元助手に同性愛行為を強要したとして、有罪判決を受け収監されている野党リーダーのアンワル・イブラヒム元副首相は「ウォール・ストリート・ジャーナル」(WSJ)への寄稿の中で、与党の問題点を追及する姿勢を明確にし、今後も政治活動を継続する意思を表明した。
7月23日付のウォール・ストリート・ジャーナルによると、アンワル氏は、2013年にナジブ・ラザク首相が総選挙で勝利して以来、選挙区の改変を通じて自党を有利にするような動きや汚職、投票者への脅しなど状況は悪化していると指摘。ナジブ首相は経済改革や民主主義改革を約束し、政権に異議を唱える者の意見にも耳を傾けるとしていたが守られていないと批判した。
アンワル氏は5年の刑期のうち5カ月を既に刑務所の中で過ごしており、世界各国の政府や人権保護団体からナジブ政権を批判する声が出ている。アンワル氏は独房で、瞑想や読書などをして過ごしているという。
アンワル氏は、2012年にナジブ首相が廃止した国内治安維持法(ISA)はテロリズム防止法や犯罪防止法に名を変えただけで抑圧的な内容は変わりないと指摘。民衆を抑圧するために市民の基本的な自由を奪っていると強く非難した。過去18カ月の間に150人以上のマレーシア人が逮捕され、扇動罪やアンワル氏の有罪判決に反対したことなどが原因で学生や学術者、ジャーナリスト、活動家、人権弁護士、野党政治家などがとらわれていると明らかにした。
また、ナジブ首相夫妻の口座への資金送金疑惑が浮上している1マレーシア・デベロップメント(1MDB)の問題についても触れ、巨額の金の出所や行き先も不透明になっているとした。その上で、1MDBなどを巡る問題への批判記事が出るとナジブ首相側は特定の個人がマレーシア経済への信頼度を下げ、政府の名誉を汚すような動きを見せていると反論していると説明した。
通貨リンギは16年来の低水準にまで落ち込んでおり、宗教的、民族的な問題も浮き彫りになってきているとし、ナジブ首相のリーダーシップの無さによる悪影響が社会の様々な面に表れていると懸念を表明した。
アンワル氏は、マレーシアは変化への準備ができているとしマレーシアからの亡命ではなく平和で民主的な改革を獄中から目指してゆくとコメント。家族にも大きな負担を掛けることになり簡単なことではないが、マレーシア国民や世界中の支援者と心を一つにして自由に向け前進すると決意を示した。