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【インタビュー】四半世紀にわたって取り組んだOBD解析の業界標準… テクトム 富田直樹代表に聞く

自動車 ビジネス 企業動向

“電費”も見えるリアルタイムデジタル燃費計「FCM-NX1」や、車両情報をワイヤレスで送信する「CAR~Wi」など、独創的な製品を世に送り出しているテクトム。特に、同社が2002年に発売した「燃費マネージャー(FCM-2000)」は東京都知事賞を受賞しており、テレビなどでも数多く取り上げられた。

自動車に着いている診断コネクタ(OBD:オンボード・ダイアグノーシス)を使って車両の状況をリアルタイムに表示させたり、スマートフォンのアプリと連係させるツールやドングルは昨今数多く出回るようになってきたが、テクトムは四半世紀以上にわたってこの分野を開拓してきた文字通りのパイオニアだ。スマートフォンやこれらの製品に搭載されている技術は、同社が長年にわたって培ってきた独自のもの。自他共に認める「カーエレクトロニクスのスペシャリスト」である代表取締役の富田直樹氏に、同社が歩んできた道のりを振り返っていただいた。


◆もともとソフトウェア技術者だった富田氏

----:テクトムは1989年に創業していますが、そもそも起業したきっかけは何だったのでしょう。

富田:もともと私はソフトウェア技術者で、コンピュータのSE(システムエンジニアリング)をしていました。社内で給与計算や在庫管理といった事務処理のソフトウェアを開発するという仕事です。SEとして何社か渡り歩いたのですが、私は非常にこだわり屋でして、たとえば業務用ソフトの入力画面なら、カーソルの流れを人間工学も考えた美しいものにしたいんです。

しかも、当時は画面を作るための簡易ツールもあって、条件を設定すれば半日くらいで画面ができあがりました。ユーザーインタフェースとしてみればそれは私にはとうてい耐えられない画面でしたが、会社はスピード優先でしたから、こだわって作り込める自由はありませんでした。そういった自由のなさを痛感するようになって、「自分のやりたいようにするためには会社を作るしかない」と思うようになりました。

一方で、私はクルマの中で生活してもいいと思うくらいに自動車好き。特にエンジンをいじるのが好きで、たいていのメンテナンスは自分で作業していました。ソフトウェアは仕事でしていましたし、ハードウェアはアマチュア無線を趣味でやっていました。そこで26歳のとき、趣味や仕事を全部合わせて、今の技術開発室長と二人で会社を作りました。それがテクトムです。

----:90年代前半というと、まだカーナビ(GPS)も一般的ではなく、ようやく燃料噴射に電子制御が入ってきた頃合いだと思います。カーエレクトロニクス自体がまだ発展途上にあったなかで、ここでビジネスする必然性はどのような点にあったのでしょうか。

富田:80年代後半に、車のコンピューターのチューニングが流行りました。ちょうどバブルの時期でしたから、いろいろな商売がありました。それに当時は、「まがい物」が非常に多かったんです。当時チューニングコンピューターを買うのは若い世代でしたから、変な製品を買わされても泣き寝入りするしかなくて、その状況をなんとかしたいというのはありました。

そこで、私にはコンピューター関連の仕事をしている仲間が多かったものですから、「俺たちにもできるんじゃない?」という軽い気持ちで始めました。とはいえ、コンピューターのチューニングの手がかりなんて何もありません。そこで新車を1台購入し、バラバラにしました。日産のR32『スカイライン』の「GTS-4」、2000ccターボの4WDでした。エンジンまではバラしませんでしたが、コンピューターを徹底的に解析しました。


◆モータースポーツは「タイムを出せば認めてもらえる世界」

----:創業から程なくして、オートサロンやSEMA SHOW(ラスベガスで開催される世界最大規模の自動車アフターマーケットパーツショー)などのイベントに出展されましたが、対外へ向けた積極的な情報発信をするに至った理由についてもお聞かせください。

富田:オートサロンはテクトムを広く知っていただこうという思いで出展していましたが、SEMA SHOWへの出展は別の思いがありました。出展する前年に見学をして、アメリカの懐の広さに衝撃を受けました。だって、奇想天外な発想でも製品化されているんです。それで、「どんな製品でも、売ってみないとわからない」と思い、この世界に挑戦したくなりました。

もちろん、テクトムの存在を広めたいという気持ちもありましたし、「ここにちゃんとした製品があるから騙されないで」という思いもありました。SEMA SHOWには10人くらいのスタッフで行き、準備から展示、片付けまで全部やりました。大変でしたけど楽しかったです。

また、モータースポーツにも積極的に参加しました。フォーミュラーミラージュやダートトライアルの全日本選手権などではスポンサーもしていました。ただ、どんなに技術力をアピールしても振り向いてもらえないのですが、たとえば鈴鹿サーキットの走行会でトップタイムを出したりすると、納得してもらえる。そういう世界なんですね、そこで、社員全員で全国の走行会に参加して回りましたよ。


◆車のコンピュータを人力で解析、チューニングのスタンダードに

----:OBD(オンボード・ダイアグノーシス)から出る信号を正しく取得してユーザーに見える形で表示させるには、非常に手間のかかる解析作業が必要だと聞いています。多数の車両を解析するノウハウや実績は、どのように構築されていったのでしょうか。

富田:最初はまったくの手探りでした。スカイラインをバラしたという話をしましたが、まずはコンピューターの「リセットベクター」を追いかけました。これはコンピューターがリセットされたときに、最初に参照するデータのことです。そこから少しずつ解析していき、最終的には何万行というプログラムを読み出します。それを今度はチューニングしていくわけですが、そのため最初に製品化したのはスカイライン用でした。

次に、当時私が乗っていた三菱『ギャラン』の「VR-4」のコンピューターを解析して製品化しました。そうやって、少しずつ身内の車からラインアップを増やしていきました。当時、チューニングコンピューターは20万円、30万円で売られていて、いくらなんでも高すぎるという感覚がありました。また、技術力が本物であることを見せるために、社内で使っていた解析機材を外販することにしました。技術力を前面に出して、業界自体をバックアップしてしまおうと考えました。

そして「マップトレーサー」と「マイティマップ」という製品を発売しました。「マップトレーサー」というのは、コンピューターはエンジンの回転数や負荷などを基にしたマップを持っていますが、コンピューターが今マップのどの数値を読みに行ってるかをわかるようにしたものです。また「マイティマップ」は、そのデータを編集してチューニングするためのソフトウェアで、基本的にこの2つをセットで使います。

その後、両者を合体させた製品も作りました。これは、ノートPCと車のコンピューターを簡単につないで、コンピューターが使っているデータをリアルタイムに読み込んで表示させ、しかもリアルタイムで数値を変更できるというものでした。これ以前は「勘」でデータを推測していたわけですから、画期的な製品でした。営業に行けば、ほぼ確実に売れましたので、売上が厳しいときには重宝しましたね。

そして、1995年にマルチディスプレイモニタ「MDM-100」を発売しました。これはOBDのコネクタに接続することで、エンジン回転数、車速、エアフロ電圧、インジェクタ開弁時間、点火時期、水温などコンピュータ内部の数値をリアルタイムで表示するものでした。データは2種類を同一画面に表示できます。当時はOBDコネクタがメーカーや車種によって違いましたので、製品も車種別になっていました。大型のディスプレイや、クリック感まで意識したこだわりの製品で、マニアの方にずいぶん売れましたよ。


◆幅広い層に受け入れられた燃費マネージャー「FCM-2000」

----:コンピューターの情報を表示するマルチディスプレイモニタ「MDM-100」から、燃費マネージャー「FCM-2000」へと発展しました。燃費にフォーカスするという、軸足を大きく移した理由は何でしょう。

富田:「MDM-100」は、逆に言えばマニアにしか売れなかったわけです。そこで裾野を広くしようと、燃費をリアルタイムに表示することを考えつきました。基本的には、燃料のインジェクターの噴射時間を換算すれば燃費が算出できます。もちろん、マニホールド圧や燃圧も関係しますし、そのセッティングは車種ごとに変わるので、車種に合わせて係数を設定するわけです。それを製品化したのが燃費マネージャー「FCM-2000」でした。

燃費マネージャー「FCM-2000」は「MDM-100」から7年、2002年に発売しました。モータースポーツには燃費はあまり関係なかったのですが、ちょうど欧州から環境保護の動きが高まり、テレビ番組などにも取り上げられ、すぐに情報が広がりました。大型化したディスプレイに、
瞬間燃費、平均燃費、車速、走行距離、水温、エンジン回転数、燃料使用量を表示できます。

「FCM-2000」を発売した当時もOBDコネクタはメーカーや車種によって異なっていたため、車種別でラインアップしていました。十字ボタンを採用して操作性を向上したほか、「MDM-100」と同様に細部までこだわって作り込んでいます。そのため非常に堅牢でトラブルもなく、実際に「FCM-2000」はスバルのディーラーオプションに採用されましたが、その際のメーカーによるテストもほぼ問題なくパスしました。そのこだわりは、最新機種であるリアルタイムデジタル燃費計「FCM-NX1」においても変わっていません。

《聞き手 北島友和》
《吉澤 亨史》

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