BOSCH(ボッシュ)は、モーターサイクルの安全性向上のための大きな飛躍となる高性能モデル向けの『スタビリティ・コントロール・システム(MSC)』の開発を実現している。
ボッシュ株式会社が7月30日に開催したプレス向け「ボッシュ二輪事業説明会」で、これを説明した。
MSCはブレーキングと加速時、直線およびコーナーの走行時など、あらゆる状況下でライダーをサポートし、モーターサイクルの操作性と走る喜びをそのままに保つことができる電子制御システムで、2013年に市場へ投入。その効果は多岐にわたる。
まず、車輪がカーブの外側にスリップしやすいコーナリング中の事故のリスクを低減した。コーナリング中にタイヤがグリップを失い、そのままバイクが傾いている側に転ぶことを「ローサイド転倒」と呼ぶが、これはコーナリング時にブレーキが掛かりすぎ、タイヤが充分なサイドフォースを路面に伝達できなくなると発生する。
また、コーナリング中において、バイクが寝ている状態で急ブレーキをかけた場合、マシンは直立姿勢に戻ろう(起き上がろう)とするが、この意図しないマシンの立ち直りによりコーナリング半径が大きくなり、その結果、車両が車線を逸脱(反対車線に飛び出す)してしまうことがある。
MSCはブレーキ圧を最適に配分することで最善な制動性能をもたらし、こういった事例を抑制することに成功。急ブレーキをかけたときの後輪浮き上がりなども制限し、車両安定性を確保した。
そして「ヒルホールドコントロール」も興味深い。急勾配で大型バイクを発進させることは容易なことではないが、MSCによってライダーがブレーキレバーやペダルを放したあとでもブレーキ圧を一定に保ち、坂道の発進の際に意図せず後退してしまうことを防ぐ。現在はBMW『R1200RT』などに採用される。
最大エンジントルクを調整することにより、駆動力を効率的に路面に伝達することができ、急な加速時に後輪がスピンするのを防ぐ「トラクションコントロール」はもちろん、前輪が制御不能になって浮き上がるのを防ぐだけでなく最大加速を可能にする「ウイリーコントロール」も実現。
オフロード走行の楽しさを損なうことなく、最適化されたブレーキ性能を発揮する「オフロードコントロール」は、ABS機能を前輪のみに稼働させることで車両の安定性に影響を与えることなく、さらに高いレベルで減速させることが可能に。ライダーは意図的に後輪をロックさせることができ、ドリフト走行やヘアピンカーブにおいてのブレーキターンでも妨げになることはない。
これらの機能は本当に必要になるその瞬間まで気づかれることはない。それゆえにモーターサイクルで走る楽しみはそのままに、しかし万が一の瞬間にその効果を発揮してくれる。