28-31日の日程で米国ハワイで開催されている環太平洋経済連携協定(TPP)の閣僚会合では大筋合意に向けて交渉が行われているが、マレーシア通産省は今回の交渉ではいかなる合意にも署名しないとの方針を明らかにした。ザ・サンが報じた。
通産省はTPPにおける問題点に、主権や政府調達、国営企業、ブミプトラ(マレー人と先住民族の総称)関連政策への影響を挙げている。
ムスタパ・モハメド通産相は、マレーシア同様他の交渉参加国もそれぞれの国内で問題点を解消した上でTPPに署名することになると指摘。憲法と主権、ブミプトラ政策など国の中核となる政策が保護され、維持されることを確かにすることが担当大臣としての責任であると強調した。政府調達においてブミプトラや中小企業(SME)を優遇する現在の政策を変更することはないという。
同相はまた、各方面から政府調達や医薬品の特許に関する問題、市場アクセス、マレーシアの国教としてのイスラム教の立場などに懸念の声が出ていることは承知しているが、交渉の場でこうした問題の解決を進めていると述べた。
TPPに付随する形での合意が必要となる投資家対国家の紛争解決(ISDS)メカニズムについてムスタパ大臣は、TPPは各国の政府が安全保障や福祉などを保護するために様々な措置を含んでいると説明した。ISDSは投資受け入れ国の協定違反により投資家が損害を受けた場合、金銭などにより賠償する手続きを定めた条項のこと。
医薬品の特許期間の問題により安価なジェネリック医薬品へのアクセスが難しくなり国民が入手しやすい価格の医薬品が減るとの懸念について、ムスタパ大臣は新薬が開発され市場に持ち込まれることで、手頃な価格設定の医薬品を入手しやすくすると述べた。
マレーシア国内ではTPPに関して中央銀行バンク・ネガラや財務省、人的資源省など20の省庁、政府機関の代表らが交渉に参加している。