんを加味すれば、やや安くなる感じだ。

それでも現時点での商品力は、先進安全装備、バックドアの開き方(新型セレナはリヤウインドー部分のみ開閉できるデュアルバックドアを新採用)を含め、セレナ優勢と見ていいだろう。

■5つ星評価
「セレナ ハイウェイスター」
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★

「ヴォクシーHV ZS」
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ムック本「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)好評発売中。

《青山尚暉》

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