上半身が前傾となるアグレシッブなライディングポジションは、跨った途端にスポーティな走りを予感させるが、前傾といっても「ハーレーにしては」という前置きが付く。
ダートトラックレーサーに由来し、アップハンドルで操る旧ロードスター(883R)をイメージしたままグリップを握ると違和感を感じるかもしれないが、ミッドステップの位置もごく自然な位置にあり、着座ポイントの低いシートとのマッチングも決して悪くない。市街地を流すだけのイージーライドでは、このライディングポジションの利点は分かりづらく、コーナーを攻め込むうちに合点がいく。
試乗したのは南フランス・プロヴァンス地方、300kmほど乗り込んだ。路面はスリッピーでタイトコーナーが連続するワインディングを程良いペースで流したが、『ロードスター』のネーミングに相応しい軽快なハンドリングと1200らしい力強いエンジンフィーリングが楽しめた。
特に感心したのは「まだまだイケる。もっとハイペースで!」と、乗り手にうったえかけてくるかのような足まわり。φ43mm倒立式フロントフォークは初期からしなやかに動き、街乗りでも乗り心地の良さを感じるが、ワインディングで負荷をかけてこそ持ち味を発揮する。115mmという余裕あるトラベル量の奥底まで使い切っても、そこからしっかり踏ん張りが効き、ラジアルタイヤに安心して荷重をかけていけるのだ。
もちろんフロント19インチのハンドリングは安定志向のもので、リアが18インチと大きくなったものの従来のスポーツスターと車体の挙動は大きく変わらないから、たとえば前後17インチのスポーツモデルのような積極的なフロント荷重を意識する必要はない。
タイトコーナーであってもあくまでもリア荷重で、不等間隔爆発の45度Vツインならではの駆動輪にしっかりかかるトラクションを感じつつ、立ち上がり重視でアクセルをワイドオープンして豪快に楽しめばいい。
険しい山岳路に入っても流れの速いフランスのカントリーロード。ロードスターで走るにはうってつけで、ハーレーダビッドソン社が試乗コースに設定した意味がわかる頃には、楽しくってもうフルフェイスヘルメットの中で頬が緩みっぱなしだった。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のバイクカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説。現在、多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。