メルセデス・ベンツ日本から発売されたディーゼルハイブリッド『S300h』の価格は、1000万円を切る998万円という戦略的な値付けとなった。
この意図について、同社営業企画部商品企画1課の渡辺彬さんは、「近年、Sクラスの価格は1000万円以上が当たり前だった。一方、Sクラスはより広いユーザー層にアプローチしたいという課題も抱えていた」と述べる。
Sクラスはロイヤルカスタマーと呼ばれるSクラスからSクラスに乗り換えるユーザー層があり、そこは安定基盤として存在しているが、台数を伸ばすためには他からの流入も必要だ。そこで、「4ケタの価格がどうしてもユーザーの心理的バリアになっていることを感じていたので、S300hという全く新しいパワートレインを持ったクルマで、かつ、3ケタの魅力的な価格を打ち出すことが、相乗効果もあり一番いいのではないかと考えた」という。
そして、競合としては「同じドイツ車以外に、日本の高級ブランドからも獲得したい」と渡辺さん。「ブランド力だけでなく、ディーゼルハイブリッドであることと、魅力的な価格によって、アプローチしたい」とし、「この価格で興味を持ってもらい、しかしガソリンの方が良いといわれれば、Sクラスの他のラインナップも紹介できる」と選択肢増によるメリットもあると話す。
そういったことから、「S300hとS400h の装備差はほぼないといってよく、また、S400hエクスクルーシブとS300hエクスクルーシブも、AMGラインの有無はあるにせよ、それ以外の標準装備は全く同じ。この考え方は他のグレードも同様だ」と説明。これはユーザーにもセールスマンもわかりやすく、また説明がしやすいことから、「パワートレインによる価格差はあるものの、ユーザーの志向に合わせて柔軟に選択できるようなグレード構成にしている」と語った。