この夏、北海道新幹線を利用した…「乗車率20%台」をイメージして失敗

鉄道 企業動向
新函館北斗駅で発車を待つ『はやぶさ30号』。JR東日本のE5系による運行。
  • 新函館北斗駅で発車を待つ『はやぶさ30号』。JR東日本のE5系による運行。
  • 『はやぶさ30号』の行先表示。東京の文字が映るが、新函館北斗駅から乗車した客の大半は、ねぶた祭りを目当てに新青森で下車していった。
  • 修学旅行生で賑わっていた5月の新青森駅ホーム。
  • 『はやぶさ30号』の車内。デッキには在来線でもほとんど見られなくなったカード式公衆電話が置かれていた。
  • 購入した「北海道ネットきっぷ」。乗車券部分と特急券部分が別々に発券された。
  • 北海道新幹線の特定特急券。座席の指定はないが、空席に着席できる。混雑時は正規の指定席特急券を持つ客と交替させられることもあり、着席には少々コツが必要。

8月が終わり、北海道新幹線新青森(青森市)~新函館北斗(北斗市)間が開業してから5カ月あまりが経過した。当初は平均乗車率が20%台で低迷が指摘されていた同新幹線だったが、修学旅行や夏休み、青森ねぶた祭り、お盆のシーズンを経て、様相はかなり変わってきたようだ。

北海道新幹線は、初日こそ60%を越える乗車率をマークしたが、開業3日目から20%台を推移するようになり、乗車率の低さが新聞報道等で指摘されていた。それでも対前年比では開業から16日間の平均で217%、昼行列車のみと比較すれば270%と3倍近い増加となっており、なかなか健闘しているといってよいだろう。

それなのに20%台に留まるのは、新幹線がなかった前年度は在来線との比較になるためだ。今年3月まで新青森と函館を結んでいた特急『スーパー白鳥』の1列車あたりの定員は最大で469名(8両編成の場合)。これに対して、北海道新幹線『はやぶさ』は731名で、収容力は『スーパー白鳥』のおよそ1.5倍だ。

もし北海道新幹線が秋田新幹線と同じ6両編成・定員336名だとしたら、E5系またはH5系の乗車率20%に相当する146名と照らし合わせると、およそ43%となるから、印象は大きく変わるだろう。北海道新幹線はそれくらい分母が大きくなっているから、乗車率を低く見積もられるのはある意味やむを得ないとも言える。

筆者はそんな北海道新幹線に、これまで2回乗る機会があったが、そこには、報道で指摘されていたこととは大きく異なる光景が広がっていた。

最初に乗車したのは5月23日の新函館北斗10時49分発『はやぶさ18号』と5月25日の新青森11時21分発『はやぶさ5号』だった。両日とも平日、しかも平均乗車率は20%台……。新函館北斗~新青森間の所要時間はわずか1時間だから、わざわざ指定席を取ることもないだろうと思い、空席を利用できる割安な特定特急券を購入していた。

ところが、往路では新函館北斗駅に到着した途端、そのイメージが見事に覆された。札幌から修学旅行で来た中学生や一般の団体が、『はやぶさ18号』を目指して新幹線の改札口を賑わせていたのだ。この状況は帰路に新青森から乗った『はやぶさ5号』でも同じだった。

特定特急券では、指定席特急券の客が来ると席を譲らなくてはならないため、『はやぶさ18号』には発車1分前に乗車。1号車から乗り込むと、案の定、修学旅行の生徒たちで一杯だったが、運良く同じ修学旅行の2号車に空席を見つけることができた。騒がしいが、大荷物だったのでこれ以上歩き回る気力はなく空席に収まると、ほどなくして添乗員がやってきて「ここは私たちの席なので……」と退去勧告が。これが特定特急券の泣きどころで、本当に20%なら楽勝だったのだが、団体が大勢乗車していると「空席難民」になりかねない。

不安を抱えながら、さらに先の号車へ進むと3号車も修学旅行。次の4号車には一般の団体が収まっていたが、幸いにも3列席が1区画空いており、恐る恐る着席。小口のため添乗員はなにも言ってこない。ようやく安住の地(?)を得ることができてホッとした。このようなことがあるので、平日であっても指定席特急券を買っておくべきだったと後悔した。筆者のようなひとり旅ならまだしも、子供連れの家族ならこのような右往左往はしたくないだろう。

落ち着いてから車内を見回してみると、修学旅行生が乗る1~3号車と9号車のグリーン車、10号車のグランクラスを除くと、2列席はほぼ満席、3列席はまるまる空いている区画がひとつ、ふたつある程度だった。普通車だけなら乗車率は90%近くに達している様子で、つくづく当初の報道は鵜呑みにできないと思った。それでも空席がいくつかあったのは、在来線時代の1.5倍の収容力がある新幹線ならではで、ミニ新幹線並の6両編成であったら、新青森までの1時間は窮屈な立席を余儀なくされただろう。

この光景は8月6日、新函館北斗16時17分発『はやぶさ30号』に乗車したときも同じだった。この列車を使ったのは、青森市で「ねぶた祭り」が開催中で、19時から始まるねぶた見物にはちょうどよい時間帯だったからだ。このときはインターネットから予約できる割引きっぷ「北海道ネットきっぷ」で乗車券と特急券を購入したため、特定特急券で乗車したときのように「空席難民」に陥ることはなかった。

1号車から8号車まで見回してみると、席が指定された特急券を持っていて正解だったと思えるほどの大盛況ぶり。それでも1車両に5~10席程度の空席を見つけることができ、最も混雑すると思われる列車でも、新幹線では空席にありつくことはさほど難しくないことがわかった。大勢の家族連れを乗せた『はやぶさ30号』は、新青森で大半が降り、東北新幹線に通し乗車する人は1割程度にしか過ぎなかった。おかげで、新青森で乗り換えた青森行き4両編成の普通列車では、首都圏の通勤ラッシュ並の混雑に見舞われてしまったが……。

JR北海道が8月19日に発表した、7月22日~8月18日の輸送実績によると、北海道新幹線は対前年比158%という結果が出ている。ゴールデンウィーク中は193%だったので、1年で最大の稼ぎ時となる夏がゴールデンウィークより40%ほど数字を落としている点が意外だったが、北海道特有の「初物フィーバー」が醒めてきたことと、大雨や相次ぐ台風が影響している点は否めない。9月以降は、年末年始まで閑散期と言われる期間が多くなるだけに、北海道新幹線はこれからが正念場になるのかもしれない。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集