台湾鉄路 台北駅(台北車站)から5km東にある車両工場、台北機廠が「文化資産」として修復する方向で動いている。日本統治時代に建設された台湾の工場が変われば、日本の大手私鉄工場跡も新たな土地利用へと進み始めている(写真30枚)。
6月20~22日に複数のメディアが報じた内容によると、交通部や文化部、台鉄などが、1935(昭和10)年に建設された台北機廠を修復する方向で一致。施設や土地を再活用し鉄道博物館として再生させるという。
いっぽう、台湾鉄路と友好鉄道協定を結んだ東武の杉戸工場跡地も大きく変わろうとしている。東武動物公園駅の西側に広がるこの杉戸工場は、東武線内の貨物列車などをけん引した蒸気機関車や電気機関車、さらに貨車などの検査・修理などを担当。1940年代に稼働し、2004年に操業を停止。その後、地元・宮代町や東武、都市再生機構などで跡地の活用について検討を重ね、駅前ロータリーなどから完成し始めた。
東武動物公園駅は、「杉戸駅」と名乗っていたころから、駅の東側を流れる大落古利根川の舟運や、日光街道(国道4号)杉戸宿の方向を向く東口を“玄関口”としていた。東口にはスナックや居酒屋が連なる駅前一番街や、雑貨店や花屋、飲食店などが続く商店会などがあり、西口はやや地味な存在だった。
そこへ、再開発がすすむ西口に、杉戸工場の面影をいまに残す線路やポイント切り替えレバーなどのモニュメントが出現。スマホで“鉄物件”を撮影する鉄道好きの姿も現れた。今後、風景が一変するこの西口界隈には、変わらず当時の姿を留める鉄道遺構もあり、「週末にはSLが好きな人たちの姿を見かける」という。彼らが目指すのは、2つの英国製蒸機らしい。
駅の500m南にある宮代町役場には、英国シャープ・スチュアート社で1890年代後半につくられた蒸気機関車が展示されている。このSLは、5650形として日本鉄道・国鉄の東北線や高崎線などで活躍し、大正時代に東武鉄道に譲渡された40号機(B1)。1960年代まで同社の貨物輸送などを担い、この宮代町で静態保存されている。
また、この宮代町には、“動くSL”も健在。東武動物公園駅から徒歩20分の日本工業大学内にある工業技術博物館には、1891(明治24)年に英国ダブス社が製造した国鉄2100形蒸気機関車(B1)が動態保存されている。同機は東北線などで活躍し、西濃鉄道、大井川鉄道と渡り、1992年に同大学にやってきた。120mの線路が敷かれた同館では、「直近だと7月16日と9月17日に火を入れて動かす予定」と話していた。
台北と杉戸、昭和初期に建てられた2つの鉄道車両工場跡が、新たな装い・施設で再び活気づく。東武動物公園駅では、6月17日から走り始めた台鉄特急自強号「普悠瑪」カラーの200系「りょうもう」が停車する姿も見られる。