【GARMIN Edge 520J インプレ前編】コンパクトさと多機能を両立した定番サイクリングコンピュータの進化系

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GARMIN Edge 520J
  • GARMIN Edge 520J
  • 本体のデザインは完全に一新された。前面が完全な平面になっており、スマートフォンのようだ。これまでのモデルのように無理に高級感を出す仕上げになっていないが、とくに安っぽいということもない。
  • 左側面には3個のボタンがある。これまで下方向しかなかったスクロールボタンに上方向が追加されたのが非常に嬉しいところだ。
  • 左側は2個のボタンがある。防水なのでタッチは固めだが、押しにくいほどではない。
  • 本機の特徴といえる、下向きのボタン。この2つのボタンだけはゴムに覆われておらず、タッチも軽い
  • 裏面はマウントに固定するための突起と、マイクロUSB端子がある。上位モデルと違ってカードスロットはない。
  • 付属のハートレートセンサー。改良されて装着感が良くなった。
  • センサーを取り外してバンドだけを新品と交換したり、洗濯することができる。

手軽に使えて、しかも高性能なサイクルコンピュータの定番モデルであるGARMINの「Edge 500」シリーズに、新たなモデルが登場した。それが『Edge 520J』だ。大きく変わった外観が目を引くが、もちろん真価はその機能、性能にある。手軽さと高性能のバランスをさらに突き詰め、さらにユーザーの要望に応えて、新たに「Strava」にも対応している。

◆高機能サイコンの有用性を証明したGARMIN Edgeの500番代モデル

スポーツとして自転車を楽しむなら、ぜひ使いたいのがサイコン(サイクルコンピュータ)だ。スピードメーター程度の簡易な製品も多いが、トレーニングに励む人たちの間で人気が高いのは、様々なセンサーと接続でき、GPSを搭載したモデル。少し前までは贅沢品という雰囲気もあったが、今では初心者であっても必需品といえるほど普及している。

こうした高機能サイコンは走行時のペース、タイム、走行距離、速度といった走行データはもちろん、勾配、ルート、ケイデンス、心拍数、気温など、あらゆるデータを計測、記録してくれる。これらのデータはトレーニングに役立つだけでなく、オーバーワークを防ぐなど、安全の確保にも必要なものだ。決して安価ではないが、だからといって贅沢品と遠ざけてしまっては、むしろ損をすることになる。

それを日本のサイクリストに知らしめたのが、GARMINのEdge500シリーズだ。価格と機能のバランスに優れ、しかもコンパクトで使いやすいこのサイコンは、5年ほど前に初代モデルの『Edge 500J』が登場。大人気を博すとともに、異例のロングセラーとして数年に渡って人気を持続した。後継モデルの『Edge 510J』もまた安定した人気を獲得。この2モデルで、GARMINは高機能サイコンの有用性を証明してみせたといっていい。

そして今回登場したのがEdge 520Jだ。一目見てその外観は従来モデルからかなり大きく変わった。しかし、軽量コンパクトな本体サイズとコストパフォーマンスに優れた価格設定はしっかり受け継いでいる。どのように進化したのか、非常に楽しみなモデルだ。

上位モデルの登場を受けて原点回帰

では、Edge 520Jのスペック、機能を紹介していこう。まず本体サイズは縦73mm、横49mm、厚さ21mmとなっており、86x52x24のEdge 510Jよりひと回り小さくなった。重量は60gと軽く、80gのEdge 510Jから20gも軽量化している。と、ここまでの数字を見て、気がついた人もいるかもしれないが、実はこのサイズと重量、初代モデルであるEdge 500Jに非常に近い。

Edge 500Jのサイズ、重量は69x48x22、57gだ。本機は僅かに大きく重いが、ほぼ同レベルといっていいだろう。実はバッテリーライフも15時間というスペックで、Edge 500Jと全く同じ。20時間のEdge 510Jとの比較では、スペックダウンしたことになる。さらに、本機のディスプレイにはタッチ機能がないのだが、これもEdge 500Jと同じで、タッチスクリーンを採用したEdge 510Jからスペックダウンしている。

このように、本機の基本スペックはEdge 500Jに非常に近く、多機能化の代償として大きく重くなったEdge 510Jから方向転換して、原点回帰した。おそらくこれは、Edgeシリーズのバリエーションが充実したことが関係しているのだろう。より多機能を求めるユーザーには、Edge 510J登場後に上位モデルとして発売された『Edge 810J』や『Edge 1000J』を選んでもらえるようになった。そこで500シリーズは本来の軽量コンパクト路線に徹することにしたというわけだ。

とはいえ、新製品でスペックダウンを行うのはひとつの決断だったはず。とくにGARMINの場合、モデルチェンジのたびにこれでもかというほどの多機能化を推し進めてきたイメージが強い。そこを曲げてサイズと重量を優先したことは歓迎すべきだろう。バッテリーライフについては残念ではあるものの、軽量化とトレードオフあれば納得できる。タッチ機能については、廃止して正解、と思う人も多いのではないだろうか。

原点回帰でも多機能化は止まらない、付属センサーも大幅進化して面倒なセッティングは不要

原点回帰の英断を強調するあまり、機能的に後退したかのような印象になってしまったかもしれないが、もちろんそんなことはない。スペックダウンしたのはバッテリーライフとタッチ機能の2つだけで、それ以外の多くの面で本機は格段に進歩し、新機能も多数採用している。

ディスプレイは縦47mm、横35mmで、解像度は265x200ピクセル。37x30mmで160x128ピクセルだったEdge 500Jより格段に進歩しているのはもちろん、44x35mmで220x176ピクセルのEdge 510Jと比較してもサイズ、解像度ともに向上した。

機能面では、FTP(機能的作業閾値)、リカバリーアドバイザーなど数多くの新機能が追加されている。また、GARMINの『Vector 2J』などのパワーメーターと組み合わせての計測が高機能化した。従来は数値が表示されるだけだったが、本機ではパワーフェーズ、プラットフォームセンターオフセットなどのデータがグラフ付きで表示されるサイクリングダイナミクス機能を新たに搭載した。

また、付属するスピードセンサー、ケイデンスセンサーがEdge 810Jなどに採用されている新型に変更された。従来のセンサーは磁石を利用しており、取り付け時にはセンサーと磁石の位置を慎重に調整する必要があったが、新型はGセンサーを利用。非常に小型のセンサーをホイールハブとクランクアームに取り付けるだけのイージーインストールとなった。微妙な位置調整は不要で、別の自転車への付け替えも1分以内に行える。

このセンサーなら複数の自転車を持っている人でも台数分のセンサーを購入する必要が無いし、旅行先などで自転車をレンタルした場合にもすぐに取り付けができる。なお、本機はスピード、ケイデンス、ハートレートの各センサーがセットになったパッケージと、本機のみのパッケージの2種類が用意されている。センサーがすでにある人ならかなり費用を節約することができる。

◆世界中で大人気の走行ログ管理サイト「Strava」に対応、セグメントでランキング争いに参加可能

本機は、自転車とランニングのGPSログを共有できるサイト、「Strava(ストラーバ)」に対応した。Stravaは今や日本でも大変な人気なので説明するまでもないかもしれないが、一応概略を紹介しておこう。Stravaはカリフォルニアに本社を置く同名企業が運営するサービスで、パソコンやスマートフォンから利用できる。2009年ごろからスタートし、次第に人気を獲得、最近では日本のユーザーも増えて、ついに日本語バージョンも使えるようになった。

このサービスの主な機能は、自転車とランニングのGPSデータの管理、共有。つまり、GARMINがユーザーのために運営しているクラウドサービス「GARMINコネクト」と同様だ。しかし、全体に使いやすいことや、より多くのユーザーとデータを共有できること、そして何より、セグメントのランキング機能により、圧倒的な人気を博すようになった。

セグメントとは、サイト上で公開されているコースをサイコンにダウンロードし、実際にそのコースを走行して、タイムをアップロードできる機能。コースといっても公道上の好きな区間を誰でもセグメントとして設定できる。日本でも自転車が走りやすい練習向きの道路なら、その多くがすでにセグメントとして公開されているはずだ。自宅の近くにあるセグメントを検索して走行すれば、一人で走るだけでも、多くの人と仮想的に競争することができる。

セグメント機能はGARMINコネクトにもあるのだが、GARMINでは主に「走る仲間がいるが予定が合わず、一緒に走れない時に、仮想的に競争するための機能」と位置づけられている。それに対して、Stravaではセグメントを走ったすべての参加者のタイムをランキング表示するようになっている。これが多くのサイクリストの闘争心に火をつけ、「知らない誰かとのタイム争い」に熱中する人が続出。今この瞬間も、世界中のセグメントで激しい闘いが繰り広げられている。

Edge 520JはStravaに対応したことにより、世界中のサイクリストが熱狂しているセグメントのランキング争いに簡単に参加できるようになった。争いというと必要以上に好戦的なイメージになってしまうが、一人で黙々と走っている人にとっては、自分の実力がどの程度なのか知りたいと、切実に思うもの。Stravaのセグメントは、そんな希望にこれ以上なく「ガチ」に答えてくれる機能といえる。

《山田正昭》

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