製造段階での意図的な工程省略が原因とみられる溶接不良が見つかった落橋防止装置などについて13日、国土交通省道路局は有識者委員会を立ち上げ、第一回の会合を開いた。
委員長は法政大学の森猛教授(鋼構造研究室)。専門は鋼橋や、その接合部の疲労強度に関する研究。委員会の目的について森氏は、こう述べた。
「本委員会では溶接不良の程度と、それが(装置の)強度に及ぼす影響、溶接不良の原因究明、再発防止等を専門的な見地から議論し、国土交通省に提言を行いたいと考える」
また、「落橋防止装置のような付属的な製品については、橋梁本体とは異なり品質管理が徹底されていなかったのではないかという疑念が上がっている。それは一般の方々も同じで、溶接不良の程度が強度にどの程度影響を及ぼすかについても関心が高い」と話す。
落橋防止装置は、大地震で橋脚(橋台)から橋げたが落下するのを防止する。橋の本体は激震にも耐えられるように作られているが、この装置は、構造の想定を超える事態が起きた場合のフェールセーフとしてつけられるもの。橋脚と橋桁を太いチェーンなどで結んでいるが、不良個所は、そのチェーンと橋を結びつける接合部分で見つかった。
京都市内を流れる鴨川にかかる国道24号線勧進橋で8月に発見されたことをきっかけに、製造者の「久富産業」(福井市)の装置には、同様の不具合が各地で確認された。
10月13日現在で、国交省の地方整備局が管理する橋梁194橋、高速道路会社が管理する橋梁28橋の合計222橋のうち98橋で、勧進橋と同じ不正行為が行われたと思われる不良品が発見されている。このうち5年以内に設置された装置では92橋のうち72橋に問題があった。
さらに、この製品の溶接部の検査をする「北陸溶接検査事務所」(福井市)の職員が、過去約5年間にわたって不良データの隠ぺいを行っていた可能性もあり、この問題をより深刻にしている。
有識者委員会の他のメンバーは以下のとおり
・秋山充良(早稲田大学教授・社会環境工学科)
・大森文彦(東洋大学法学部・弁護士)
・金井道夫(日本道路協会橋梁委員長)
・村越潤(土木研究所構造メンテナンス研究センター上席研究員)