自動車の街デトロイト、Uber 普及の原動力は「安心感」

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デトロイトのUberドライバー、カートさんのビュイック『ルサーン』
  • デトロイトのUberドライバー、カートさんのビュイック『ルサーン』
  • 米国 デトロイト
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  • Uberの画面イメージ。「乗車記録」画面で、誰にいくら支払ったか確認できる
デトロイトと聞けば、世界史の教科書にも出てくるように「自動車の街」としてよく知られている。同時に危険な街としてもよく知られ、2014年と2015年は2年連続で米国内で最も危険な街に選ばれている。

失業率は2015年末でおよそ11%。2013年中頃は20%だったことを考えると、かなり改善されたものの、依然として高い。電気の点かないビルが立ち並ぶダウンタウンでは、歩行者を見ることはほとんどなく、ただただクルマだけが列をなして行き交う姿が見られる。

クルマの本場デトロイトにおいて、配車サービスUber(ウーバー)がサービスを始めたのは2013年。誰もが自分のクルマを使って始められるUberは、その後順調に普及を続け、デトロイトでも市民や旅行者の足として広く使われているという。

Uberとは、スマートフォンのアプリで出発地点を指定すると、近くでUberを利用するドライバーに通知が届き迎えに来てくれるサービスで、世界380都市(2016年2月現在)で利用することができる。タクシーよりも安価で、クルマさえ持っていれば誰でもUberドライバーとして働き始めることができるのが特徴だ。

今回はデトロイトモーターショーに合わせて、デトロイトを訪れ、Uberドライバーたちの声を拾った。失業率の高いデトロイトにおいて、雇用の受け皿としてはもちろんだが、それ以外にもUberで働くのにはどんな理由があるのか。


◆カートさん「週末ドライバー、客の多くはバーに」

雪が降る中、ビュイック『ルサーン』に乗って現れたのは、随分ときちっとした身なりをした男性、カートさんだった(Uberドライバーはラフな格好をした人が多い)。「Uberで働き始めて4か月。週末にしかやってないよ」と言い、「主に金曜日の夜と、土曜日の夜に5時間ぐらいやってるんだけど、お客さんは多いよ。まぁ、ほとんどバーへの送迎なんだけど」と、公共交通が発達していないアメリカに、市民の足としてUberがうまく溶け込んでいることを教えてくれた。アメリカの多くの都市では電車もバスもないか使い勝手が悪く、外でお酒を飲む際にはクルマで行き、飲む量を抑える必要がある。

本職を尋ねると、ビジネスコンサルタントをしているというカートさん。Uberで働く理由は「妻が家にいるから、家を出る口実だよ」と笑いながら答える。「それほどの稼ぎにはならないけど、まぁお小遣いって感じかな。ドライブが好きだし、いろんな人と会えるのも楽しいよ」と明かした。


◆ヴァレリーさん「車内に取るものがないから安心」

クライスラー『200』に乗るのは、女性ドライバーのヴァレリーさんだ。「(Uberドライバーは)5か月前から仕事の合間に始めたんだけど、お金も稼げるし、いろんな人に会えて楽しい」と、パートタイムでドライバーをやっているという。女性のUberドライバーについては「たくさんいるわよ」と、知り合いにもUberで働いている女性がいることを教えてくれた。危険は感じないのだろうかと聞いてみると、「全然感じないわ。だって、現金のやり取りがないから、車内に取るものもないでしょ?」と、Uberの支払いシステムである、クレジットカードによるオンライン決済だからこそ、安心して働けることを明かした。


◆モハメッドさん「学生でも働ける環境」

モハメッドさんが乗るクルマはフォード『フュージョン』。現役の大学生で、アルバイトとしてUberドライバーをしているという。「一年前に始めたよ。学校のあと2時間ぐらい働いて、それから帰って勉強するんだ」と、空いた時間を使って働いていると話す。「稼ぎはそれほど良くないけど、学生だとお金を稼げる機会もあまりないから、そういう意味では助かってるよ」と、学業に追われて時間の制限がある中で、空いた時間に働くことができるUberが役立っていると話した。


◆モハメッドさん「タクシーよりも、安心、早い、安い」

こちらのモハメッドさんはトヨタ『プリウス』に乗ってやってきた。子供が二人いるといい、フルタイムでUberドライバーをしている。「生活費は稼げてるよ」と少し控えめな言い方。「以前はタクシードライバーとして働いてたんだけど、Uberに乗り換えたんだ」と明かした。「タクシーの時は、お客を乗せないで待っている時間が多かった。今はUberを使う人が多いから、以前よりも少しだけど多く稼げてるよ」と、確実にタクシーよりもUberの方が利用者が多くなっていることを感じ、転職したことを明かした。

人々がUberを選ぶ理由について尋ねると、「人によっては、ドライバーの顔が見えるから安心だっていうね(Uberは配車を依頼し、ドライバーが承諾するとドライバーの顔と名前、クルマの車種とナンバープレートがスマートフォンに表示される)。タクシーは来るまでどんな車か、どんなドライバーかわからないから」と、顔が見えることからくる安心感が集客に寄与しているのではないかと予想する。

「あと、やっぱり現金のやり取りがないから安心。それにUberは来るのが早い。依頼すると、自動的に近くにいるドライバーに連絡がいるから、このへん(デトロイトからクルマで25分ほど離れた郊外)なら大体5分以内にくるんじゃないかな。あと、通常料金ならタクシーより安いしね(Uberは依頼する人がその地域で増えると一時的に値段が上がるようになっている)」と、矢継ぎ早にその理由を話す。

今まで危険な思いをしたことはなかったのだろうか。「まったくない。みんないい人だよ」と、明るい声で語る。「この仕事で不満があるとすれば、バーからの客を乗せることかな。時々ビールの瓶を車内に置いていくのがいるからね」と、マナーの悪い利用者もいることを教えてくれた。「でもそういう外でお酒を飲みたい人なんかには、Uberは便利だろうね」。


ドライバーたちから話を聞くと、すでにUberがデトロイトで広く市民の足になっていること、様々な背景を持つドライバーたちにとって大切な収入源になっていることがわかった。そして、タクシーから代わって選ばれる理由。それはモハメッドさんが語った「安心、早い、安い」が全てだろう。乗客だけでなく、ドライバー側にも感じられる安心感、それはその場で現金のやり取りをしないUberのシステムによるものであり、この「安心感」が普及の大きな原動力になっていることは間違いない。
《関 航介》

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