【ロードスター開発者への10の質問】Q10.ライバルは? そして今後のバリエーション展開はあるのか?

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ロードスター開発主査の山本修弘氏
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  • マツダ ロードスター
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原点回帰を謳い開発したロードスター…とはいえ、開発の参考にしたライバル車などはないのか? 車格が違うとはいえ、『コペン』や『S660』など他社からライトウェイトオープンが発売されたが、それらどう捉えているか。

そして北米で展開している2リットルエンジンの導入、彩色系ボディカラー、ハードトップモデル(RHT)、レースベースのグレード設定(NR-A)などは有り得るのか?

これらをまとめて最後に開発主査である山本修弘氏にお話を伺った。

Q10.ライバルは? そして今後のバリエーション展開はあるのか?
A10.ライバルは想定していない。“体験”するために世界中のあらゆるクルマに試乗した。バリエーション展開についても必要な部分は検討している。

◆エンジニアもいいクルマは味わう必要がある

----:これまで新型ロードスターについて色々とお話を伺ってきました。その中であえて最後に質問させていただくのですが、開発時に参考にしたクルマなどはあるのでしょうか?

山本修弘氏(以下敬称略):参考にしたクルマはたくさんあります。もちろん、参考にするということはとても大事で、自分たちがありたい姿をやる時にどういった位置づけになるのか、という意味でも参考にしたクルマはたくさんあるわけです。これまでもNA/NB/NCロードスターはもちろん、自社で言えば『RX-7』や『デミオ』、オープンカーではダイハツ コペン やポルシェ『ボクスター』、アウディ『TT』、BMW『Z4』もです。また『プリウス』も含め、本当にたくさんのクルマに乗りました。

乗らないといけないし、参考にしないといけないわけです。それぞれ“乗り味”がありますから、ありたい姿を描いて、それに向かって一直線に行けるわけでもありません。でも目標を立てる時に「あれと比べてこうだ」とか「あのクルマはこれぐらいだから、あれと同じでいいだろう」という風な位置づけにはしませんでした。でも参考になる車はたくさんありましたよ。例えばポルシェの『ケイマンS』などは、いい参考になりました。いいクルマはやはり体験しないといけないわけです。

----:ケイマンですか、具体的にどのような部分がよかったのでしょうか?

山本:運転していて重い車体でもしっかり軽快、本当に意のままに走ります。アクセルを踏んだら踏んだ分だけ加速するし、回転数と共に心地よいサウンドも聞こえるし、ハンドルを切ったら切っただけちゃんとゲインがあって回ってくれるし、ブレーキもきちんとフロントに荷重がかかるし、クルマとしてすごくいい。そういった部分はやはり参考にしないといけない。

----:エンジニアとしても味わうことが必要だと

山本:(味わないと)だめです。やっぱり、エンジニアが経験を積まないと自分たちのセンスも磨かれませんから。多くのクルマ乗ることは全然問題ないし、絶対乗らなくてはだめです。

----:NAからNCまでのロードスターについてはどの部分を参考にされたのでしょうか。

山本:特に参考にしなくてはいけないのは、NA/NB/NCはお客様がそのクルマに乗っているということです。そして、そういう人たちから、きちんと僕たちがブレイクスルーすること。運転する楽しさを極める、“原点回帰”という部分を目標設定するためには必要なことでした。

----:失礼ですが、反省する部分とかはありましたか?

山本:いやいや。皆さんとても愛着を持って大事にしてくれているわけです。それはこのロードスターのありたい姿なのです。大事にしてもらえる。ただ製品がいいから、大事にするのではありません。可愛くて可愛くて仕方がない。愛着が湧くわけです。僕たちは絶対に、愛着が湧くクルマにしないといけないのです。だからNAのお客さんを大事にしないといけないと思っています。

----:NAユーザーにはやはり乗って欲しいと。

山本:NDも、そういった価値を共有できるようにしないといけない。例えば外車の場合、自分が誇りに思える、自分はちゃんとクルマを選んでる、という割り切りのようなものがありますよね。そうした人たちにもブランドを含めて、ちゃんと選んでもらえるということが大事なのです。そういう人たちがロードスターに乗り換えて頂けたら、という想いはあります。

----:“想い”がやはり重要なのですね。

山本:そのクルマの品質がどんどん良くなってくると「ならでは」という言葉が出てくる。これは外車が得意な分野ですよね。BMWならでは、アウディならでは、他のクルマとは違うんだ、と。自分はこのクルマに乗ってるんだ、という想いが募れば、それだけ自分のモチベーションも上がるし、誇りを持てるじゃないですか。誇りに思えるということはつまり、愛着が持てるということにもつながる。そういう想いにさせるというのは、やはりブランドなのです。そのクルマを選んで間違ってないな、と思える気持ちになれる、そこがとても大事なことだと思います。

◆エンジンが違っても体現したいコンセプトは何も変わらない

----:これまでもND型に搭載されるエンジンがなぜ1.5リットルなのか、など質問させていただいたのですが、さらにお聞きしたい部分があります。それは海外で展開している2リットルエンジンについてです。なぜ北米や欧州では2リットルで展開しているのでしょうか。

山本:グローバルで同じデザインとテイストをいい媒体で作る。走りを作り込む、走る楽しさを体現するというコンセプトはまったく変わってません。ただ国が変われば人は違うし、感じ方もましてや走る道も違います。それぞれのリージョンの特徴があるわけです。グローバルというのはやっぱりそれぞれの価値観をちゃんとわかってもらうように作らないと、エゴになってしまいます。

「僕たちは、グローバルで1.5リットルでいい」ということで最初から作ってきましたが、議論を進めていくと、やっぱりアメリカの道は日本とは異なるし、ヨーロッパにはアウトバーンもある。たくさんの人たちに、ロードスターの世界観や魅力を伝えるためにはアメリカは2リットルのほうがいい、と。実際に走りに行って、その方がいいだろう、というのがわかったのです。

このクルマの長いライフサイクルの中で、色々なバリエーションも考えたいと思ってるし想定してたスコープ(範囲)なので、アメリカは2リットルを出そうと。でもそうすることによってクルマのデザインが変わったり云々はないわけです。

だからどれがいい、どれが悪いではなくて、それぞれのリージョンに応じた最もふさわしいクルマを作り込んで来たし、それが4代目のロードスターのありたい姿だと思っています。

----:じゃあ日本で、もし2リットルが欲しいという声が上がってきたらどうでしょうか?

山本:現状ではどうこう言えませんが、私の最新の答えとしては、原点回帰をしたクルマとして、僕らは1.5リットルが十分だし、間違っていないと思っています。とはいえ、将来は何が起きるかわかりませんから、その時によって検討もしたいし、やりたいと思っています。全然否定するものでもありませんよ。

----:否定はしないけど、現状はそうだと。それではNC型にあったRHTに関してはどうでしょうか。

山本:これも、その価値を僕たちは充分知っているので、否定はしません。だから検討は当然しなければいけないと思っています。ただ、それはしかるべきタイミングで、しかるべき時期に、ということになると思います。

----:もちろん、先のことは秘密ですからね。

山本:でも、大切なことだと思っていますよ。

◆NR-Aは出します!

----:最後なので全部聞きます。レース車両はどうでしょうか。

山本:それはもうはっきりしています。僕たちはパーティーレースをやるので、NR-Aは出します。それはきちんと最初から約束してるし、NR-Aを作って来年度からはカップレースも始まりますから。これを始めるためにも、パーティーレースに出ることができるベース車両としてのNR-Aを僕たちはちゃんと準備して、しかるべきタイミングで出そうと思っています。

----:ボディカラーはどうでしょうか? 現状に特に不満があるわけではありませんが、過去を振り返るとピンポイントで色々なカラーをラインナップしています。

山本:これだけロードスターのファンがいて、お客様がそういう風に考えてることは、当たり前に僕たちも同じ風に考えています。これから長い時間をかけて、色々な限定車も出すし、やっていきます。当然カラーは考えないといけないと思っていますので、これからも検討していきますよ。

《高山 正寛》

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