日産『エクストレイル ハイブリッド』は過去に追浜のテストコースで試乗した。その時もっとも痛烈に残った印象感は、エクストロニックCVTにステップ制御が入れてあり、高回転域ではステップATよろしく変速することだった。
追浜のテストコースでは最高速度140km/h程度に到達して、そのあたりでステップ変速してくれたが、残念ながら一般道路を走る限りその恩恵は全く、信号から全開で発進させても、ステップ制御が働くことはなかったのである。だから、CVTにありがちな、回転だけが高まってスピードが後からついてくる現象は否めなかった。これが、テストコースでは感じなかったエクストレイル ハイブリッドの少し嫌な部分である。
2リットルのMR20DDユニットは、補器類が無くなり駆動ベルトがないなど、エンジン本体の負担が減ったことから、スムーズでなかなかパワフルである。と言ってもターボを装着しているわけではないし、エンジンのトルクは207Nmしかないから、1630kgの車重に対しては必ずしも満足の行く加速感が得られているとは感じなかった。しかも今回の試乗は3人乗車で行ったので、大人二人分の重量も加算されている。
拘った点の一つが本格派の4WDモデルを目指した点で、元々タフさを売り物にしていたエクストレイルとしては、その点を特に強調したかったとリージョナルプロジェクトリーダーの藤井真氏が話していたが、当然ながらプロペラシャフトを使った4WDとしたことで重さも増して、燃費にも悪影響を与える。
しかも、そのある意味ヘビーデューティー4WD(e四駆と比較して)の恩恵にあずかれるのは、地域が限定されそうである。実際晴れた日のターマック試乗では、その良さを感じることは皆無。そしてJC08モードで20km/リットルと、免税措置が適用される領域を確保している燃費も、都市部で3人乗車の場合、精々行っても13km/リットル。まあ、悪くはないが特別良くもないといった程度でしかなかった。因みにガソリン2リットル車のJC08モード燃費は16.4km/リットルだから、正直現実的な燃費だとそう大きくは変わらない印象がある。
というわけでハイブリッドの恩恵は、燃費よりもそのスムーズな走りにある。エンジンの断続はかなりうまく制御していて、モータースタートからエンジンのかかる瞬間は、注意していなければわからないレベル。タフさとは裏腹な印象だがこいつは捨て難い。一方で、テストコースではほとんどわからなかった乗り心地も、やはりそれなりの細かい突き上げ感が感じられて、テストコースほどのスムーズな印象ではなかった。
それでも安いモデルだと280万円台という価格設定はかなり魅力的で、ボディサイズや機能性を考えればライバルを凌駕していると思えた。
■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。