【インタビュー】超ロングセラー「燃費マネージャー」の後継機種 FCM-NX1、その開発はいかにして成されたか…テクトム 富田直樹代表

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自動車に着いている診断コネクタ(OBD:オンボード・ダイアグノーシス)を使って車両の状況をリアルタイムに表示させたり、スマートフォンのアプリと連係させるツールやドングルが、昨今数多く出回るようになってきた。このOBDソリューションをいち早く手がけ、広くその技術を認められているのがテクトムだ。

特に、同社が2002年に発売した「燃費マネージャー」こと「FCM-2000」は、東京都知事賞を受賞して10年あまりのロングセラーとなった。2013年には、その「FCM-2000」の後継モデルであるリアルタイムデジタル燃費計「FCM-NX1」を発表。同機は、いわゆる“電費”の確認が可能な上に、表示部分に有機ELを採用して視認性を向上。さらにスバルの「アイサイト」などのように前方の走行車両との車間距離を計測する機能を有する場合は車間距離の表示も可能になるなど大幅な機能アップが図られている。

この「FCM-NX1」を開発した狙いと今後のOBDソリューションについて、同社の代表取締役である富田直樹氏に話を聞いた。


◆新たに「電費」や「車間距離」に対応した「FCM-NX1」

----:現在の主力製品である「FCM-NX1」は、大ロングセラーとなった「FCM-2000」の後継モデルですが、新モデルを開発するに当たり、狙った特徴や機能について教えてください。

富田:燃費マネージャー「FCM-2000」を発売したのは2002年のことです。それまでのマルチディスプレイモニタ「MDM-100」は、エンジンコンピューターからリアルタイムにデータを読み出して表示するというもので、チューニング用途向けに多くのお客様に購入いただいていましたが、やはりもっと多くの方々にこのデータを活用いただきたいと思っていたのです。そこで、ハイブリッドが登場するなど燃費が大きくクローズアップされてきた時勢もあり、燃費表示が可能な「FCM-2000」を開発したのです。

当初は車ごとにコネクタが異なっていたので、車種別にラインアップを出していましたが、それがOBDとして共通規格になりました。その対応など、数回のアップデートを行いながら12年間、販売を続けました。非常に息の長い製品だったといえます。

しかし、入手しづらくなった部品も出てきたことなどから、新たにリアルタイムデジタル燃費計「FCM-NX1」を開発しました。「FCM-2000」は「サイズが大きい」と言われ続けましたが、私としてはディスプレイの大きさは命だと思っているんです。こういった製品は、運転しながらパッと見て情報を把握できなければなりません。そこで「FCM-NX1」では、大きな文字をハッキリ表示するために本体に対して大きなディスプレイにしました。そこは「FCM-2000」を踏襲しています。

----:機能面での特長は。

富田:いくつか主要なものを挙げると、燃費表示~瞬間燃費をはじめとする平均燃費・1運転あたりの燃費、基本的な車両情報、車速・エンジ回転数・エンジン水温などの表示項目、アラーム機能、燃費表示のための校正機能など、「FCM-2000」の機能をそのまま踏襲しているほか、車間距離の表示にも対応しました。アラーム機能と組み合わせることで、安全運転をサポートします。

さらに、いわゆる「電費表示」にも対応しています。ガソリン車の燃費と同じイメージで電費状況を把握できるように、電力あたりの走行距離を採用、瞬間電費、平均電費をはじめ、1運転あたりの電費、消費電力、SoC(State of Charge:バッテリ残量)などの表示も可能になっています。


◆視認性にこだわり有機ELディスプレイを採用

----:ディスプレイは液晶から有機ELへと進化しましたね。

富田:視認性、見やすさは絶対に犠牲にできませんでしたが、ディスプレイのパーツについてはずいぶんと考えました。液晶の画面は角度によっては見やすいのですが、温度の影響を受けやすく、温度が低いと応答速度が遅くなりますし、温度が高いと表示が黒くなってしまいます。そこで小さくても視認性の高い有機ELを採用しました。パーツとしては高価なのですが、そこまでこだわりたかったんですね。

他にもこだわりがあります。たとえば画面の明るさは、周囲の明るさに合わせて調整しています。人間の目は、明るいところと暗いところでは明るさの捉え方が違うためです。明るさを自動調整するために照度センサーを搭載していますが、センサーのために本体に穴をあけたくなかったので、操作ボタンの裏に隠しています。

さらに、明るさが変化するスピードも、人間の目の特性を反映しています。人間の目は、明るいところから暗いところに移ったときは慣れるのに時間がかかります。でもその逆は何倍も早く順応します。そのため、表示を暗くするときは時間をかけて、明るくするときは一瞬にしています。ただ、画面の明るさというのは個人の好みがあるので、正解がありません。そこでマニュアルで明るさを20段階で細かく調整することもできます。反転表示も可能です。さらに、見やすさを追求して文字のフォントまで作りこんでいるんですよ。

----:有機ELを採用したことで明るい昼間の視認性は飛躍的に上がりましたね。

富田:液晶では、周辺からの光の入り方で見えにくくなるという課題がありました。直射日光下では液晶自身の影ができてしまい、見づらくなりますよね。有機ELは自発光するので、真夏の炎天下でもハッキリ見えます。また、表面のガラスもコーティング処理してあるので、映り込みもありません。

もうひとつこだわって作ったのが燃費表示です。平均燃費は、小数点以下二桁まで表示させています。燃費マネージャーですから、買っていただいたお客様は燃費をよくしようと思って使います。でも、走行距離が伸びるにつれて、燃費の数値表示があまり変わらなくなります。そこで、桁を1個増やすこで10倍の変化が見えるようになります。こういう工夫をした製品は、意外と見かけないですよね。


◆クリック感と誤操作防止のために、4ボタンに変更

操作ボタンをどうするかも、検討をくり返したポイントです。「FCM-2000」では十字キーを採用していたのですが、クリック感やトルク感がなく、改善の余地があると考えていました。実際に「操作ミスしてしまうことが多い」というお客様の声もありました。そこでクリック感のあるボタンにしたのですが、ボタン数もどうするか迷いましたが、最終的に4個に落ち着きました。

4個ボタンは、「決定キー」「選択・キャンセルキー」「上キー」「下キー」というイメージで、直感的に操作できるよう配置や大きさを決めています。マーキングもしてありますし、実はボタンも発光するようになっています。また、本体にUSBポートを装備したことも大きな特徴です。これにより、本体のアップデートを15秒ほどでできるようになります。

「FCM-2000」は外部ポートがなかったので、バグがあってアップデートが必要なときには、お客様から製品を送ってもらって、こちらでアップデートを行っていましたから、非常に効率的になったと思います。バージョンアップは、対応車種が増えたときや機能追加などの目的で、不定期で行っています。

おそらく、「FCM-NX1」も10年は使えます。私は、短期間でモデルチェンジしてしまうのはお客様を裏切っている気がして嫌なのです。あくまで最高のものを本気で売るというスタンスですね。買っていただいたら、お客様自身でプログラムのバージョンアップができるので、常に最新の状態にできます。ハードウェアはもうほとんど手を入れるところがないくらい完成しています。

◆OBDのセキュリティには万全期す

----:OBDから車両のコンピュータに不正アクセスして操作するというニュースが出ましたが、OBDのセキュリティに関してはどのような認識でしょうか。

富田:報道に出たOBDドングルは、CAN BUSにアクセスするための文字通り“土管”として利用するもので、セキュリティ面での信頼性が担保されていません。つまり、外からクルマを操作するためのコマンドを直接CANのバスに流し込めるようにつくられています。ですが、当社の提供するOBD製品は、クルマに対してデータを取得するためのリクエストしか入っていません。どんなアクセスをしても勝手にいろんなコマンドを流し込めるという構造になっていないのです。OBDの製品すべてに危険性があるわけではありません。当社の製品は、セキュリティ面でも万全の信頼性を確保できる設計になっていることを強調しておきたいと思います。


◆Wi-Fiドングル「CAR~Wi」も発売、SIM内蔵のソリューションも

----:今後の機能追加予定などありましたらお教えください。

富田:「FCM-NX1」は有機ELにしたことで、ディスプレイをずいぶん薄くすることができました。メインの基板も小さいため、本体は小型ですが内部にはマージンがあります。ここにいろいろなモジュールを組み込むことができます。いま考えているのは通信機能の搭載です。ただ、USBポートも搭載しているので、ドライバを作ればUSBポートに差し込むWi-Fi通信といったものも実現できると思います。

通信機能を搭載することで、データを読み出す「ロガー」機能を使うことができます。「FCM-2000」にもSDカードを装着できたり、3G通信が可能な業務用のカスタムモデルも出していました。これにより、たとえば営業車の燃費を把握するといったことが可能になり、そういった活用をされているお客様もいらっしゃいます。「FCM-NX1」にも通信機能を持たせることで、ロガーとして使えるようになります。

また、2012年には車両情報取得用無線LANアダプターとして「CAR~Wi」も販売しています。これを使うことで、スマートフォンなどの受信端末を介して、アプリケーションソフトで車両エンジンコンピュータに集まるさまざまな情報を取得・表示できるようになります。また、3GのSIMカードスロットを本体に内蔵したOBDドングルも間もなく登場します。さらなる展開も考えていますが、やはりユーザーの視点に立った良質な製品をこの世に出していきたいですね。
《吉澤 亨史》

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