日本で自動車運転免許を取得するには、教習所へ通うことが前提となる。中国のマカオ特別行政区(マカオ)にも教習所は存在する。ただ、教習の仕方は日本とは少し異なるようだ。
街の中で時折見かけるのが写真の『ヴィッツ』。右ハンドル、左側通行と日本と良く似た交通事情のマカオだが、助手席側(左側)にハンドルが。しかしこの車、左ハンドル車というわけではない。よく見れば右側に運転しているドライバーがいて、左側のハンドルには手が添えられていない。実はこの車両こそ教習車なのだ。
日本でも教習車には、教官が座る助手席側にブレーキとバックミラーが備わっているが、マカオではなんとハンドルまでも備えられているのだ。このハンドルは運転席側と連動するようになっていて、緊急時には教官がこのハンドルとブレーキを使って危険を回避することができる。しかもこのハンドル、教官の“マイハンドル”となっているようで、必要に応じて脱着が可能。長年使い続けたハンドルでドライバーを育て上げるというわけだ。
マカオ在住の日本人に取材すると、運転免許証を取得する上で特に重視されるのが、縦列駐車と坂道発進なんだそうだ。マカオは世田谷区の3分の1ほどの面積しかなく、ここに約65万人が居住する。そのため、道路は坂道が多い中、狭く入り組んでいる。ここでクルマを走らせるにはこの二つの運転技術は欠かせないのだ。
そこで、マカオでは一応教習所内に練習コースはあるものの、路上での実技教習が重視されているという。一定の学科試験をパスすれば、日本の仮免許にあたる「L(学車)」プレートが発行され、その時点から路上教習が始まる。この時に使われるのが冒頭に紹介した教習車なのだ。
助手席にハンドルがあることで特に役立つのが縦列駐車の教習だ。日本ではハンドルを切るタイミングを、目印を使って教えてくれるが、マカオでは助手席で教官がその見本を見せてくれる。生徒がなかなかうまくクルマを寄せられない時でも、教官の見本を見ながら操作することでいち早くその技が身につけられるというわけだ。