【未来ヲ買ッタ男】トヨタ MIRAI 納車1か月、オーナーになってはじめてわかったこと…松下宏

試乗記 国産車

自動車評論家・松下宏氏と、自身で購入したトヨタMIRAI
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  • 松下宏氏とトヨタMIRAI
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  • トヨタ MIRAIと水素ステーション
  • 水素ステーション
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  • 燃料である水素を充填するトヨタ MIRAI
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◆「後ろめたさを感じない」というメリット

『MIRAI(ミライ)』を保有してまだ約1か月ほどだが、1000kmを超える距離を走る間に、ミライの持つクルマとしての良さがじわじわと感じられてきた。

何といっても走るときに発生するのが水だけで、有害な排出物を一切発生しないことがミライの良い点だ。クルマを走らせることによるある種の後ろめたさのようなものをまったく感じなくてすむのが良い。

現状では、水素を生産するときに二酸化炭素が発生しているので、無条件で環境性能車であることを誇るわけにはいかないが、将来的には再生可能エネルギーから水素を作ることも展望されている。ミライを走らせることはそれを促進することにもつながる。

また燃料電池という新しいパワートレーンを試していることの満足感も大きい。ミライは日本で最初に市販された燃料電池車であり、世界の主要自動車メーカーが開発に取り組みながらもまだ市販できていない燃料電池車を、真っ先に自分のクルマとして生活の中で試せることの満足感、意義も大きい。


◆運転に気遣わなければならないほど目立つ

街を走らせていると、ミライはけっこう目立つようで、じろじろと見られることが多い。それもクルマに対する感度の高いユーザーや、環境に高い関心を持つと思われるような人から見られることが多いようだ。

自動車評論家をしていると、新型車をテストドライブする機会が多いから、乗っているクルマを見られることには割と慣れているつもりだが、ミライは普通の新型車以上に注目されておもはゆい感じがある。あまりみっともない運転はできないという思いにさせられる。

神田の神保町界隈を走らせていて、コインパーキングに駐車したときには、後から追いかけてきた二人の学生に声をかけられた。

「これは何というクルマですか、クルマの後ろにMIRAIって書いてありますけど、新型のプリウスですか」
「書いてある通りでミライというクルマだよ。燃料電池という新しい動力源を使って走る電気自動車なんだ」
「へぇ~、凄いですね。見たこともないクルマでカッコ良いし」
「いや、カッコはあまり良くないと思っているけどね」(苦笑)

ついでなので、ひとブロックを一周するような形で同乗試乗させたら、内装の仕様にも感心していたほか、静かでスムーズな走りにびっくりしていた。

神保町には異業種交流の勉強会のために出かけ、この勉強会では私が講師役になってミライと燃料電池車について解説した。ほとんどの出席者が燃料電池の仕組みそのものについて知らなかったので、まずそのこと自体に感心するとともに、それでクルマが走ることについては不思議そうにしていた。

勉強会の出席者のうち10名ほどを同乗試乗して周辺を走らせたが、やはり静かとスムーズさ、またアクセルを踏み込んだときの加速の良さについて、それぞれ自分のクルマとは違うとの反応を示していた。

勉強会の出席者の中に60代の弁護士がいて、「これなら私もすぐに欲しい」と言っていたが、「現状で3年以上の納車待ちになっている」と説明すると、「そんなに待つのか」といたくがっかりした様子だった。それでも気を取り直して「次のモデルなら生きているうちに乗れるかな」と語っていた。

クルマに詳しくない大学生の娘とドライブに出かけたところ、「とても静かなのでクルマとは違う乗り物に乗っているみたい」という反応だった。燃料電池の仕組みやそれでクルマを走らせていることを説明すると、「賢いクルマなんだ」と言っていた。


◆もっと距離を走れるクルマであって欲しい

ミライには全体として満足して乗っているが、不満な点もいくつかある。

最大の不満点は航続距離で、JC08モードで650kmとのことだが、実際には400kmくらいを目安に使わなければならない点だ。ミライの燃費は走り方によって大きく変わる。これはガソリン車でも同じだし、電気自動車ではそれが強く出る傾向にある。一般的な電気自動車がJC08モードの半分くらいしか走れないことを考えたら、ミライのほうカタログデータに近いといえるのかも知れない。

また長距離ドライブを試したところ、高速クルージングなどでミライは相当な航続距離を持つことが分かった。限定的な状況ではJC08モードに近い走りも可能である。ただ、ミライには水素充填インフラが十分ではないという弱点がある。そのことを考えたら、航続距離は長ければ長いほど良い。もっと距離を走れるクルマであって欲しい。

ほかにミライが未来的でない部分とし、足踏み式パーキングブレーキと、アダプティブ・クルーズコントロールが全車速対応ではないことがある。

今どきのクルマであれば、パーキングブレーキは電気式が当たり前だと思うし、それによって停止状態を保持することでアダプティブ・クルーズコントロールを全車速対応にできることになる。

プリクラッシュセーフティシステムも、従来から使われてきたミリ波レーダー方式が搭載されていて、最新のトヨタ・セーフティ・センスPが搭載されなかったことも物足りない点だが、これらの不満点は早期に解決されることになると思う。


松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。
《松下宏》

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