スロットルレスポンスが鋭く、トルクも低中速から図太い。スーパーチャージャー搭載の超弩級998ccエンジンは想像していたとおり強烈なパワーだが、意外と街乗りも普通にできる。
もっと扱いづらい凶暴なジャジャ馬かとビビっていたが、パワーバンドが広く、高めのギヤで流すような走り方でもギクシャクしない。車体もこのクラスにしては軽く、足着きも悪くない部類。気合いなど入れずに、3000rpmくらいでチンタラ走ることも受け入れてくれる懐の広さがあるから驚く。
もちろん、高回転をきっちり使い切るなんてことは公道ではできない。5000rpmくらいからスーパーチャージャーがしっかり効き、6~8000rpmあたりのトルク感は怖じ気づくほどハンパない。トラコンを効かせていないと、アクセルを大きく開けられないほどで、本領を発揮させるにはサーキットでということなのだろう。
アクセルを戻すと「パシュ~」と、スーパーチャージャーならではのバックラッシュ音が聞こえ、モンスターエンジンを抱え込んで走っているという興奮を覚える。これだけでもう浮き足立つ。公道で、なにも非常識な速度で走らなくても、アクセルを開け閉めしてダッシュを繰り返すだけでも充分に面白い。
ハンドリングも素直で軽快。ZX-14Rのような重量感ではないし、10Rのようなヒラヒラ感でもないその中間。前後サスもしなやかに動き、乗り心地も悪くない。異次元を感じさせるその見た目や驚異的なスペックとは裏腹に身構える必要がなく、これならツーリングだって行けそうだ。
このタダ者ならぬルックス、現行機種では唯一無二のスーパーチャージャー搭載エンジン。お宝感イッパイだが、普段乗りもできるから乗って走って楽しんで欲しい。270万円という価格で、これが手に入るなら決して高くはないと思う。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。国内外のモーターサイクルカルチャーに精通しており、取材経験はアメリカやヨーロッパはもちろん、アフリカや東南アジアにまで及ぶ。自らのMXレース活動や豊富な海外ツーリングで得たノウハウをもとに、独自の視点でオートバイを解説している。現在多くのバイク専門誌、一般誌、WEB媒体で活動中。